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BLACKPINKに見るK-POPにおけるマーケティング戦略の凄まじさ

今や様々な国で人気を博しているK-POPですが、最近更にその人気が加熱しているように思うこの頃です(日本国内ではNizi Projectのブームもありましたし、韓国コンテンツとしては『梨泰院クラス』や『愛の不時着』等のドラマも人気になりましたね)。

先日NetflixでBLACKPINKの『Light Up The Sky』というドキュメンタリー番組が公開されていましたが、私の周りでも男女問わず多くの人達がこれを観てインスタのストーリーにあげていました。

K-POPグループの中でも特にBLACKPINKやBTS は世界的に人気なグループで、両者共にBillboard Hit Chartの常連ですし、BTS は今年6月の「Bang Bang Con: The Live Show」でオンラインコンサートの 世界記録となる1,800万ドルを売り上げました。

他にもTWICEやBIGBANG、SEVENTEEN、ITZY等人気グループが沢山いますが、楽曲やダンス自体が素晴らしいのは勿論の事、ここまで人気になっているのは「K-POPのマーケティング戦略が優れているに違いない!」と思ったので、特に私の好きなBLACKPINKに焦点を当てながらそのマーケ戦略を分析してみようと思います。

マーケターやK-POP好きの方々、ひいてはエンタメを愛する皆さんにとって有益なnoteとなれば幸いです。
(※個人的な見解に基づく分析ですので、その点何卒ご留意下さい。)

1.<ターゲティング戦略>最初からグローバル市場を見据えた楽曲やビジュアルのコンセプト設計

(カリフォルニア州で開催された世界最高峰の音楽フェスティバル Coachella 2019 に出演した時のパフォーマンスの様子)

まず、BLACKPINKのようなK-POPのグループは、最初のメンバー選定やコンセプト設計の段階から国内市場ではなく、グローバル市場を目指しています

YGエンターテインメントでBLACKPINKのプロデュースを手がけたSINXITY(シン・シティ)氏もインタビューで下記のようなコメントを残しています。

K-POPの強さとはなにか。2つあります。
ひとつは、ダンス。アイドルグループの新作ダンスが日本でもしばしば話題になるように、韓国の音楽シーンではダンスが特徴的なアーティスト・楽曲が多いです。これを若い人たちは動画を撮って真似て拡散することで、アーティスト、しいては韓国カルチャーへのタッチポイントが増えることに繋がります。もうひとつは、韓国でははじめから海外マーケットを前提に楽曲製作をしている点です。日本では国内市場がある程度大きいので、国内だけでもある程度の規模にはなれる。一方韓国では国内市場がそもそも小さいので、海外マーケットを狙った楽曲やビジュアルをはじめから考えざるを得ないのです。

まずダンスについて言うと、レベルが高いのは勿論の事、「ダンスが非言語コミュニケーションであること」を最大限に活用しているように思います。

アメリカで日本の楽曲がなかなか流行らないように、何を言っているのか分からない言語の歌詞だと言語コミュニケーションにおいて聴く人の胸を打つ事は出来ません。一方で、ダンスは「観れば分かる」非言語のコミュニケーションなので、クールだ、セクシーだというのがすぐに分かり、観客の感情に直接響きます。

またシン氏の言うように、YouTubeやInstagram、Tiktok等ソーシャル上でバズるような特徴的な振り付けをダンスの中に取り入れているのも重要なポイントでしょう。

例えばBLACKPINKの代表曲『Kill This Love』にはサビで銃を打つようなダンスがあり、多くのBLINK(BLACKPINKのファンの愛称)がこれを真似しています。

他のグループでも、Twiceのの代表曲『TT』におけるTTポーズもその可愛さ、キャッチーさから皆が真似するようになり、ソーシャル上でバズった事で楽曲やグループ全体の人気に繋がったのでしょう。

また、こういった世界中の誰が観ても分かるダンスにおいて特徴的な振り付けを行うという事に加えて、楽曲やグループのコンセプトも明らかに「グローバル受け」を狙っています

例えばBLACKPINKの楽曲はラップやクールな曲調が多く、USで受けそうなHIPHOPらしさがありますし、英語の歌詞も多いです。

恐らくグローバル市場をターゲットに設定した上で、特にこういった「Girls HIPHOP的な格好よさ」や「女性らしいセクシーさ」を好むトレンド感度の高い10〜20代の女性向けにコンセプト設計していると思います(実際BLACKPINKのファンは女性が特に多いと言われています)。

2.<ターゲティング戦略>グローバル市場に最適化されたメンバー構成

また、メンバー構成においてもBLACKPINKはグローバル市場に受けるよう考えられています。BLACKPINKでは、4人のメンバーのうちLISA(写真左端)はタイ出身、Rose(写真右端)は韓国系オーストラリア人、Jennie(写真右から二人目)はニュージランド留学経験のある韓国人、Jisoo(左から二人目)は韓国人という多国籍グループです。ルックスも含めて、多様性やグローバル色が際立っているように思えます。

