見出し画像

韓国でも異色な牛肉療法

韓国には韓方医学という
東洋医学を基盤にした医療のジャンルがある。
大学の教育機関で韓医師を養成していて、
街には「韓医院」の看板を掲げた診療所が点在している。



診療方法は「韓医院」によってまちまち。
普通は脈をとって触診や問診。
鍼を施すところもあれば、
四象体質という伝統的な体質分類を適用して
患者の治療に役立てる院もある。



大抵の韓医院では韓薬(ハニャク)が処方される。
様々な漢方薬を煎じた液体が
ビニールパックに詰められた形で渡される。
(東洋医学系の薬という意味で漢方薬と表記、
漢なのか韓なのかは結構微妙な問題です)



韓薬の目的は元々滋養強壮。
最近ではダイエット用韓薬や
子供の身長を伸ばす韓薬等用途が広がっている。
昔から幅広い層の韓国人に愛用されている薬。


韓薬を摂取してる期間は、
小麦粉や豚肉は食べないでねとの食事制限が付く。
「サンギョプサル食おう!」をお断りしても
「韓薬飲んでるから」で周りも納得する。



保険適用されないので、お値段は安くない。
一か月分が3、4万円位(薬によるけれど)
体調変化を見ながらこれを数か月服用する。
↑以上のことは、ごくごく一般的な韓医院の話です。
ーーーーーーーーーーーーーーーー

そんな韓国の韓医院の中で私が
かなり異色の韓医院とご縁を持ったのは
2006年の事でした。17年前ですね。



韓国でも一般的な健康法ではないので
タイトルに「韓国の牛肉療法」とは書かず
「韓国でも異色な牛肉療法」としました。
(2010年頃マガジンハウスの『Tarzan』様で
 これに関する小さな記事を掲載して頂いた事があります)




第三子の妊娠初期につわりなのか、
起き上がることが出来ず
(第一子第二子の妊娠中はつわり無しでした)
家事さえ辛い状態になりました。
立ち上がるとめまいが酷い。



その頃、大学院時代の後輩(といっても年上)の
チャン夫妻が我が家に遊びにきました。
家族ぐるみの付き合いをしていた気楽な仲間です。
(大手出版社の編集者だった
チャン・ソンギュさんの事は別記事で)


彼らが昔から懇意にしているという
ソウル郊外の韓医院を紹介してくれました。
チャンさん自身もアメリカで韓医師をしていた人でした。
「とにかく普通じゃないすごい韓医院だから!
 薬は最高レベルのものをくれるからね!」
「先生のもの言いが、かなり変わってて、、
 『あんた男だろ?』って言われたとしても
 『ハイ!』っていうのよ!」
「???」
とりあえず二人に勧められて、その韓医院に向かいました。


確かに韓医院の診療時間からして変わってました。
当時は14時から17時だったでしょうか。
一日3時間しか診察しないのです。先生が。
普通の韓医院だと、午前9時~午後6時です。



待合室で聞こえてくる会話からして
噂に違わぬ強気な先生でした。
患者がちろっと
「よそでは〇〇っていわれたんですけど」とでも言ったら
「そんなもん関係ない!」から始まって大声で持論を展開する。
つつぬけで聞こえる。



患者が何か言おうとすると
「なんもいわんでええ!こっちの話をきけ~!」と
さらに先生の大声が聞こえてくる。
初めて来た患者さんは
ほぼこの洗礼を浴びるよう。
私は親切な先達からの教えがあったので通過。



診療台に横たわって脈診してもらった私は
性ホルモンが不足してる体質だと言われました。
それが身体の不調を引き起こしてると。



そこを補充するために牛肉食べなさいと。
それも一日に900グラム!!
(韓国では肉600グラムを一斤というので一斤半)
かつ肉と一緒に大量の葉物野菜を摂取しなさいと。


食べてはいけないものは
普通の韓医院の禁止項目よりもっと多かった。
小麦粉、豚肉、コーヒーは当然のこと
甘いもの冷たいもの、鶏肉、タコやイカやエビ、、
一体何食べたらええねん?という程。
ご飯とキムチだけ食べろと笑?



この強烈な韓医院の処方を
真面目に実践する人と言うのは
ほぼ「万策尽きた患者」である
と当時の若い看護師さんが
私に教えてくれました。
「体調の悪さが原因不明の人とか、来ますね」
「死にかけてやってくるんだけど
元気になって帰っていくんですよね、
不思議なことに」と。



先生の肌は年齢に比べてきれいでした。
白くて柔らかそう。
横にいたすっぴんの奥様の肌もお綺麗で。
先生が化粧が嫌いなあまり
結婚式の日の化粧さえ
させてもらえなかったのよ!と仰ってた。



素敵な奥様はその日ミニスカートだった。
先生に「冷えってどう思われますか?」と
聞くと「性ホルモンがちゃんと分泌されてたら
そんなもん全然関係ない」と言う。
奥様も長らく牛肉摂取の人なんだそうだ。
紹介者のチャンさんの奥さんも若い頃から
こちらの韓医院のお世話になってるそうだ。
皆見た目が若い。



