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Playlist : JAPANESE JAZZ in The 2010s - 2010年代の日本のジャズ selected by Mitsutaka Nagira

《プレイリストのコンセプト》
せっかくのディケイドの区切りなので、日本人のジャズ・ミュージシャンによる2010年代のジャズのオススメを集めてみました。

① 2010年代に頭角を現してきたミュージシャンにフォーカスしてるので、90-00年代から一線にいるビッグネームは割愛しています。ex 上原ひろみ
②リーダーだけでなく、バンドのメンバーが2010年代に頭角を現してきた日本人ミュージシャンである場合も選考対象にしています。
③ 2010年代の海外のジャズの動向を追ってるリスナーに楽しめそうなものを中心に選んでいます。
④ 「ジャズの影響が入ってる音楽」ではなくて「ジャズ」を入れるイメージの選曲になってます。
⑤プレイリストを中心に考えたので現状ストリーミング・サービスで聴けないアーティストはあまり入っていません。今後、解禁されたら随時追加していけたらいいかなと思います。

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2010年代、ジャズはすごく面白いことになっている。

ということは僕もずっと『Jazz The New Chapter』や各種雑誌やウェブメディアなどに書いてきましたし、そんなことを僕が言わなくても気付いている人は多かったことでしょう。2010年代はロバート・グラスパークリス・デイヴマーク・ジュリアナカマシ・ワシントンなどなど、様々なジャズ・ミュージシャンがジャズの枠を超えて、話題になった時代でした。様々なメディアでも新しい世代のジャズの特集が組まれ、SpotifyやAppleMusicでは新しいジャズをテーマにしたプレイリストがたくさん生まれていました。

一方で、日本のジャズはどうなっているのかというと、日本人のジャズミュージシャンに関しても、海外の隆盛と同じように新しいミュージシャンたちがどんどんシーンに出て、素晴らしい作品を発表していました。でも、その日本のジャズがまとまっている特集だったりプレイリストってあまり見かけたことがありませんでした。

そのことに気づいたのは今年、イギリス、チェコ、台湾に行ったことでした。特に台湾では「今の日本のジャズのことをもっと知りたい。」と多くの人に言われましたが、その時点では彼らに見せられるようなものはありませんでした。そこで口頭でいくつかのアーティストの名前を伝えたりしましたが、自分でも物足りなさがあり、ここでさくっと渡せるものがあると楽なのになと。なので、帰国したら彼らがすぐに聴けるようなプレイリストを作ろうと思い、こういう形にまとめてみた、というのがこのプレイリストのきっかけです。

更にもう一つ理由を挙げるとすれば、この10年で世界も日本もジャズシーンはすごく盛り上がったし、活発だったと思うんですが、それを自分なりにまとめておきたかったというのもあります。この10年で自分が面白いと思ったジャズの中の動きをメモ程度でも残せたらなと。という感じで、ここからはかなり大雑把ですが、この10年のポイントを振り返ってみようかと。

まず目立ったのは海外組です。ジャズの名門レーベルのブルーノートと(日本のレコード会社を介さずに)直接契約した黒田卓也、ヨーロッパの名門ダニッシュ・レディオ・ビッグバンドの首席指揮者に就任した挾間美帆、ATCQやJコール、マーク・ジュリアナなどの作品に起用されるBIGYUKI、ドイツの名門ECMからデビューした福盛進也、スナーキー・パピーの小川慶太、ニュー・センチュリー・ジャズ・クインテットの大林武司中村恭士、スナーキー・パピーが運営するGROUND UPレーベルに所属するハウス・オブ・ウォーターズのMOTO FUKUSHIMA、NYのジャズ・ミュージシャン・コミュニティの中で支持の高い加藤真亜沙、などなど、海外で高い評価を得た日本人がどんどん出てきていました。サッカーや野球でも海外で活躍する日本人選手が増えましたが、それと同じくらい大きなインパクトがあったのがここ10年のジャズだったと思います。その象徴が小川慶太やBIGYUKIのグラミー賞受賞作品への参加であり、挾間美帆のグラミー賞ノミネートでしょうか。

また国内でも井上銘石若駿など、平成生まれの世代が台頭してきました。今思えば、井上銘のデビュー作『First Train』が2011年、石若駿がアニメ『坂道のアポロン』の川渕仙太郎役として演奏したのが2012年。井上銘が自身のセカンドアルバム『Waiting For Sunrise』で石若駿と共演したのが2013年。ちょうど2010年代の初めごろに象徴的なことがあったんだなと。その後、宮川純渡辺翔太曽根麻央安藤康平(MELRAW)、松丸契桑原あい、などが頭角を現し、彼らとも近い角田隆太と吉田沙良のものんくるや、石若と井上が小西遼と小田朋美と越智俊介の5人で結成したCRCK/LCKS、安藤康平がサポートしているWONKのようなグループがJポップのシーンでも注目されるようになったり、20代を中心とした若い世代がジャズシーンのみならず、音楽シーン全体を活性化しているのが目に付くようになりました。石若駿がくるりやKID FRECINOや中村佳穂など、様々なジャンルに起用されていたのはその象徴でしょうか。そして、彼らは海外のジャズシーンにある新しい演奏法や作曲手法などを日本のポップスやヒップホップ/R&Bなどのシーンに届けるような役割も果たしているように見えました。

