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愛犬との会話

これは夢なんだろうか。

昨年亡くなった愛犬メルが私の顔を舐めている。
「大丈夫?本当に心配で寝てられないよ」とメルがいう。
ああ、メルが喋っているということは夢なんだなあ、とぼんやり認識する。

嫌なことがあったとき、疲れたとき、私はいつも彼女に話しかけた。
じっと私の目を見つめて、話を聞いていてくれたメル。
犬とは思えない落ち着きがあった。
普段はひとりが好きなのか、自分の好きな場所で寝ているメルが、私の心が落ちているとき、私の横にそっと座って、私の話を聞いてくれた。

「あなたが喋れるといいのにね」という私にいつもとても困った顔をしていたっけ。

そんな彼女がいなくなって、知らない間に、心にチリが積もったようだ。
表面張力で維持されていた心のコップがブワッと溢れてしまったようだ。

人一倍、自信がなくて、すぐに落ち込んでしまう私。
私を「イメージ通りにしようとする力」が大嫌いなのに、気付いたら「相手のイメージ」に沿った行動を取ろうとしている自分に気づいて落ち込む。今の世の中、他者を自分のイメージ通りにしようとする人のなんと多いことか。そんな世の中でよく生き延びてこれたなあと自分でも思う。

「いいじゃない、落ち込んだって。落ち込んだり浮上したりの繰り返しが生きているってことだ。心電図でいったら、落ち込みも悩みもしない人って、ピーーーーって、死んでるのと同じだ。悩むって生きている証拠で、前を向いている証拠だってママ、いつも言ってるじゃない。思いっきり落ち込んだって、生きていればまた楽しいこともあるって、ママが一番知ってるでしょ」とメルがいつになく偉そうな顔で言う。

そっか、彼女が喋れると、こんなに偉そうなんだと私は夢の中で苦笑いする。

「やりたいようにやったらいいよ。なにしたって、誰かが何か言うんだったら、ママのやりたいようにやったほうがいいっていつも思ってたの。喋れるようになったから、それを言うために起きてきたのよ」とメル。

人一倍自信がなくて、すぐに落ち込んでしまうのも私の個性。
それでも、なんとか立ち上がって、またのろのろと歩き出すのも、私の個性。

「そうだね。ほんとうにそうだ」
私がそういうと、極上のいつもの笑顔でメルがうなづいた。
犬には表情筋がないと何かで読んだけれど、メルはほんとうに表情が豊かだ。

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ペロペロペロ
ほっぺたを舐められる感覚で、今度はほんとうに目が覚めた。
(ご飯の時間です)
メルの妹弟が、私を起こした。
そこにメルはいなかった。

でも、メルはいつも私のそばにいてくれるんだなあ。
いつもみたいに、私に必要なときにそばに来てくれるんだなあ、なんて思いながら起き上がる私。
やったぁ!ご飯だ!!!とはしゃぐメルの妹弟。

賑やかな1日がまた始まる。


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カウンセラー・作家。カウンセリングルーム「おーぷんざはーと」(大阪)1991年設立(https://othpage.com/)。著書「モラハラ環境を生きた人たち」(而立書房)「カウンセラーが語るモラルハラスメント」(晶文社刊 現在9刷)他 共著あり。執筆依頼、お待ちしています。
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