アジア系が中心ではありますが、このようにどの市場でも自分に近い属性のメンバーがいたり、様々なバックグラウンドのメンバーが集まっているという構成(=「多様性」)がグローバルでも戦える要因の一つかもしれません。

逆にTwiceは韓国人、日本人、台湾人で構成されていますが、米国でまだそこまで活躍出来ていないのはメンバーの「グローバル色」が弱いからかもしれません。(一方でアジア系のメンバー構成、可愛さとセクシーさによるコンセプトは日本や東南アジアで非常に人気を博しており、アジア市場を第一のターゲットにしているのであれば優れたマーケティング戦略を取っていると思います。)

BLACKPINKも、「グローバル市場」「10〜20代の女性」というターゲット市場を明確化し、市場の顧客のニーズをよく理解した上で、顧客に受ける価値(多国籍のメンバー構成、上述のコンセプト設計等)を提供するというマーケティング戦略が出来ていると言えるでしょう。

余談ですが、当初BLACKPINKは9人グループという予定だったのを4人に減らしたというのも良い判断だったと思います。人数が少ないのでメンバーそれぞれの個性が際立ちますし、競争率が上がる分パフォーマンスの質が高くスター性のあるメンバーに絞られたはずです。正直非アジア系の人にはアジア人を見分けるのが難しいので、4人という人数はちょうど良かったかもしれないですね。

3. <メディア戦略>様々なメディアをフルに活用するクロスメディアマーケティング

人気K-POPグループは楽曲やグループの活動をYouTubeやSNS等の様々なメディアを通じて発信しておりますが、このクロスメディアマーケティングが非常に上手いです。

BLACKPINKの場合、公式YouTubeチャンネルで楽曲等を配信しておりますが、とにかく動画の量と種類が凄いです

MVだけでなくコンサートやテレビ番組でのライブ映像、バラエティ番組、メイキング映像等、これでもかという位惜しみなく動画を載せてくれています。

一般的なアーティストだと、違法アップロード動画等が多く出回り、削除回避のために音質に手を加えたり、動画の脇に関係ない映像を載せたりしているため、粗悪な映像が多いです。それに対してBLACKPINKでは公式チャンネルがあらゆる種類の動画を高品質な形で載せているので、世界中の人々に対して直接グループの世界観を隅々まで伝える事が出来ているのです。

また先日はTikTok上でライブを行う等、SNSの活用にも積極的です。SNSやYouTubeの公式チャンネル等を活用し、クロスメディアでファンに情報を届けています。

こうした手法には、ファンのエンゲージメントを高めるという狙いがあると思っています。

様々なメディアで日々コンテンツが発信されるので、アーティストのストーリーや世界観、メンバーの生活を日常的に追いかける事となり、ファンのライフスタイルにアーティストが自然と組み込まれていくのです。

またSNS上でファンと双方向的にコミュニケーションを取ったり、メンバーの日常やオフの姿を発信する事で、「親しみやすさ」を伝え、これらの結果としてファンのエンゲージメントは日に日に高まり、コア顧客を獲得していくのです。コアなファンは自分でSNSで発信してくれる(=エバンジェリスト化する)ので、彼女たち/彼らの活動により更に新たなファンが増えていく事にも繋がっていきます

(普段の姿も可愛すぎますね。。)

最後になりますが、BLACKPINKはさらにメンバーの中身や華々しい舞台の裏側の苦悩を描いた上述のNetflixドキュメンタリー番組『Light Up The Sky』も公開しており、本当にメディアをフル活用しているのが分かりますね。是非観てみて下さい。

まとめ

BLACKPINKを題材に、K-POP人気の背景にあるマーケティング戦略を分析してきましたが、ざっくり簡潔に纏めると、結論として以下のような事が言えるのではないでしょうか。

1.BLACKPINKのようなK-POPアーティストは、「グローバル市場」というターゲット市場(BLACKPINKの場合は更に「10〜20代の女性」)を最初から明確化し、顧客の求める「価値」を楽曲やダンス、コンセプト設計、メンバー構成等、あらゆる側面から提供している。その結果、顧客の心を捉えて人気に繋がっている。

2.SNSのフル活用、クロスメディアマーケティングによりファンのエンゲージメント向上を図り、コアなファンを生み出し続けている。そしてコア層が自らグループの良さを発信してくれる事で、さらなるファンの獲得に繋がる。

K-POPは今後もそのマーケティング戦略を活用して、世界的なアーティストを世の中に生み出していく事でしょう。

今後もこういったエンタメ領域のマーケティング戦略分析だけでなく、企業のマーケティング戦略等も纏めていきたいと思いますので、宜しければフォローしてお待ち頂ければ幸いです〜!

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それではまた!

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