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まわるつき

遥か昔から我々の周りを飽きもせずにぐるぐると月は回っているわけだが、頭上にくる度に毎度「月が綺麗だおね」と愛する人に伝えている我々もまた滑稽な生き物である。

綺麗な月を見ると思わずスマホを向けてしまって、それを無性に伝えたくなることがある。
何百年前の日本人が月を眺めていたら急にエモくなって歌なんて詠み始めてしまったものだから、現代人のDNAに刻まれてしまっているのだ。
それでも写真も動画もない時代「月、エモけり」の言葉だけで口説き歩いていた先祖達を逞しく思う。我々は恵まれすぎていることがよく分かる。

https://note.com/elle_novem9/n/nbf52d375897d




中秋の名月は、見えなかった。


見えなかったところで生活は続いていく、翌朝の改札前では電子PASMOをタッチする列ができていて皆そこそこのスピードで何も疑わずに通っていく。隣の列で赤いランプがエラーで点灯し流れが滞りそうになった時、すかさずこちらの列に割り込んでくる人間がいる。高速の料金所の前でウィンカーを出さずに進路変更してくることと同じである。
そんな乱暴に生きているこの人間の上にも今宵月は平等に昇る。不平等だと思う。


そんな夜は昨日よりも月が綺麗に見えた。
東京の夜はもう随分と過ごしやすくなり、居酒屋の明かり、タクシーのヘッドライト、そして賞味期限を一日過ぎた中秋の名月が澄んだ空気と蕩け合ってキラキラと光っている。

今年も残すところあと三ヶ月しかない。振り返ると体調が良かったとはお世辞でも言えないような一年、これ以上崩すことなく年末を迎えたい。慎重に生活しているはずだが、ただ運が悪かっただけなのだろうか。

そんなことはない。先日、食にあたっている時点でツキは回っているのではないだろうか!

やかましいわ!




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