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【カンヌライオンズ2023】世界のgood workから見る”問題変換力”

初めまして。今回がnoteへの初めての投稿です。

わたしは森本進一と申しまして、PRプランナー/ディレクターを生業としています。

実は今年初めて、カンヌライオンズに行き、世界のGood workに触れてきました。会期終了後から1ヶ月経ってしまったタイミングですが、自分なりにカンヌを思い返したいと思います。

既に多くの方が、今年のカンヌを様々な観点でまとめられていますが、今回は「問題変換力」というテーマで振り返ってみることにします。
最近、PRやコミュニケーション領域で、戦術に寄ったTIPSが多くあるように感じます。
それはそれで必要なスキル・情報ではあるのですが、しっかりとした問題設定があるとよりそれらも活きるんだろうなと思っており、なにかそれらを考えるきっかけになるといいなとこのテーマを置いてみました。

「問題変換力」とは、クライアントさんから「Z世代にこの商品を売りたい」といった広いお題が来たときに、そのままそれを考えはじめてしまうと、広大な砂漠の中から指輪を探すような作業になってしまうので、そうするのではなく、ある程度範囲を区切って指輪を探すことにトライするアプローチ(問題を変換して小さくする)と考えています。

今回は会場で気になった3つの事例を元に、
>元々どんなお題だったか?
>それをどんな問題に変換したのか?

を予想しながら、紹介する形で進めてみます。

個人の見解なので様々なご意見もお有りかと思いますが、大目に見ていただけると幸いです。
読んでいただける方の頭の片隅に残り、いいアウトプットが生まれていくと嬉しいです。


■ビールメーカーからの問題。『Z世代に老舗ビールブランドの存在を知らせるには?』

POKER「INFLUENCERS' FRIENDS」Direct部門 Silver

DDB COLOMBIA BOGOTÁ

■課題
まずは、ビールメーカーからの出題。コロンビアで1929年から売られているビールブランドである「Poker」は、もっとZ世代にリーチしたいと考えていた。Z世代へのリーチにはセレブリティを起用し、レコメンドしてもらうことが有効だが、Pokerのようなローカルブランドではセレブリティを起用する予算がなく、難しかった。

■予想する元々のお題
「Z世代に老舗ビールブランドの存在を知らせるには?(ただしお金はない)」

■変換して小さくした問題
変換①「セレブリティは予算上使えない。では、セレブリティを起用した場合と同等のリーチを取るには?」
変換②「友人と集まると楽しいというイメージを伝えるには?」

■アイデア
Pokerが「純粋な友情の瞬間のために」というタグラインを持っていることに着目し、コロンビアで最も有名なセレブの「親友たち」と連携。
友達と一緒に飲むビールというポジションを確保。(セレブリティである)親友とのストーリーを語るコンテンツを公開していくなど、一緒にブランドを盛り上げた。



■結果
著名人を起用したコミュニケーションに掛かる1000万ドルを節約。SNSで5億人以上にリーチ。売上も昨年比で7.4%の増加になった。

セレブリティ(ではないけど)の使い方として、こんなやり方があったか!というヒザポンアイデアですが、老舗のビールをZ世代にリーチしたい、というお題に対して、2つの問題に変換。その結果、セレブリティの親友をキャンペーンに起用する、というアイデアに行き着いたのではないかと予想します。いい企画ですね。

つづいては、ブラジル最大のOOHメディア会社からの出題。

■メディア会社からの問題。『多くの人にバス広告を見てもらうには?』

Eltromidia「Guarded Bus Stop」 Media部門 Gold

AlmapBBDO São Paulo, Brazil

■課題
Eltromidia はブラジル最大の OOH メディア会社。
ブラジルでは約77%の女性がバス停で危険を感じており、68%以上が夜に一人で外出するのが怖いと感じている。
そのような状況にもかかわらず、女性の40%が夜間にバスに乗らざるを得ない。

■予想する元々のお題
「多くの人にバス広告を見てもらうには?」

■変換して小さくした問題
変換①「女性にもっとバス広告を見てもらうには?」
変換②「女性がバス停を利用しにくい理由を解消するには?」
変換③「夜、女性をバス停で一人にさせないためには?」

■アイデア
そこで女性がもっとも、性被害を受けやすい場所に位置するバス停15箇所で、サイネージボードを設置。
停留所に一人でいることをセンサーで検知し、女性を安心させるよう訓練を受けた警備の専門家とビデオ通話ができるシステムを組み込んだ。必要に応じて即座に助けを求めることもできる。