その他にも30~40台の実力派が素晴らしい活躍をしていたのも印象的でした。スガダイロー吉本章紘須川崇志広瀬未来橋爪亮督市野元彦佐藤浩一類家心平らの作品も見逃せないと思います。2008年にリリースされた市野元彦『Time Flows(Like Water)』は2010年代を予見している傑作だったんだなとも思いました。

そして、何気に見逃せないのが、マーティー・ホロベックアーロン・チューライなど、日本のシーンで活動している海外のジャズミュージシャンが刺激を与えてくれている例も少なくありませんでした。2020年代は日本のジャズシーンもより幅広い国や地域のミュージシャンが活動することになるかもしれません。

ちなににプレイリストでリストを作りましたが、AppleMusicやSpotifyで見つからなかった作品でもいいものはいろいろありました。その中からおすすめをいくつか。

・東かおる & 西山瞳『Travels』

・桃井裕範『LIQUID KNOTS』

・ 魚返明未トリオ『はしごを抱きしめる (Embracin' the Ladder)』

・Liverwort Lab『Graceful Metaphors』

などなど。

という感じで。2020年代もますます日本のジャズが面白くなることを期待しています。

以下リスト

挾間美帆 - ダンサー・イン・ノーホエア 2018
黒田卓也 - Rising Sun 2014
BIGYUKI - Reaching For Chiron 2017
石若駿 - Answer to Remember 2019
福盛進也トリオ - For 2 Akis 2018
加藤真亜沙 - Tales from The Trees 2016
渡辺翔太 - Folky Talkie 2019
Asuka Kakitani Jazz Orchestra - Bloom 2013
橋爪亮督グループ - incomplete voices 2017
THINKKAISM(松丸契) - THINKKAISM 2019
佐藤 浩一 - Melancholy of a Journey 2016
スガダイロートリオ - 公爵月へ行く 2019
Miki Hirose - DEBUT 2018
本田珠也イクタス トリオ - イクタス 2018
rabbitoo - the torch 2016
宮川純 - The Way 2015
MELRAW - Leap of Faith - Single 2019
Megumi Yonezawa, Ken Kobayashi & Masa Kamaguchi - Boundary 2018
曽根 麻央 - Infinite Creature 2018
井上 銘 - Solo Guitar 2018
橋爪亮督 & 中村真 - Play Standards vol.1 2019
吉田サトシ - Memento 2014
河野祐亮ピアノトリオ - I illuminate you - EP 2019
Megumi Yonezawa Trio - A Result of the Colors 2016
酒井尚子 - The Light 2018
林正樹 - Lull 2016
大林武司 - SOLO 20s' 2019
Ayumi Tanaka Trio - Memento 2016
Tomohiro Mori - Uptown Bound 2018
Libstems - Daydream Sounds 2014
熊谷ヤスマサ - J-Straight Ahead 2015
Kazuki Yamanaka - Songs Unconscious-minded 2015
Aaron Choulai Quintet - VADA TAUDIA 2017
Niran Dasika Quartet - SUZAKU 2018
吉本章紘 - Nostalgic Farm 2019
井上 銘 - ウェイティング・フォー・サンライズ 2013
須川 崇志, Leo Genovese, Tom Rainey - Outgrowing 2018
類家心平 - Sector b 2011
J-Squad - J-Squad II 2018
桑原あい & 石若 駿 - Dear Family 2017
Michel Reis Japan Quartet - Michel Reis Japan Quartet 2018
魚返明未×千葉広樹 - OST「十二人の死にたい子どもたち」 2019
Makiko Hirabayashi Trio - Where the Sea Breaks 2018
Ronin Arkestra - Sonkei 2019
Ichiro Onoe Quartet - Miyabi 2018
Yuki Arimasa/Ryo Ogihara - Nightmarish Paradise 2018
Davy Mooney & 大村亘 - Benign Strangers 2018
Ortance - Escargot 2019
望月 慎一郎, 橋爪 亮督 & 落合 康介 - Another Vision 2017
西山瞳トリオ "パララックス" - Shift 2014
Oncenth Trio - 法 2019

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ここから先はこのプレイリストを作った意図を少し。

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Playlist : JAPANESE JAZZ in The 2010s - 2010年代の日本のジャズ selected by Mitsutaka Nagira

柳樂光隆 Mitsutaka Nagira

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79年、島根・出雲生まれ。音楽評論家。 21世紀以降のジャズをまとめた世界初のジャズ本「Jazz The New Chapter」シリーズ監修者。共著に鼎談集『100年のジャズを聴く』など。 Instagramで「24時間で消えるディスクレビュー」やってます。

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