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母娘。

久しぶりに母親に電話でキレてしまった。
これを書くほんの10分前の事。
「愚痴ったらダメなの!?私だって割り切ってるよ!」
5月ぶりに本気でキレた。
その後冷静になり会話を続けられるようになったわたしは昔のわたしではない。大丈夫だよ、成長した、泣いてもいいと自分に言い聞かせている。涙が頬を伝いながら、泣きながらMac Bookに向かう姿は酷く滑稽だ。

わたしと母の関係はおそらく歪んでいる。
長女という事もあり、「いい子のわたし」でいなければいけないと刷り込まれ、受け入れたそんな過去がある。

わたしは幼い頃嫌な事があるとキレる子だった。それも物や妹に当たる最低なキレ方だ。それを指摘したのは母だった。
「物に当たるな!あんたはおかしい!」
毎日のように響く母の声。
わたしもわかっていた、そんなことがおかしいことは。でもかーっと頭に血が登り、気がついたら妹に手をあげたり物を投げつけていた。一度は窓ガラスを割った事もある。
どうしてもその事が抑えられないわたしは、自分が病気なのではないかと思った。思っていただけで口に出す事はなかったが。
そしてある時から、人や物に当たると怒られるから自分に当たればいい。その歪んだ考えが生まれ、切り刻む前の自傷行為が小学5年のときに始まった。自分の頭を壁に打ち付ける、手の甲の皮膚をちぎりとる、腕や足をリコーダーでアザができるほど殴る。
するとどうだろう。母からしかられることは無くなった。これが正しい方法だと幼いながら理解して、感情を外に出さないようになった。
欲しいもの、したい事、嫌な事、辛い事も悲しい事も自分の心の中に閉じ込めていった。

すると今度はその風船がいっぱいになるとパンっと弾けるようになった。何でもない時の何気ない誰かの一言が鋭い針のように心の風船に刺さり、誰もが驚くようなキレ方をするのだ。もちろんみんなキョトンとする。今の何が気に障ったのかわからないからだ。わたしもわからないから辛い、そんな悪循環が生まれた。

中学時代のいじめも当時は母に言う事ができなかった。母が初めてその事実を知ったのはわたしが高校生になって、今度は妹が中学校でいじめられ始めてからだ。泣きながら帰宅するのだから気付かないはずはない。母は親身に妹のいじめの解決に奔走した。それを見たある日、またわたしの風船は弾けた。
「私のことは助けてくれなかったのに妹ばかりズルい!」
言わなかったわたしが悪い。でも、気付いてくれなかった母がものすごく憎かった。当時はいじめに耐える為にリストカットを繰り返し、巧妙に隠していたがどこかで気付いては欲しかった。気付いてくれない母に不満を持っていた。

なんでわたしだけ気付いてもらえないんだろう。
嫌われているんだ。
そう思いだんだんと距離を取るようになっていった。
実際は自分が感情を閉じ込めていたせいなのに。

この関係が少し変わったのは大学4年の時だ。バイト先でいじめに遭い精神的に参って鬱になっていたわたしは、判断力に欠けいつも警戒しながらしていたリストカットを鍵もかけずに部屋でしてしまった。その時だけで50ヶ所近く傷を作りぼんやりと眺めていたところに母が突然入ってきた。
「なにしてるの...?」
わたしの方が驚いた。とっさに隠したがもう遅い。
母は泣きながら
「痛かったね、ごめんね」と何故か謝りだした。
それがきっかけでわたしの身に何が起きていたか全て説明した。バイト先のいじめのことも、過去の事も、わたしが何を考えて生きてきたか、感情を丸出しに怒ったり、泣いたり、人前でそんなことをするのは本当に久しぶりで恥ずかしかった。

これでわかってもらえた訳ではないが(精神科に勝手に通った事をとがめられたり、今まで自由にさせてきたのに何が問題でこんな状態になってるのかと医者の前で言い始めたり、当時はものすごく辛い時間だった)、少しだけ溝は無くなったはずだった。

それでもやはり母と近い距離でいると、わたしの心は悲しい事に母を拒絶したり、言い争いを起こすことばかりだった。今年の4月に休職して実家に帰った時もそれが酷くしんどくて、ここでは暮らせないなと思い色々と嘘をついて、そして最後にはキレて大阪に舞い戻ってきた。
別に母を殺したい程に憎いわけではない。でも、残念なことに近くにいることはできないのだ。通っていた精神科の先生にも
「甘えたいんだろうけど、心のどこかでお母さんという存在を拒絶しているんだろうね。多分実家には帰らない方が幸せになれるんじゃないかな。あなたのことだから色々考えるんだろうけど、なにが本当に一番大切か考えてごらん。あなたの人生が大切なんだよ」
と言われた。

だからこの大阪で生きる事を決めたし(両親には10年くらいで帰るよと言ってある)、帰省するのは年末とおじいちゃんの命日だけと決めた。そのくらいの距離がわたし達母娘の適当な距離なんだと思うのだ。

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