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「すずめの戸締り」と「海辺のカフカ」と、これからと


日本アニメーションの人気が韓国で止まらない。
「ザ・スラムダンク」の450万人大ヒットは記憶に新しいが、
現在「すずめの戸締り」は440万人動員を突破し、未だ上映中。



「すずめの戸締り」の新海誠監督が
村上春樹ファンであることは有名な話。
村上春樹による神戸大地震後の短編集
「神の子どもはみな踊る」の中に
「かえるくん、東京を救う」がある。
そこに大地震を起こそうとする「みみずくん」が出てくる事は、
新海ファン村上ファンの間では既知の事実なのだろう。
それを私が知ったのは、つい最近の事だったけれど。
(ちなみに村上春樹作品は韓国でも大人気です)




去年の秋、たまたま地元の映画祭の上映作品に
村上春樹原作の「ドライビングマイカー」があったので鑑賞した。
(聾啞がテーマの映画祭だった。ドライビングマイカーに
複数の韓国人キャストが出てくる事も上映の理由かと)



それがきっかけで、村上春樹本にハマった。
村上春樹の文庫本を沢山持ってるお友達がソウルにいた
お陰でこの冬、長編をいくつも読むことができた。
若い頃には目に入らなかったあれこれが
目に胸に腹に突き刺さった。
まっすぐ読めない、あちこちで転ぶ、
立ち上がれない、泣きそう。うずくまる。
目は文字を追いながらも、心は七転八倒大忙し。
読書、、のはずなのに、汗をかきかき走ってるような気がした。



読後感はいつも妙。
感じたことが上手く言葉にならない.
「ちょっと待ってほしい」
「安易に言葉にしないで」と自分の中の何かがいう。
だから「ドライビングマイカー」の感想さえまとめられない。
嫌がることをすると、
だんだん聞こえなくなりそうなので無理しない。



そんな中、最近になって長編小説「海辺のカフカ」を読んだ。
「喋る猫が出てくる」という事以外の内容は知らなかった。
(以下「すずめの戸締り」「海辺のカフカ」共にネタバレあり)



読んでみて驚いたことに、
「すずめの戸締り」と「海辺のカフカ」の共通点は
喋る猫どころじゃなかった。
〇海辺の椅子
〇入口の石
〇あの世とこの世の堺の世界
〇井上陽水さんの「夢の中へ」の歌(二回も出てくる)
(他にもあったと思う)
物語の出発も似ていた。
10代の子が保護者の元を飛び出すことから始まる。



「海辺のカフカ」の主人公は、
15歳になったばかりの少年。
彼はある日東京の親元から家出をする。
家出先での彼の偽名は「田村カフカ」。
すずめと違うのは、家出が計画的だった事。
父親が相当変わった芸術家で、読み進めていくと
家出の理由がよくわかる。
カフカ君の肩に手を置いて
「大変だったね!」と慰労したくなるほど。
(この作品、愛猫家は避けた方がよろしいかと!)



ちなみに、パ〇リね、
いやオマージュだと揶揄したいわけではありません。
どんな作品も多かれ少なかれ先達の影響を受ける。
(ちなみに「海辺のカフカ」にも
数多くのオマージュが含まれていました。
谷崎潤一郎、夏目漱石、紫式部等等、
図書館が舞台なので、文学の話多かったです)




「共通のモチーフがやけに多い」というだけであって
新海誠監督が村上春樹の世界の再現を
目指したのかどうかは私には分からない。
(太い流れを継承している部分はあると思う)
ただただ新海誠さんすごいなあ~との思いが高まり、
胸アツになってこの文章を書いている。



村上春樹さんは文学界のトム・クルーズ
じゃないかと勝手に思ってる。
アカデミー賞やノーベル賞はなかなかくれないけど
圧倒的な数の人に欲されるスターという意味で。



「海辺のカフカ」は村上作品の中でも評価が高いそう。
(最近知りました申し訳ございません)
だけど「海辺のカフカ」を二時間で読了するのは難しい。
映画ならば、作家が脳内で構築した世界を
映像と音楽で二時間で人に伝えられる。
完璧ではなくても。
(絵画も文学も、どうしたって完全ではない)




クリエイターの多くが創作物を誰かに届けたいし
見てもらいたいものだと思う。
そしてその代価もクリエイターの手に入るといい。
日本では「すずめの戸締り」の観客動員数は
1000万人を超えている。中国韓国でも大ヒット。
この映画は「伝達」という意味では大成功した。



しかし、、長編小説、それはまるで
お作法をきっちりと踏まえるべき伝統芸能のよう。
本を読む習慣や技術がない人には
長編小説はとても敷居が高いらしい。
今から「海辺のカフカ」を1000万人の人間が読むだろうか。
活字として読まれるのは難しい気がする。
(でも100年後にも残ってる小説には違いない!)



