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熊が出た!

昨日、仕事から帰って来た夫が、開口一番「熊に遭った!」と言った。

なに!くまだって?!

「えっ?どこで?どの辺りで?どうだったの?」…と聞こうとする前に、夫の方から順番に話し出した。

夫曰く、「仕事から帰ってくる途中の道にいた。車で走っていたら、道の真ん中に何かがいて、最初は「犬かな?大きい犬やなぁ」と思ったけど、よく見たら熊だった」とのこと。

パッと見、子熊っぽかったけど、どうも痩せた大人の熊だったそうな。

「その後、どうなったの?」と私が聞くと、「熊は逃げて山の中へ入っていったから、そのまま通り抜けてきた」
と、夫は答えた。

この熊に遭ったという道は、一応舗装はされているけど、車線は引かれていない道路で、我が家から数百メートル進んだところにある。道の片側は里山の斜面になっていて、普段は地元の人の車しか通らない静かな道で、朝夕は中学生が自転車で通学し、夜や休日はウォーキングやジョギングの大人たちがよく通る。

以前もここで熊を目撃した人がいたから、さほど驚きはしないけど、でも、この道を通るのは車でも怖いな…と思った。

夫は、役所に電話して「熊に遭った」と通報し(←この情報は「熊の目撃情報」として広く市民に共有される)、その後、自分のSNSで「気を付けてください」と友人知人に熊情報を発信していた。

熊と言えば、私も以前、2度遭ったことがある。

一度目は、車を運転していて、道路の脇を走っている熊を見たとき。
二度目は、山菜取りをしていて、200mほど離れたところで見てしまったとき。

どちらも今から20年以上昔の話、御岳の麓にある僻地の小さな学校に勤めていた時の出来事だ。

一回目は、仕事を終えて帰宅する時、途中の集落の道を走っている最中に出会った。日没後であたりは暗くなっていたため、最初は「大きい犬かな?」と思ったんだけど、追い抜く時にチラ見したら熊だった。もうビックリしたのなんのって…。令和時代の熊は「車が相手でも怖がらず突撃してくる」みたいだけど(汗)、当時(平成初期)の熊は車を怖がってくれたので、何事も無く通り過ぎることができた。

二回目は、学校の行事で「わらび採り」をしていた時、生徒たちと一緒に牧場内の林道をわらびを取りながら歩いていて、ばったり遭遇した。この時は、熊の方が私たちに先に気づいたみたいで、熊の方からウーーーーと低い唸り声をあげていた。「何か聞こえるよ」「何の音だろう?」とその音に気付いた私たちはその場で立ち止まり、周囲を見渡したら、ここから200mくらい先に黒色のやや大きめの野生動物がいるのを発見。「熊だ!」と気づいた私たちは、静かに黙って音を立てないよう気を付けて後退りし、一目散に走って逃げたのだった。この時も、当時の熊は人間を怖がっていたので追いかけられず、無事に逃げることができた。
その後、本部の校長先生に熊のことを報告し、わらび採りは中止。今まで毎年「わらび採り」をしてきたけど、熊に遭ったのはこれが初めてで、山の暮らしに慣れている生徒たちも、かなりビビっていた。わたしも怖くてガクブルだった。早速、牧場の管理者にも報告して、しばらくの間はその辺りには行かないように皆で気を付けていた。(ちなみに、毎年この行事で採ったわらびは、半分は村のお年寄り世帯にボランティアでお配りし、残りの半分は業者に売って、得た利益は生徒会の活動資金に充てていた。)

私が熊に遭遇した時期に勤務していた学校は、その後平成後期に他校と統合することになって廃校となり、今はない。
だけど、私が勤務していた頃は、山裾にある学校だったから、校庭にいろんな野生動物が現れた。一番多かったのが猿(ニホンザル)で、今のような梅雨の頃、ムシムシと蒸し暑い曇り空の日に、彼らは群れになって山から下り、学校の裏山でよく遊んでいた。子猿たちかキャッキャと遊び、その近くに母猿たちがいて、そんな群れの中心にボス猿がいた。ボスは校舎の中からガラス越しに見ている我々人間に対して眼光鋭く「オレの群れに手出ししたら噛み◯すぞ!」というような凄まじい圧のある強烈なオーラを放っていた。野生のボス猿が放つ「群れを守る」本能は本当に凄い。その凄さに圧倒された。人間の父性も、本来はこれくらい凄みのある強いものだったのだろうか。
窓ガラスと校舎の壁で隔たれ守られているからいいけど、この境界線がなければ、私たちはやられると思った。猿と人間の間には、自然と人工物くらいの隔たりがあり、また決して混ざることはない緊張感があった。

…と、夫の熊目撃から、ふと、昔の野生動物に遭遇した体験を思い出した。

熊はもちろん、猿もその他の生物でもみんなそうだけど、野生の動物は怖い。あっちは生きるのに真剣だから、野生の本能を剥き出しにして向かってくる。下手に手出ししたら、やるかやられるかの修羅の世界へ引きずり込まれることになる。絶対になめてはいけない。畏怖の気持ちをもって接するべきだと思うのだ。

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