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顔がタイプの子とデートした話。



 こんなご時世で、大きな声では言えないけれど、コロナの感染者数も少ないド田舎に住むわたしは、ぼちぼち外に出歩いていて、常連になっているお店で3歳年下の犬顔男子にデートに誘われた。
 彼のことをお店で見るのは初めてではなかったし、ずっとかわいい顔の子だなと思っていた。お酒を飲むと女癖が悪そうで、いつも女の子に絡んでいるのを見ていたから、「わたしは誠実な人が好きだし、一途に思ってくれる人がいいから」と断った。でも、顔が好きだし人から誘われることもないので、内心盛り上がっていた。「1回行って合わなかったら、もう会わなくてもいいからさ」と言われて行ってきた。


 シラフで会えない人とはその先も考えられないからと、日中に会う約束をした。最近買った、かわいいワンピースを選んで、いつもより少しだけ丁寧にメイクをした。

 連絡もマメな方ではなさそうだったし、面倒になっていたらどうしようと思って当日を迎えた。朝に会ったときからあまり笑うことがなくて、彼は勢いで誘ってしまったと、きっと今日のことを後悔するんだろうと思っていた。

お昼にイタリアンのお店でパスタを食べた。自分が先に食べ終わると「ゆっくり食べていいからね」と一言。気づかいのできるいい子だなと思った。
 口と歯のフェチなんだよねと話し、「あなたの下の歯の両方の犬歯が長くとがっているところ、八重歯があるところ、口の形がきれい。好き」と、笑うと「は?だる」と言って彼も笑った。

 彼の好みではなさそうだったけれど、行きたい展示があるから、美術館に行きたいというと、行ったことはないけど楽しそうだから行ってみたいと付き合ってくれた。楽しんでくれているのかは不安だったけど、初めてだったしこういうのが好きな女の子と初めて知り合ったから、大人なデートができてうれしいと喜んでいた。

 そのあと、ドライブしながら、景色の良い山の上に行って街を眺めて帰ってきた。


 結果、とても楽しかった。
 顔がタイプの子とデートができたという事実も幸せだった。
 お互いの恋愛観とか、好みとか、たくさん話した。彼がトラウマというものには「わたしにはその要素がない」と否定しながら笑って過ごしたし、彼自身を否定する発言には「そんなことないよ」とポジティブな言葉を添えて否定した。
 いろいろ合わなかったし、彼は”デート”と誘ったけど、トラウマが大きくていまは恋愛したくないし、彼女もいらないと言った。わたしとは友達になりたかったからと話した。体の関係にはならないからというと、そういう目で見てないからと笑い、本当に指一本も触れ合わないデートだった。
 好みの女性がギャルと清楚の間、でも、ギャルっぽい子が好きと言った時点で、わたしではなかった。誘われて浮かれていたけれど、その子の好みに合わせようと思ったりできなかった時点で、この感情も恋ではなかったのだと気づいた。それも大きな収穫。
 最終的に、いまは自分が幸せになることよりも、友達に幸せになってもらう方が嬉しいと、彼のお友達を紹介してくれた。

 一日一緒に過ごしてもらったお礼にケーキとお手紙を渡して、明るいうちに解散した。面食いなのだけど、残念ながら顔面がドタイプの人とは分かり合えない運命のわたし、例に漏れず彼もそうだった。
 今回のデートの話を知っていて応援してくれていたみんなにただいまとLINEをすると、すぐに電話がかかってきて、ちょうどお店に集まっているという話になり招集された。「それにしても、彼、こんなにかわいくて心の広い女性を1人逃して勿体ないな」と笑いながらぼやくと、「ほんとだよ」と乗ってくれた。

 わたしを好いてくれる人たちのそばで生きられる毎日は心が健やかで、穏やかで、幸せだ。これからも、自分の自信になる言葉をたくさんかけてくれる友人たちと一緒に、たくさんの時間を過ごせたらと思った。




わたしのペースで、のんびり頑張ります。よかったら応援もよろしくお願いします。