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【創作小説】峠の庵 恩返しー番外編①ー

〈本編のあらすじ〉
ある 山の麓の民宿屋の庵で、その昔 お爺さんとお婆さんが住んでいた。しかし、都会から大臣が来るというのに お爺さんは、突然 死んでしまう。食事係のいないお婆さんは、困り果てる。

そんなところに、たぬきの親子が現れる。たぬきたちは、お爺さんにかつて、恩を受けた 霊媒たぬきだった。

親父さんに化けたたぬきのお母さんは、見事な料理で都会から来た大臣をもてなし、大臣は喜んで都会に帰っていく。たぬきには、お爺さんの霊が憑いていた。

お婆さんは、そのままたぬきたちと暮らす。

たぬきたちとお婆さんは、とっても仲良しになる。

晴れの日には、お婆さんの作ったお弁当を持って丘に上がり、ぽかぽか陽気のなかお弁当を食べる。

雨の日には、3人身を寄せ合って寒さを避け、

月夜の晩には、たぬきたちは腹をぽんぽこ叩いて踊り回る。

たぬきたちは、お婆さんがとてもだいすきだ。

ある日、お婆さんは、崖から落ちて死んでしまう。

悲しみに暮れる たぬきの親子。

そんななか、大臣がまた訪れるが、たぬきたちは、お爺さん、お婆さんの姿で見事にもてなす。

都会へ帰った大臣は、それが たぬきの親子だと見抜いているが、なにも云わない。

村のみんなも 見抜いているが、なにも云わない。

お爺さんと、お婆さんの霊が取り憑いた たぬきたちは、それから しあわせそうに暮らすのだ。
お爺さんたちの霊も たぬきたちと居ると 嬉しい。


さて、ぽんぽこたぬきの親子だが、あれからずっと民宿をやっていた。

親父さんと、女将さんの霊は取り憑いていたが、たぬきと居るのが嬉しいのか まったく成仏しなかった。

そんな、ある日。

村に、夏まつりが始まるらしい。

大々的に村のお寺で。村人たちは、大騒ぎ。

村の人たちは、気持ち うきうきいさんで準備を進める。
老若男女、総出である。

しかし、村人たちが困ったのは、たぬきたちをまつりに呼ぶかどうか。

こないだから、女将さんに化けたたぬきに「まつり」といっても首を傾げるし、

呼んでも、彼らはどうするのだろう。

もしかしたら、たぬきは 花火の音でびっくりして逃げ出してしまうかもしれない。

そうしたら、村人は困る。

みんな、たぬきの親子がだいすきなのだ。
みているだけで、心がほっこりするのだ。

ところが、ある日 たぬきの子どもが 村から、手土産に焼き餅を持って帰って来る。

それは、村の人が、まつりの前に 子どもたちに配っているのだった。

たぶん、だれかが 間違えて、たまたま子供の姿に化けていた たぬきの子どもにも配ってしまったらしい。

花火の音に びっくりして、村から逃げ出したら、村のみんなが悲しむというのに。

その焼き餅に付いていた、文を見て、字を見て始めて納得したらしい。お母さんたぬきはこう言うのだった。

「あら! 村の夏まつりがあるのね! おい、息子! 行きたいかい? 行きたいよね? 」

お母さんたぬきは、しっかり行く気だ。目がうるうるしている。

子どもたぬきは、まったく気おされて一生懸命うなずく。

たぬきのお母さんは、たのしいことが だいすきだ。

「おい! 息子! おまえは子どもの格好で行くんだよ? 私は……、さて、どうするか」

お母さんたぬきは、るんるんして言った。
峠の庵の山の上では、星がきらきらしていた。


             つづく


トップ画像は、メイプル楓さんの
   「みんなのフォトギャラリー」より、
   いつも ありがとうございます♥😊


©2024.3.1.山田えみこ

つづきは、こちら⬇︎







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