先生は、私がしっかり牛肉食べたら
「60歳になっても元気に動き回る事だろう」
「寝なくても平気なレベルで」と仰った。
性ホルモン欠如といっても軽症だから、
やればすぐに結果が出るだろうとも。
また、「性ホルモンが不足した人間が
牛肉大量に食べても太ることはまずない」と。



ならば、徹底的にやってみよう~!
しかしいくら安い牛肉を探しても
一週間で6キロの牛肉は家計に響きすぎる。
だけど主婦が倒れると家がどうなるかの
弊害を痛感している夫の方が乗り気だった。
「対処法が無いのが一番困る、
やれることがあるならやろう~!」と。
毎週家族五人で市場に肉を買いに行った。
「10斤(6キロ)ください!」



ということで牛肉生活スタート、
(韓薬を飲みながら)
不思議な事に一日900gという信じられない量を
私は毎日完食した。意外に苦しくなかった。
幸いにも米はいくら食べても良かったがもう入らない笑



するとたった開始数日で
めまいとふらつきの症状がぴたりと消えた。
顔の血色が良くなって肌が艶々してきた。



最初の牛肉生活の一年目はかなり真面目に。
二年目は少し緩やかに。
後はかなり自由に食事したけれど
疲れたらすぐ牛肉という感じで
過ごしてあれから17年。
我が家の冷蔵庫の牛肉は
ただの一度も切れたことがない。
これはせっせと買ってくれた夫がエライ。




牛肉摂取の効果は精神の安定にも及ぶと
先生から言われていた。
牛肉のおかげなのか
確かに精神は安定している方だと思う。
年齢的には更年期で去年閉経したが
体調不調もなく過ぎた。
日々のご飯は旨いしぐっすり眠れる。
すっきり目覚めて朝から身体が軽い。




去年20代前半の娘と10代後半の息子が
めまいを訴えたので、その韓医院に連れて行った。
久しぶりにお目にかかった先生は相変わらず艶々。
診察時間が前より少し長くなっていた。
その日も初診の患者さんが先生に怒鳴られていた。
変わらないな~と嬉しくなった。


娘と息子はやはり性ホルモンが弱いという。(遺伝でしょう)
韓薬の処方をお願いしたが、
「症状が軽いし若いし、牛肉と葉物の野菜食ったら治る」
と先生が言うのでやってみたら
二人ともすぐに元気になった。
うちは子供達も「疲れたら牛肉」の人だった。



日本にも牛肉押しの先生はいる。
「肉食女子の肌はなぜきれいなのか」の
森谷宜朋先生。

肉食押しの先生は、結構いらっしゃるので
気になる方はお調べくださいね。



こちらの韓医院で、
患者さん全部が牛肉を推奨されるわけではありません。
人それぞれです。
韓薬が必要ないと判断されると、
お願いしても処方してもらえません。
私も最近は韓薬を頂けていません。





先生の息子さんが日本の大学院に進学なさった関係で
一時期先生とは個人的に近くお付き合いさせて頂きました。
患者さんに対する強い責任感を持って、
真摯に研究なさってる方でした。



韓国では21世紀頭に「皇帝ダイエット」という
肉食中心のダイエットが一時期流行しました。
なので「牛肉中心の食生活」と言うと
「皇帝ダイエット?」と時々聞かれました。
どこまでも健康目的で始めた牛肉食ですが、
結果的にダイエット効果は得ているのかもしれません。
私のBМI値は21で、身体にはあまり贅肉がありません。



30代の妊娠時の体調不良から始めた牛肉食ですが、
あっという間に更年期と呼ばれる50代になりました。
更年期女性は性ホルモンのエストロゲン等が減少する事で
自律神経に乱れが生じるそうですが、
足りない「性ホルモン」を食事で補強し続けてきたせいでしょうか。
特になんの不調もなく過ごしています。
閉経後いっそ前より元気になったのではと感じています。




めまいや立ちくらみ、貧血で長年苦しんでる人は
あちこちにいらっしゃるようで。
ただ、こちらの韓医院をご紹介したところ
実践は難しいという方に何人も会いました。
牛肉の経済的負担。
またそれだけの量の牛肉を身体が摂取できない。
牛肉の害を指摘する意見に心が折れる。
等色々な理由があるようです。
韓国人でも日本人でも。




健康法は色々ありますので、
自分に無理のない方法を実践出来たら良いですね。
私の場合、牛肉が自分に合っていたのでしょう。
この17年間めまいも、体調不良もほぼ無く
かなり元気に動き回っています。
この韓医院を教えてくれた方と先生とのご縁に
そして食生活を支えてくれた夫に感謝しています。




この記事に関して先生の許可をとってないので
韓医院の名称をここに記しておりませんが
もしこれを一読なさって
この韓医院の治療を受けたい。
体調が悪くてどうしようもない
という方がいらしたらメッセージをお送りください。
状況を簡単に伺ってから場所をお教えします。
(私にとっても大事な方なので)


自分の知らなかった方法
想像もつかなかった斜め上の方法で
体調不良が治る事もある、という話でした。
「〇〇なんて治らないよ」の世界もあると思いますが、
「〇〇は治るよ」の世界もあることでしょう。
選ぶのはいつも自分です。


ありがとうございました。






















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?