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海外の医療制度② フランス

イギリスの医療制度に引き続き、今回はフランスの医療制度について。
世界の医療制度を大きく4つに分けるとこうりますよというのがこちら

2、フランス
フランスの国としての特徴が、国民の社会保険料などの負担率は高くて、社会保障の支出は高い、高負担・高福祉の国というのが特徴。

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高齢化率が**20.0%と比較的高いながら(日本は**27.6%でダントツ1位)少子化対策が功を奏して特殊出生率*1.96人と先進国の中では高い水準を維持している。余談だが、日本は現在*1.43人。実は両国とも同じ1970~80年代から対策に乗り出したが、結果は大きく違った。フランスは世帯人数が多ければ税制が優遇される制度や保育施設の拡充など積極的な施策が功を奏したと言われている。 *2016年段階 **2018年段階

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フランスはThe Bismarck Modelという医療制度に分類される。
医療提供者と保険業者が分けられており、医療費は労使による保険料拠出を財源とし、保険業者間の競争が認められている。他にはGermany, Switzerland, Netherlands,Japanなどが該当する。

フランスの特筆すべき点は、2007年は財政赤字がトータル100億ユーロあったにも関わらず、2017年は老齢部門や労災部門で黒字化を果たし、2024年までに赤字の完全解消を目標に動いているということだ。これには*医療保険支出全国目標(ONDAM)というものを定め、遵守、毎年達成させることで医療保険支出の削減など成功したと言われている。*病院部門の効率化、医薬品価格の引き下げ、後発医薬品の使用促進、開業医報酬の削減など

フランスの特徴をいくつか記載する。

1、かかりつけ医制度:16歳になると、主治医を選択・届け出る必要がある。主治医に通うと、償還率7割、主治医以外に診てもらう場合は3割と負担率は高くなる。また、高次の病院にいくときにも紹介状が必要になる。カルト・ヴィタル(Carte Vitale)という、ICカードが発行され、医療機関にかかる際に提示を行うと情報が読み取られ、医療費の償還もされる仕組みになっている。因みに重症患者、精神病、16歳以下の子供などは医療償還率は100%。(ただし、患者は受診1回につき1€を支払う必要があり、これは償還外)

2、診療報酬の決定権:日本の場合は国は積極的に介入を行うに対して、フランスでは介入は限定的でこれは憲法に明記されているらしい。医師会、医師の影響力が強く、診療報酬も、医師会と保険者との話し合いで決まっている。また、償還率に関しても同様で、病気や怪我の種類、処置の違いや検査・手術・入院など項目によって償還率が異なる。薬剤もその費用対効果や重要度によって償還率が変わるのが特徴。因みに製薬会社の友人からアリセプトなどの認知症の薬が市場に出てから最終的に償還率0%とジャッジされ、フランス市場から撤退したという話を聞いた。ある意味合理的な判断がなされていると感じる。

3、公的保険と私保険の加入の義務化:疾病金庫(日本でいう社会保険連合)に保険料を収める第三者支払い方式でこの点は日本と同じ。一方、補足的医療保険(Mutuelleという)私保険への加入が義務づけられており、Mutuelleに加入すれば、外来の場合1€で医療を受けることができる。

4、出来高払い:イギリスが人頭払に対して、フランスは出来高払い

フランスは日本と同じ社会保険制度で成り立っている点は似ているが、RMOという明確な医療指標を設定し、医療費削減に対して効果をあげていることが印象的だった。救急車が有料であったり(無料の国の方が少ない)、薬や処置の種類によって償還率が異なったりと、複雑なようにも思えるが、綿密にコントロールを行なっている印象だった。


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