今月見た映画(2018年10月)

帰ってきたヒトラー(原題:Er ist wieder da)
ナチス時代について道徳的な教訓を説かれるのはいい加減飽きてきた、との現代ドイツ人の心情をむきだしにするような、笑えないブラック・コメディ。タブーであるはずのヒトラーに扮した俳優が実際に観光地や極右組織に潜り込み、一般人の素朴な反応をドキュメンタリータッチで挿入することで、「歴史から学べ」という警告の空虚さが浮き彫りにされる結果になっていると思う。さて、私たちはあの時代から何を学べるのだろう。

はじめてのおもてなし(原題:Welcome to Germany)
父は医者、母は元教師、息子は弁護士、娘はプー太郎という、いかにも上流階級そうなドイツ人家庭に、ナイジェリアから難民としてドイツにやってきた青年が受け入れられる。「帰ってきたヒトラー」で映し出されているように、シリア難民への排斥感情が高まるドイツで、こんな風に異国民同士で共生できたらいいよね~!っていうハッピー大団円映画。ただし、ドイツ語で意思疎通可能で、同情に値するひどい体験をしていて、従順で、現代では失われてしまった懐古的で牧歌的な助言をくれる難民に限る。という裏のメッセージを感じるのは、私だけ?

ザ・スクエア(原題:The Square)
現代アートの美術館で学芸員として働いている主人公が、「寛容」をテーマにある作品のプロモーションを企画。しかし当の本人が関与しないうちに、寛容と正反対の不寛容な事態が次々起こっていく…。路上生活者、女性、障がい者、移民地区の住人、などなど、「差別はしない、すべての人に寛容な場所を作りましょう」と言っているその場所で、差別と不寛容が起こる苛立ちがずーっと続く映画です。

<映画で学ぶドイツ語のコーナー>

Ihre Uniform... die haben Sie bis morgen zurück, oder?
- Ja, natürlich. Das ist schließlich... eine Blitz-Reinigung.
(あなたの軍服、明日までに帰って来るんですよね?
 - 当たり前だ。ちゃんと「電撃クリーニング」中だ)

「帰ってきたヒトラー」で、軍服をクリーニングに出したヒトラーが、なる早仕上がりにした、と答える場面。Blitzkrieg(電撃戦)、Reinigung(浄化)という言い回しは、ヒトラーが1939年ポーランド侵攻の作戦名やユダヤ人迫害に対して使ったもので、この言い回しのもと実際に多くのポーランド人、ユダヤ人が殺戮されている。ぜんぜん笑えない。

※Blitz=雷、稲光 Reinigung=掃除、洗濯/掃討、討伐、浄化

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