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ルーム 4 臨死体験 第3話

第3話

不妊治療


回目の人生を生きていると思うと
嬉しくなった。


錯覚でも嬉しかった。


私はこの7年間

日本と海外で不妊治療を続けてきた。
出口の見えないトンネルをずっと歩いてきた。


不妊治療中は月1/3〜半分 の
スケジュールを抑えられる。

毎月毎月、今度こそと希望を胸に
受精卵を埋め込む。


しかし、うまく着床したとしても
その後どうしても育たないのだ。

落ち込む。




時間体力精神力
仕事のチャンスお金


容赦なく消えていく。


私には子供がいない、、、、、
不妊マイノリティ


私は生物として
生命の連鎖に組み込まれていない。



地球上の生物として仕事をしていない。
ただの役立たずで生きている、
価値もない命なのだと思っていた。



ただ生きて、消費して、死んでいく
無駄な存在なのだと本気で思っていた。



特別養子縁組



43歳になるとそろそろ
無理かなと思い始めた。



国の特別養子縁組制度にも
不妊治療と並行して申し込んだ。

3年待っても一度も子供が回ってこなかった。



歯がゆい。
お役所に何度も問い合わせる。



「審査会議の内容はお伝えできません」

子供をもらえる審査基準も非公表。
申請した順番通りにもらえるわけではないと言う。

不思議だ。
民主主義国家の行政機関とは思えない返事だ。


巷では若い夫婦が優先的に
子供をもらえているという噂を聞く。


また、民間の養子縁組の会社があり
その会社を通して多くの日本人の子供が
海外に養子に出されていると報道されていた。


なのになぜかうちにはこない。


八方塞がりだった。


年齢的にも45歳になり
子供を育てるには限界だと思った。
諦めるしかなかった。


そんな時に交通事故に遭った。


救急車で運ばれる途中、一度心肺停止したそうだ。
救急隊員の心臓マッサージで息を吹き返した。


手術してから2ヶ月後の診察日に
麻酔を担当してくれた女医さんが
事故後、搬送され病院に来た時の
状況を話してくれた。


私は手術中の出来事を思い切って話した。




すると女医さんは

「私達もそのような現象が起こるということを
医学部で学んでいます。

麻酔がかかった状態で何かを見る。
でも、麻酔から覚めしっかりと絵のように記憶し、
話をしてくれる患者さんはあなたが初めてです。

ほとんどの人が見ないか、
見たとしても覚えていないのです。

本当に教えてくれてありがとうございます!」



と心から喜んで目を輝かせながら
興味を持って話を聞いて下さった。



もし、あの体験が夢でも麻酔による
錯覚だったとしても、私の心は救われた。

生まれ変わったようだった。
あのウォータースライダーの水に洗い流され、
サッパリと生き返ったようだ。



それに、この先私がいつか死ぬ時が来ても、
脳の働きを麻痺させ、
幸せな幻覚が見られるプログラミングが
体に備わっているのなら安心だ。



あの光景をもう一度見られると思うと、
安心して天寿を全うしこの世を去ろうと思える。
素晴らしい風景を見るためにも、
精一杯この人生を、今生を謳歌しようと思った。

輪廻転生



もし、本当に輪廻転生があるとしたら、、、


次の人生のために今の自分より少しだけ成長して
よい自分になれるよう努力したい。

そしてまた生まれ変わった時も
今、住んでいる平和で美しい世界、、、

いや、今の日本に生まれたい。

平和で豊かな国は世界からみると、とても限られている。


世界中で紛争や内戦、貧困など様々な問題が、いまこの瞬間にも起きている。

次に生まれ変わる時、平和な国に生まれ落ちる保証はない。

核爆弾で廃墟になった地球
水がなくなり海や湖や川が干上がった地球
森林がなくなり砂漠になった地球
こんな地球に生まれたくない。


次に美しく平和なところに生まれるためにも、

全ての生き物の為に、

これから生まれてくる子供達の為に、

今、生きている子供や若者達の為に、

何か少しでもプラスになることをして生きていこうと思う。

地球上で生きているすべての人と生物と
一蓮托生なのだから。


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※ この物語は事実を基にしたフィクションです。
また、いかなる宗教団体とも関わりありません。

※実体験に関してはアメリカの臨死体験研究財団にて、臨死体験に非常に近く、またその体験後に素晴らしい精神変革を起こした症例としてアメリカで紹介されました。

「ルーム 4 臨死体験 第1話」 、 「ルーム 4 臨死体験 第2話」

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