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世界の終わり #3-1 ハンター

 ガンガン掘れ。いうて、見た目、おれの一・五倍はあるカンバヤシは、図体でかいくせして、長いこと携帯端末弄りながら煙草吸いまくりで、働く意志がまったく感じられへん。なんやんねんこいつ。偉そうに指示して、そのクセ端末に夢中で、おれらには目ェ向けようともせん。大体、どこで端末充電しとるんや。バッテリーを大量にもってきたとかそういうこと? っていうか、端末使ったら電波を辿られてここにおることばれるんやないんかって心配してまうけど、いまのところ軍も警察も捕まえにきてへん。そういうのって、明け方近くに行われるらしいから、寝起きとともにいきなり逮捕されるかもって考えて、毎晩ヒヤヒヤしながら眠りについとるんやけど、目覚めたときにはすっかり忘れとる。っていうか、端末の話はどうでもええねん。ちくしょう! なんやねん。ほんま腹立つわ、カンバヤシ。働け、働け働け働け。一緒に穴掘らんかいアホいうて怒鳴りつけたいところやけど、いざカンバヤシが穴堀り作業をはじめると、とても真似できんパワーとスピードで、どんどん掘り進める。そのうえ、持久力もあって、やばい、すんません、ちょっと休憩させてください。とは口が裂けてもいえん勢い&形相で掘りまくるから、流石、凄いわカンバヤシさん、筋肉とかハンパないですねェなんて機嫌を取ると、お前のほうが若いんやから、もっと頑張らんかいボケ、いうて、それでいて嬉しそうに表情を綻ばせる。手伝ってもらったらもらったで面倒くさいが、手伝わずに端末弄られるのは見とって腹立たしい。頭にくるけど、掘る以外、おれに与えられた選択肢はないんで仕方なく穴を掘る。掘って掘って掘り続ける。どこぞのバンドの歌みたいに地球掘り起こせの勢いで。やけど、結局は埋める穴や。埋めるために掘っとる。アホらしい作業やけど雇われの身やから、いわれたとおりにやるだけ。ただ、掘る、のみ。これが社会に役立つ穴堀りやったら少しはやる気がでてくるかもしれへんけど――え、そうかな? どうやろか。ビルが建つとか地下鉄が走るとか橋がかかるとかいった地図にのるような穴堀りやったら、おれもやる気になるような気もする。なんて雑念まみれで穴を掘り続けとるうちに正午になり、大事な水を沸かして熱湯にして、カップ麺に注いで昼食。腹を満たしたら、しばしの休憩。午後からは草むしり。ほんましんどい。でも二週間ちょっとの辛抱。今回のツアーが終わったら、家でのんびり映画鑑賞して漫画読んで、お菓子食べまくって、そんで、貴重な水を下水管へとザバザバ流してやるんや。ライフライン最高。本土最高。あぁちくしょう、シャワー浴びたい。

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