輝きを閉じ込める
個展も3回目を迎える。文章やイラスト、音で伝える私の作品群は、なかなかひとつの場所で同時に味わうのが難しかったのだけれど、今はテクノロジーがそれを可能にしてくれる。
プロデューサーのKは、私が何の力もなかったころ、私を見つけてくれた。作品が稚拙で、人に見せられるものでないと思っていた私に対して「他の誰も持ちえない感性がある」と言ってくれた。
「どうして隠しているの?」
「自信を持って大丈夫だよ」
それまでも、書いた(描いた)ものを褒められることはあった。本当にうれしかったけれど、「たまたまうまくいった」と思ってばかりいた。ところがKは、私の作品には確固たる空気があると言ったのだ。
「僕はね、化石の発掘にはまっていた頃があってね。それで運よくアンモナイトを見つけたことがあるんだ。岩を割った瞬間にアンモナイトが顔を出すんだ。その瞬間は忘れもしないよ。どうしてかわかる?」
「初めてで、嬉しかったから?」
「それだけじゃないんだ。アンモナイトは、何百万年の眠りから発掘されると、べっこう色に輝くんだよ。見つけたその時だけね。でも空気に触れたとたんに、どんどん輝きを失っていくんだ」
「その色をずっと、覚えているのね」
「君の作品はね、その光るべっこう色を閉じ込めているんだよ。君は知らないかもしれないけれど」
それを聞いてから、私は自分の作るものに自信が持てるようになっていった。
ある程度作品がたまると、Kが「個展をやってみよう」と言い出した。
「最初は、僕があまり関わらない方がいいかもしれないね」と、やったこともない個展を自分の力で開いた。それは、集客も評判も成功とは言えなかったが「1回目はこんなもんだよ。君なら大丈夫。余裕だよ」とKは言う。
Kの言ったことは本当だった。それから私の仕事は軌道に乗り、私の作品を好きになってくれる人がどんどん集まってきた。その中に、個展を手伝ってくれるいろいろな技術やスキルを持つ人たちもいた。
もう個展も3回目。べっこう色の輝きが、体験する人たちに届きますように。
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