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微熱インサマー

寝汗でTシャツを濡らし不快なまま起きる毎日。微熱がずっと続いていたことが分かったのはついこの間のことだった。

連日のように「ゲリラ豪雨」を警告するニュースに辟易する。もっと違う言い方はないのだろうか。
それを彷彿とさせる言葉を目にするだけで、腹痛に苦しむ人間の気持ちを考えたことはあるのだろうか。
下腹部が忘れていた痛みを思い出すことのないように、目を瞑り静かに「九段下くだんした」の駅を過ぎるのを待っている社会人男性のことを少しでも想像したことはあるのだろうか。

とかなんとか言っていると、何も反論してこないメディアに向かって多様性を認めろだの当事者の気持ちになれだの手放しで野次っている一定層の一人に分類されてしまいそうだ。自分の発言によってテレビから一切の情報が伝達されなくなった時、それは彼らが望んだ世界だろうか。

許せないものが緩やかに減っている。沸点が高くなっている。そもそもどうでもよくなっている。
明らかに違う考えを持っている人様に、自分の意見を伝えるのは疲れる。
ただでさえ夏は、生きているだけで体力を使うのだから。そもそもおなかが痛いので人のこと心配してる暇が無いケテ…タスケテ…


9月中旬、遅めの夏季休暇の遅めの昼食ではじめて食に当たるという経験をした。

とある島での旅行中のことだった。
人手不足なのだろう。高齢男性が調理場、中年女性がホールで慌ただしくしていた。
海鮮丼を注文してから約40分が経った頃、もっと前から来ていたであろう隣の卓の女性達が痺れを切らし、もう待てないごめんなさいと店を出ていった。
それを横目に「それほどまでに?」と戦慄する。どうかこれからの旅路が素敵なものでありますようにと願うほかなかった。あわよくばどれくらい待ったのか教えて。

それから数分後にようやく海鮮丼が提供され、空腹を満たしたい一心で箸を割りすぐに海鮮を口に運ぶ。

20分間天日干ししていた?

そうでないと説明がつかないほどの提供の遅さとネタのあたたかさ。初めてこんなにぬるい生魚を食べた。というか

執拗に握り締めていた?

そうでないと説明がつかないほどのハリ、コシの弾力のなさ。形の不格好さ。これはなにざかな??
そして翌日、旅行最終日に高熱と下痢の症状に見舞われたのだった。


ということが2週間にあり、それからは体調が良い日がなかった。2度の通院を経てようやく回復の兆しが見え始めた頃、遂に便検査をすることになった。

看護師「この綿棒を3センチ程、お尻に入れてください。」
私「この綿棒を3センチ程、お尻に入れてください。と聞こえましたが」

日常でオズワルドの漫才のやり取りが行われるなんて滅多な事ではない。検査をして強めの抗生物質を処方された次の日はもう落ち着いていた。



さて、ここ最近がまるで間違いだったかのように冷える秋の夜。病み上がりの体へのリハビリにしては少しやり過ぎでは無いだろうか。

全て冗談にするには勿体無い夏であった。
思い出すのは碧い海と砂の混じった風、湿った土、太陽と洗濯物の匂い、冷房の効いた部屋と素麺、北海道はデカすぎて途方に暮れること、四国旅行は二国くらいが丁度いいこと、パスタはフライパン一つで作れること、ずっと微熱が続いていたこと、ずっとカンパチがジジイに握り締められていたこと。
あ〜あったまってきた、これマジで絶対許さんからな。


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