【日本語学校】私の授業準備はこんな感じです
これから日本語教師を目指す方や、日本語教師になりたての方で「授業準備って何すればいいの?」とか「授業スケジュールをもらったけど、この後どうすればいいの?」と困惑している人がいるかもしれないと思い、私の授業準備の仕方を書いてみようと思いました。一つの例として、参考にしてもらえればと思います。
ちなみに今回は一般的な日本にある日本語学校で働く場合の方法です。
1:スケジュールの確認
まずはもらった授業スケジュールで、自分の担当箇所を把握します。
不明点があれば、スケジュール作成者、クラス担任、主任などに確認します。
2:文型の理解と整理
自分の担当箇所の文型全ての理解と整理をします。これを文型分析と言う先生もいます。
市販の本を3~5冊使って理解・整理
私は、市販の書籍を3~5冊ほど見て、文型の意味などを理解、整理します。初級(~初中級)の準備準備をする際は以下の本をよく使います。
ちなみに、私はネットで文型の意味を調べたりはしません。ネットの情報だけでは十分に理解できませんし、何より間違ったことが書いてあることがありますからね。
分析する
本に解説がない場合は、分析をします。
例えば、「~すぎる」(値段が高すぎる、など)。この文型は、ほとんどの本に、マイナスの評価をする場合に使う表現と書かれているかと思います。しかし、実際には「おいしすぎる」「面白すぎる」など、ポジティブな評価をする場合にもよく使われています。こういう場合は、自身で分析をする必要があります。
どこまで理解・整理するか
最低限、学生から質問されそうなことを、学生にちゃんと説明できるくらいまで理解・整理をします。上記の本には学生の誤用やよくある質問(類似文型との比較など)が書かれていますので、そこは必ずおさえます。
例えば、「条件」の「〜たら」(明日晴れたら、散歩しよう、など)。類似文型に、「〜と」「〜なら」「〜ば」などがあります。それらの違いを理解し、説明できるレベルにしておくということです。
「初級クラスだし、日本語レベルまだまだだし、質問されないだろう」と思われるかもしれませんが、初級クラスに初級レベルじゃない学生がいるような学校も結構存在します(例えば初級クラスなのにJLPT N3合格者がいたり)。そういう場合は、何を聞かれても不思議ではありません。
3:新出語の確認
テキストにマークする
テキストの文章内などに現れる新出語をマークしていきます。
テキストに新出語をマークしておく意図は、意識するためです。これをしておかないと、どこで新出語が使われているのか、忘れてしまいます。
イラストや写真を用意する語をチェック
意味を説明するよりも画像を見せた方が早い語は、画像を用意するためにチェックしておきます(テキストにマークをつけておきます)。
類義語のチェック
学生から質問されそうな新出語と同じ意味、似たような意味を持つ類義語を探し、意味を調べたり、説明の仕方を考えたりします。
語の訳をスプレッドシートにまとめる
ChatGPTを使って新出語の意味を学生の言語に訳します。訳したものはスプレッドシート(Excelなど)にまとめておきます。これは、学生に日本語やイラストなどで説明しても伝わらなかった時のために用意するものです。
各教科書には大抵新出語の訳が用意されていると思いますが、英語、中国語、ベトナム語など学習者が多い言語のみです。英語の意味があればわかる学生もいますが、わからない学生もたくさんいます。
4:意味の伝え方やどこまで伝えるかを考える
既習文型の知識だけで理解できる言葉を使って説明するのか、イラストや図を使って説明するのか、身振り手振りをして説明するのかなど、伝え方を考えます。すぐに思い浮かばない時はここが1番大変な作業になります。
クラス全体のレベルが高い時(初級クラスなのにクラスのほとんどがJLPT N4レベル以上を既に学習済みの場合など)は、類似文型の比較など伝えることもあります。
5:授業の流れを考える
テキストや副教材を見ながら、流れを考えていきます。
授業する順番やルールなどが学校のやり方などで決まっている場合は、基本的にそれに従います。学校の指定がない場合は、自分で流れを決めます。
また、テキストの練習だけでは不十分な場合は、追加の練習を考えたり、プリントが必要な場合はそれを考えたり作ったりします。
6:スライド作成
スライド(PowerPointなど)を作ります。私は教案を作らないので、スライドとテキストを見ただけで迷わず授業ができるように工夫をしています。
視覚優位の学生の理解を促せるよう、スライドを見ただけでもなんとなく理解できるようなスライド作りを心がけています。
スライドで使う素材(イラストや写真など)
テキストのイラストデータがあればそれを使います。なかったり足りない時は、『絵で導入・絵で練習』、いらすとやのイラスト、Google検索で出てきた画像などを使用します。また、ChatGPTでイラストを生成することもあります。
7:授業前日の最終確認
授業の前日に、教科書と自分が作ったスライドを見ながら授業の流れを再度確認していきます。これをすると抜け・漏れ・ミスなどが発見できるので、できる限りするようにしています。修正する必要があれば、修正をします。
補足:教案について
私は教案は作成しません。養成講座に通っていた時や、日本語教師になりたてだった頃は作っていました。
私がもし今、教案を作るならば、スライド作成前かスライド作成後に作ると思います。誰かに授業前に教案を見せる必要があるならば、スライド作成前に(教案段階でダメ出しされた場合、先にスライドを作ってしまうと修正が大変かもしれないから)、誰かに見せるのではなく自分のために教案を作るならば、スライド作成後に作るでしょう。
これから日本語教師を目指す方へのメッセージ
私の授業準備の内容を見て、どう感じられましたか?大変だと思いました?楽だと思いました?少なくとも大変だと思わない方は、日本語教師の仕事は向いているかもしれません。大変だと思う方は、日本語教師になっても続かないかもしれません。
授業準備を全然しなかったり、不十分だとどんなことになるか、簡単にお伝えします。
まず、準備をしなくても他の先生に何も言われない学校の場合は、多分その学校の授業(仕事)は非常につまらないと思います(学生のレベルが高くなかったり、やる気がないから、授業の質を求められない)。その結果、転職を考えるようになるかもしれません。
厳しい先生、真面目な先生、レベルが高い先生がたくさんいる学校の場合は、いろいろなことが起こり得ると思います。準備段階で何度もやり直しをしなければならないかもしれません(授業前に教案チェックなどが入る学校があります)。クラス担任や主任の先生に授業見学され、指導されるかもしれません。
さらに、本気の学生がたくさんいるような学校であれば、まず間違いなく、学生からの信頼は失われるでしょう。他の先生と比較されるからです。ひどい場合は、学生からクレームが入るかもしれません(面と向かって、あなたの授業は無意味、とか言ってくる学生がいた話を聞いたことがあります)。学生アンケートで酷評されるかもしれません(指導が入る可能性大)。クビになるかもしれません(私が過去に働いていた日本語学校でクビになった人がいました)。
なので、軽い気持ちで日本語学校の日本語教師は目指さない方がいいんじゃないかな〜と思っています。お金と時間の無駄になる可能性がありますから。
どんなに授業準備をしてももらえるコマ給(給料)は変わらないので、非常勤でする仕事としては、本当に多くの人にとって割に合わない仕事ですよ。実質時給数百円なんてこともよくあります。
以上、私の準備方法はだいたいこんな感じです。多少順番が前後したりもしますが。
私は授業で学生に文句を言われたことはないですし、嬉しいことに「先生の授業が好き」「わかりやすい」「おもしろい」「引き続き教えてもらいたい」などとよく言ってもらえるので、この準備の仕方で今のところは問題なさそうです。
一つの参考にしてみてください。
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