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海外の医療制度① イギリス

1月初旬に海外の医療制度についてのセミナーを集中的に受けてきた。
国によって違いがあり、課題もそれぞれ異なる。
ちなみに世界の医療制度を大きく4つに分けるとこんな感じになるらしい。
代表的な国で印象的だったポイントをまとめてみようと思う。

1、イギリス
2、フランス
3、アメリカ
4、オランダ


1、イギリス
イギリスで特徴的なのは、政府が医療の提供と支払いの両方の役割を担うこと。医療提供者と保険提供者が一緒になっており、保険会社の選択がない。
In this system, health care is provided and financed by the government through tax payments, just like the police force or the public library.
このモデルはThe Beveridge Model(考案者William Beveridgeにちなむ)と言われている。この医療制度を採用しているのはItaly, Spain, Norway, Denmar Finland, Sweden, New Zealandなどの国々。


イギリスは医療が税金で運営され、基本的に無料で受けられる。そしてその中心役となるのがNHS(National Health Service)という日本でいうと厚生労働省に当たる機関。1948年の戦後、チャーチルの時代に設定された。医療を必要とする⼈に無料で提供するのがコンセプトで、医療者はNHSと契約をむすび、NHSが医療費の支払者になっている。総医療費にしめる公的医療費の割合は84%と、OECDの平均である72%に比べて高い。(ちなみに日本は82%)
そしてイギリスの特徴としてあげられるのがGP(General Practitioner)制度。マーガレット・サッチャーの時代に推進された。イギリスに特徴的なVFM(value for money)と言う、価値に見合った医療を打ち出したのもこの時代。国民の税金を国民の為に最大限有効に活用するために、コストパフォーマンスなどを可視化、スコアに落とし込んで、一定基準以上の政策が通るようになる仕組みを導入した。
その後、ブレア政権によって医療改革が行われ、その中で医療供給体制の整備を地方の責任とし、地域の患者ニーズを最もよく把握する地元の医師・看護師(プライマリケア提供者)がサービスを決定することが明示された。NHS制定当初と比較すると、プライマリケアに大きな権限が移ったことになる。また、業績に対するより厳格なアプローチにより患者に対する医療サービスのために予算が最大限使おうという方針も明示された。これよりプライマリ・ケアを基盤とする医療保険制度が構築、20年ほどの年月をかけて、現在では90%の健康問題がプライマリ・ケアで対応できるようになった。予算編成なども、臨床現場への権限譲渡され、地域の患者のために提供できる医療に変遷を遂げていった。イギリス医療の特徴を3点述べたい。

1、GP登録制度:患者が事前に登録したGPで診療を受ける制度。基本事前予約制。セカンダリに行く場合などはGPで紹介状を作ってもらう。GPとセカンダリは患者情報の連携ができている。NHSが各医療機関における患者の満足度調査の結果や登録患者数をまとめサイトに公開しているので、患者はその情報を参考にGPを選ぶことができる。
2、コメディカルへの権限・分業:イギリスでは看護師や薬剤師などのコメディカルが日本と比べて大きな役割を担う。例えば処方権に関して。例えば慢性疾患などの特定疾患に限って看護師が判断して処方を行うことができる。また、薬剤師に関しても2014年より英国では、薬剤師を医師、看護師に次ぐ、第3の医療専門職と制定しており、2020年までに全薬剤師が独立処方者になる方針になっている。また、看護師はワクチンの摂取も可能。GPの代わりに軽いケガや症状を見る窓口もあり、患者からの満足度は高いそうだ。
3、医療技術評価の導入:費用対効果評価を公的医療提供の意思決定に用いている。医薬品を含む医療技術の評価に費用対効果を導入し、国立医療技術評価機構(NICE、1999年設立)という公的機関が、標準的な治療や処方を提言するガイダンスを発行している。
4、プライマリケア重視:イギリスはプライマリケアをとても重視しており、投資もそちらに寄せている傾向にあるそうだ。そんなGPだが、非医療的行為についても向き合うことが求められている。これは人頭払制(カバーするエリアの人数に対して支払いがなされるシステム)だからこそなし得た構造との見解もある。また、NICEにより提言された治療に対するガイドラインをベースにし、致命的な疾患かどうかを判断する力が求められている。治療が難しいものはプライマリでは治療せずセカンダリへ紹介する。

このようにVFMに基づき合理的な医療政策を取ってきたイギリス。最近大変その活動範囲を増やしているスタートアップがある。
それがBabylon Health。AI搭載型アプリによる診断サービスを行い、24時間ドクターと話せ、処方箋ももらえ、診察予約もできるようになる。

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バビロンの最大の顧客は英国のNHSで、今ロンドン市民が一般のGPからバビロンのサービスに切り替えているそう。AIの診断結果の精度の高さも相当なもので一般的な開業医(研修医)よりは優秀という数字が出ているらしい。
2019年のBabylon の成果だが、その勢いが見て取れる。

このようにして、ある程度のアクセスを犠牲にしながらも、GPの専門性と評価制度で品質を確保し、総額規制とゲートキーパー制でコストを下げる選択肢を選んで成果を出しているのがイギリスの医療制度の特徴。GPを中心に地域特性を生かしたプライマリケアを提供している点については評価をうけているようだ。合理的な意思決定がなされてきた結果の医療制度という印象を受けた。

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医療系SaaSスタートアップに所属。2015年に立ち上げた任意団体ReaVisionでアクセラレーターへのプログラム提供、ワークショップ開催、ハッカソン運営・運営代行などを実施。再定義カフェ、価値創造カフェなどのオリジナルイベントをシンガポールや香港などでも開催。