■結果
結果、一晩に平均150件以上の電話が掛けられたほか、この技術が導入された停留所では、プロジェクト開始以来、事故や何らかの問題は一切発生しておらず、治安も改善。結果を受けて、さらに設置されるエリアが拡大していく見込み。

こちらも女性が抱えるイシューをテクノロジーを使って鮮やかに解決したアクションです。ケースムービーの中で、女性たちがホッとする姿を見ると、コミュニケーションの力を正しく使うことができれば、世の中はもっと良くなるのだと純粋に感じることができます。

クライアントがOOHメディアの企業なので、おそらく元々のお題は「どのようにすれば多くの人に自社の広告枠を見てもらえるか」だったと予想します。
そのお題のままでは、「女性を一人にしない通話サービス」というソリューションはおそらく出てこないでしょう。このケースも「問題変換力」をうまく用いて、問題を小さく絞り込んだことでアイデアが生まれているように思います。

またこのようなWorksをベースにデコンをしていく場合には、
ケースムービーやボードから分かる

変換③「夜、女性をバス停で一人にさせないためには?」

という問題だけを捉えてしまうと、別のお題になった瞬間に応用が効かなくなってしまうので、クライアント企業の抱えている課題を出発点にして、問題変換を行っていくと、応用ができるデコンになっていくと思います。

つづいては、コロナで打撃を受けたカジュアルダイニングレストランからの出題。

■レストランからの問題。『来店客をもっと増やすには?』

APPLEBEE’S「TASTE MY FACE」 PR部門 Bronze

GREY NEW YORK

■課題
デートで利用されることの多かった、アメリカのカジュアルダイニングレストランのApplebee'sでは、コロナ禍以降に人を呼び込むのに苦戦していた。

■予想する元々のお題
「来店客をもっと増やすには?」

■変換して小さくした問題
変換①「デートにふさわしい店ともう一度思ってもらうようにするには?」
変換②「デートしたことをSNSに上げたくなるようにするには?」

■アイデア
メイクアップおよびスキンケアブランドのウィンキーラックスと提携して、”キスがもっと欲しくなる”気持ちにさせることに役立つ、4つのウイングソースからインスピレーションを得たグロスのコレクションを販売。

■ゲット・ミー・ホット・バッファロー:元恋人では決して扱えなかったホットなバッファローのスパイスが詰まったクリーミーな味。
スイートチリキス:ディープでリッチなレッドに、ほのかなゴールデン・チリ・スパイスが効いている。
ビー・マイ・ハニー・ペッパー: あなたを夜の女王蜂にする、きらめく斑点がゴージャスなゴールデンハニースパイスグロス。
Honey BBQ-T: スモーキーなバーベキューカラーにハチミツの甘さをプラスして、キスをしたくなるような味わい。

https://www.necn.com/entertainment/the-scene/taste-my-face-applebees-releases-wing-flavored-lip-gloss/2798270/

このグロスの発売に合わせて、アリアナ・グランデなどのMVを監督してきた、ハンナ・ラックス・デイヴィス監督制作のMVを公開。TikTok上でインフルエンサーを起点に拡散を作っていった。


■結果
結果、SNSでの接触者は790万人を突破。ポジティブな投稿も急増し、34億インプレッションを達成。

コロナ禍からの復活を期するレストランが、割引といったインセンティブで人を集めるのではなく、自分たちの名物ソース味のリップを販売するという奇抜なアイデア。
これも「来店客をもっと増やすには?」というお題のまま考えていては、出てこないアイデアでしょう。
自分たちのレストランのポジション(デートとして使われていた)を改めて振り返り、「デートにふさわしい店ともう一度思ってもらうには?」と一度問題を変換し、小さくしたことで、このアイデアに行き着いた気がします。
また、細かなアイデアの要素として、”やってみたくなる”要素をベースに考えられているし、非常にSNSシェアラブルな企画ですね。

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以上が、今回ご紹介した「問題変換力」のお話しでした。
他にも日常のさまざまなキャンペーンや広告に「問題変換」の跡を見つけるととてもいい筋肉がつくように思います。

思ったよりも初めてのnoteはしんどかったのですが、アワード受賞作・ショートリスト作のものから、企画の型に分類した記事なんかも、反響やニーズがあれば書いてみたいと思います。
もし、こんな事例もあるよ!という方がいれば、ぜひ教えてくれると嬉しいです。
最後までご覧いただいた方、ありがとうございました。

※主にTwitterで発信しております

https://twitter.com/shin1111_1


今回は自腹参加だったので、3キロ離れた安宿でしたが、宿から会場までは最高の風景!


■おまけ(Cannesで見つけたgood work)

今年のカンヌで見つけたgoodなWorkをいくつかご紹介。


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