それはそれは珍しく貴重な美しい鳥を
(20年前には万人が見られるわけではなかった)
多くの人の目に映るような
広く大きな舞台に連れだして、
自由にはばたかせているように見えるのは、私だけだろうか。
鳥の方も20年前は警戒して、
絶対降りてこなかったのが
いまや下界にかなり気を許しているよう。
もう大丈夫なんだと。




「海辺のカフカ」には、自分が15歳の時には
さっぱり意味の分からなかっただろう事が沢山書いてあった。
結婚して海外で子育てして世間の波に揉まれた今、
「ああ、ここに書いてあることは本当だなあ、」
としみじみ。




気になる所に線を引いたら、
本がアンダーラインだらけになりそう。
自分のための「海辺のカフカ」を購入して、
今後本と関係性を深めていこう、と思う。
期が熟せば、感想も書ける日がくるかもしれない。
ゆっくり寝かせておこう。
人もネタも「寝る子は育つ!」



村上春樹氏が連綿と続く人間の営みの流れの中で
キャッチした普遍的な何か、
小説の形で伝えたかった何かを、
新海誠監督はもっと多くの人の手に届く形にした
、、そんな気がした。



誰もがお茶席には入れなくても。
花見の席の気軽な野立てなら、
平服でお点前を気軽に楽しんでいただけます~。
どーぞ~!みたいな。




で、そのお茶を美味しい!と思い
もっと深めてみたい、、
というやる気のある人が
自ら山登りを始めるのだろう。
裾野の広さは大切だね!




また、「現代だから出来る」ことってある。
「今」だから出来る事。




スマホが無しでは
「すずめの戸締り」のストーリーが転がらなかった。
猫のダイジンの「なう」が、
SNSにアップされるから追っかけていけた。
女子高生が現金も持たずに家を出て
日本縦断ができたのはスマホのお陰。




20年前を生きてたカフカくんは、
夜行バスで四国に向かい
事前に予約した高松の宿に泊まった。
この時代に衝動的家出をしても
色々行き詰っただろう。
あの時代には計画的家出がふさわしい。
20年の差で10代の家出もこんなに違う。



それなら「今」ダメな事でも
10年後には出来るようになってるかもしれないねと。
20年後なら、もっと簡単になってるかもしれないねと。
思ってもいいのではないだろうか。
楽観的な気分で過ごそうという話ではなく、
その未来を明確に心に描きたい。
小説だって映画だって
クリエイターの想像の種から全てが始まっていく。
「想像になど何の力も無い」とは
死んでも言いたくない人たちが
必死て何かを創作している。



高校生のすずめが、幼いすずめに言った。
「あなたは大きくなったら、、
 だから!大丈夫なの!!」



日本の将来を危ぶむ声が色々あるけど。
大丈夫! と思える。
こんなに土地がグラグラ揺れるような国がどこにある。
土地は動かないから不動産っていうのに
日本の土地って動きまくるじゃないか!
そんな場所を故郷に生まれてきた人たちが
弱いわけがあるか。
揺れても生きられるような人が生まれてる。



うちの夫なんて日本に行って
震度2位の地震に遭遇すると
その日一日中顔が青い。
ものすごく不安になるんだと、
地が揺れるなんて!と。
日本の皆さんには慣れっこでしょうが。



だから、、ニッポンの未来も自分の未来も、
他の人のことも
(いっしょくたが過ぎますね笑)
「これからですね!」そう言いたい。




あの扉の向こうの世界でざわめく
妖怪だかお化けだか土地の神様なんだかは、
「大丈夫?」って心配して
こっちを覗きに来ているようなそんな気もする。
開けるつもりはなくて、
押すな押すなでどわーっと開いちゃった扉。




だってあの存在って、
私たちの先祖だったり、
育った土地の神様だったり。
私たちが小さい時に馴染んだ何かのような
懐かしさを感じる。
そしてどこか暖かい。
だから実は扉の向こうは
私たちの胸の奥に繋がってるのかもしれない。



小さい頃ならともかく
今出てこられては
ちょっと都合が悪かったり
格好悪かったりする存在かもしれないけれど
それを「無かったことにしない」で。
それもいつかあった事で、
かつて一緒に手を繋いでいた事を認めてあげると
落ち着いて、、安らいでまた静まる。




だから自分の胸に手を当てて
深く息を吸って、そこに向かって
「ありがとう!大丈夫!行ってきます!」
って気持ちよく言えたら
笑って見送ってくれる。
そんな気がしました。



「海辺のカフカ」から
話が転んでこんなところまで来てしまいました。
これでは書いているというより、
喋っているに近く
話の論理性がどんどん損なわれていきましたが、



この頃、前後のつじつまの合わない歌詞、
例えば椎名林檎先生の
「グレッチで殴って」(何故??)


にどういうわけだか心安らぐので、
このままにしておきます。
ありがとうございました。


















































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