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自己啓発目的ではなく、マジ!でクライエントに資するプロフェッショナルになるために…

<マジプロシリーズ>

第1回目「キャリアコンサルタントになりたい、と思ったきっかけは何ですか?」

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 キャリアコンサルタントになった人とお話しをすると、「学生など若いときに、もっとキャリアのことを知っていれば人生の選択が違っていただろうと自分自身が思うので、早い時期からいろいろなことを考えられる支援をしたい」「会社員になって、不本意な異動があって悩んでいるときにキャリアコンサルティングを受ける機会があって、自分も同じような悩みを持っている人の役に立ちたいと思ったから」「社内の人間関係について悩んだときに、自分のコミュニケーション力を高めて、悩みを解決できる力を身に付けたいと思ったことがキャリアコンサルタントを目指したきっかけです。」など、自分の経験がきっかけとなり「人の役に立ちたい」「人との関わりが深い仕事がしたい」と考えて、キャリアコンサルタントという職業に興味を持つ人が多いようです。
 きっかけは「人の役に立ちたい」「人との関わりが深い仕事がしたい」という想いからスタートでOKだし、素敵だし、私自身も似たような想いからスタートしました。でも、実際に他者(=クライエント)の役に立つようになるには、相応の知識、技法、態度やあり方の修練が必要ですし、ましてや、「人の役に立つ」ことの対価として幾ばくかの金銭的報酬をいただくことができる身になるためには、継続的な学びや修練が不可欠です。

 私は、2006年頃に国家資格化される前の養成講座(当時は7日間)に通って、この道に入りました。養成講座を申し込む時に思ったのは、「この程度の時間と費用でknow howが手に入るなら、相談にのってもらうために1時間○○円を払うより、自分がknow howを身に付けて出来るようになってしまった方がお得だな。とっておくか」でした。そんなケシカラン魂胆で足を踏み入れたわけですが、これがまた奥深くて、これまでに軽く1000万円以上を相応の知識、技法、態度やあり方の修練のために「投資」してきています。
でも、まだまだ未熟者で、修練の途上にいて、何かがわかる!出来る!というよりも、むしろ、これは生涯をかけて磨いていかないとならないもののようだ…ということが、ますます身に沁みてわかるという状態にいます。

 このnoteでは、そんな未熟者の私が、こういうことって大事なんじゃない?こういうことを知っておいた方がいいんじゃない?ということをツラツラと書いていきます。
ですから、読むと何かがクリアになるというよりは、読んでくださる皆さんが自分自身と対話をするきっかけになったり、仲間と対話をするテーマを投げ掛けたりするようなものになるかと思います。

では先にすすみます。

 養成講座を受けていた時には、動機についてを掘り下げる機会はほとんどありませんでしたが、その後、大学院の修士課程(カウンセリング学)で学んだり、スーパービジョンを定期的に受けるようになってからは、「キャリア支援に関わる専門職を選択することによって、自分の中にあるどのような欲求を満たそうしているのか?」という動機や欲求について、向き合う機会が多々ありました。
 なぜかというと、キャリアに関わる支援職として働く際に、自分の動機や欲求は、自分自身にとってもクライエントにとっても役に立つこともあれば、一方で害になることもあるからです。これまでに、支援者のあり方ひとつで、効果的なキャリアカウンセリングを実施することが出来る場合もあるし、そうではない場合もあることを学んできました。
 キャリアコンサルタントに限らず、対人支援職になりたい人が抱く典型的な欲求には以下のようなものが挙げられます。

①他人に影響を与えたいという欲求
②恩返しをしたいという欲求
③誰かのお世話をしたいという欲求
④自分の個人的な問題を解決したいというセルフヘルプの欲求
⑤他人から必要とされたい欲求
⑥金銭的な報酬が欲しいという欲求
⑦地位や名声を求める欲求
⑧他者に答えを与えたいという欲求
⑨相手をコントロールしたいという欲求

①~⑨を見た時、自分自身であまり認めたくないような欲求がありますか?

⑥⑦あたりは、それをキャリアコンサルタントに求めるのはちょっと…と思う向きもあるかと思いますが(笑)、真面目な話、私は前職(外資系金融での経理・財務職)からキャリアコンサルタントに転身したこの16年以上にわたって、副業ではなく本業としてキャリアコンサルタントとしてずっと活動してきましたし、シングルマザーとして2人の息子の教育費や生活費も
稼がなくてはならなかったので⑥もあります。

 個人として豊かな生活をしたいという気持ちを持つことに、罪悪感を持つ必要はありません。でも、他者に奉仕をするという気持を大事にして、自分の生活を犠牲にし、無償の行為や余りにも低い報酬で他者を支援した場合、経済的に個人としての生活が成り立たなくなります。キャリア支援の専門家としての活動が持続可能なものではなくなるだけでなく、自分の生活そのものが出来なくなるわけです。したがって、自分自身の生活を大切にすることは必要です。
 一方でお金儲けに走り過ぎてしまうと、キャリアの支援者としてのクライエントとの関係づくりに差し障りがでることも有り得ます。たとえば、クライエントから幾ら報酬をもらえるかが一番の関心事になってしまったり、必要ではないと思われる面談や研修を設定したり(…まぁ、こういうことは実際にはありませんが)する可能性が起こり得るわけです。
自分の欲求を満たすだけでなく、支援する相手の欲求も併せて満たすことができるだろうか?ということを考えていく必要があることは言うまでもないことです。

 弊社で新しいサービス事業を立ち上げる際に、協力を依頼しようと思っているキャリアコンサルタントの方々と事業内容の説明会を行なったことがありました。株式会社としてサービス提供をしていくので、経費のことや提供するサービスの値付けのお話しをしたところ、後から「お金のことばかり言っていて、ちょっとキャリアカウンセリングで大事にしたい世界と違う」と言われお断りをされてしまったことがあります。
 私利私欲がないキャリアの支援者になることを理想と考えていないだろうか?ということ、私たちみんなが考えてみる必要がある点かもしれません。   私の場合、程度の差こそあれ、少なくとも完全に0ですとは言えない程度のものも含め①~⑨の欲求の全てが自分の中にあるなぁ~というのが正直なところです。そのことを自分自身で受け入れたうえで、これらの欲求が、クライエントとの関係性の中でどのような影響を及ぼすのか?考えることは、スーパービジョンの中でもたびたび取り上げられるテーマです。
 自分のこともクラエイントのことも大事にしながら、複数の欲求や動機をうまく調整していくことは、実務上もとても重要なことです。こういうことを考えていく際に、倫理綱領や倫理基準、法の理解などが必要になります。

キャリアコンサルタントの場合には、キャリアコンサルティング協議会が制定した倫理綱領が礎となります。https://www.career-cc.org/files/rinrikoryo.pdf

倫理や法については、養成講座ではサラリとしか扱われず、更新講習でもあまり扱われていません。

 私は、法学部卒業ということもありますし、大学院での学びやスーパービジョンの中でも、倫理や法、倫理綱領を理解することが、いかに効果的なキャリアカウンセリングを行なううえで大事なことなのか感じています。ですから、少しとっつきにくいと感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、このNOTEでは、まずは倫理や法、倫理綱領について書いていきたいと思います。