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オンライン・ライター講座、はじめます。”ライティングのための編集、編集するためのライティング 2020” @ 美学校

最初で最後になるかもしれませんが、4か月間の短期の”ライティング講座”をやることにしました。

これまで『Jazz The New Chapter』を始めとして自分が監修に関わった8冊の出版物や媒体での仕事で、ライター/編集者やライター/編集者志望の方と関わってきました。そこで何か伝えられることもあるかなと思って動いてきました。ただ、そういったメディアの仕事の中で”同じフィールドにいる同業者”の関係もしくは”原稿の発注者⇔受注者”の関係の中で何かを伝えることの限界も感じていました。それ以来、そういったことからは距離を置いていました。

自分の本『Jazz The New Chapter』に関しても、号を重ねるにつれ、現代のジャズに関する情報や評論自体がほぼ無かった状況は解消され、情報や論じ方のフォーマットがある程度は出揃ったことで、本としての役割が変わってきました。号を重ねるにつれ、知識も経験も実績も増えたことで、本の内容が深まってきたこと、同時に本としてやりたいことが明確になったこと、そのために自分自身が書くページの割合を増やしたこと、そして、現代ジャズについてしっかりした記事を寄稿できる書き手が見つかったこと、などの様々な変化があり、『4』からは”機会を与える=書きながら学ぶ場”としての役割を終わらせる方向で内容を変えていました。『6』ではかなりの割合(たぶん7~8割くらい)を自分で書いていて、自分には書けない=この人にしか書けない原稿だけはふさわしい方に書いていただく形をとっています。これはほぼ広告を取らない形でもそれなりに手間と予算がかかる内容の本を作るための方法でもあります。

とはいえ、別の形でレクチャー的なことはやっていました。若林恵、宮田文久両氏と”音筆の会”という勉強会的なものを今も不定期で開催しています。これのきっかけは僕が若林さんと何度か仕事をして、彼のインタビュー術や執筆手法、編集論などをライターや編集者にシェアできたら、みんな勉強になるだろうなと思ったことで、そのアイデアに若林さんが乗ってくれて、もっといい形にしてイベント化したものです。

※「音筆の会」とは
世の中にいくら面白い出来事や動向がたくさんあっても、それを書きとめ定着する人がいなければ、それは社会のものとはならず、文化にもならない。ジャーナリスト、編集者の立場から、そうした仕事に携わる人たちの極端な人員不足とそれに伴う仕事の劣化を憂えてきた柳樂光隆と若林恵が、気鋭の編集者・宮田文久を迎え、来るべき編集者やライター、ジャーナリストを活気づけるために立ち上げた勉強会、というかサロン。のようなもの。不定期開催。2019年より「若柳宮音筆の会」を改め、「音筆の会」に改称。

これはどちらかというと、既に仕事をしているプロのライターや編集者向けで、今の仕事をさらにレベルアップさせるためのアイデアのシェアといったイメージでやっていました。伝えるというよりはヒントになりそうなことを語る虎の穴って感じでやっています。教える・伝えるっていうのとはまた別のものでした。(※コロナ禍には止まってますが、そのうち再開すると思います。)

今回、(個人的にリスペクトしている)岸野雄一さんからオファーをいただいたこともあり、講座をやろうと思ったのは、これまでにやってこなかった講師⇔受講生と言った関係の中なら何かできるのかと思ったからです。

中心にあるのは書いてもらって添削・講評のベーシックな形ではありますが、そこにいくつかの仕組みを作って、それぞれの受講者に合った実践的なものになるように準備しています。

テーマは「編集的思考」です。

編集者的な考え方を意識しながら書くことについて学べる講座になります。ゲスト回では編集者とライターの両方の経験のある小熊・宮田両氏から実際の仕事のエピソードなどを交え、実践的なお話を伺います。

今、ライター/編集者は記事単位のPV数やSNSでの反応などの数字に否応なく向き合わされていると思います。個人のテキストサイトであっても、そこが気になってしまう人も少なくない気がします。かといって、そこを完全に無視するのは難しいし、そんな必要もないと思います。そんな状況下に、テキストを書くために何ができるのかをお伝えできればいいかなと思っています。

ちなみに僕は媒体の仕事だけではなく、プライベートの時間にnoteに記事をせっせと書いています。条件によっては雑誌からの依頼を断って、自分が書きたい方向性や質や量でnoteに書くことも少なくありません。それは自分で企画を立てて、自分で記事を書き、自分で編集し、自分で告知して、自分で拡散するということです。

ひとりでライターと編集者(≒編集部)の複数人分の役割を兼ねるということでもあります。

そのためにどんな技術や思考や意識が必要なのか、そんなことも一緒に考えられたらと思います。と言った感じで、僕はnoteなどでの仕事のためではないテキストの執筆についても試行錯誤していますし、それを仕事に繋げないままで(僕は文章を書いて生活しているので)最低限のマネタイズするためのあれこれも試行錯誤しています。そういった様々な事情に合わせたライティングのためになる講座にしたいとも思っています。

それ以外にも

・ライターを本業にせずに書き続けることの話(矢野)
・書かれる側の考えを聞いていただくための話(波多野)
・首都圏/関西圏以外で暮らしながら表現をすることの話(波多野)

といった今、僕が必要だと思う話をお二人から話してもらおうと思います。
矢野さんや波多野さんからは”書くことと生活”のような話を聞きたいですし、SNS以降、アーティストと書き手の距離が無くなってきている今、波多野さんから”書かれること”について、話を伺えるのは意義があると思っています。技術的な話だけでなく、多角的にライティングについて考えるためにこういったトピックを講座に加えられることをうれしく思います。

ブログやnoteを書いている方、プロのライター/編集者の方、これからnoteやブログをはじめたい方、ライターや編集者になりたい方、自分の仕事ややりたいことのために文章を書くや編集的な思考力をつけたい方(例えば、音楽業界で言えば、A&R、プロモーター、マネージメントなど)、などなど、様々な方が受講してくれることを願って、お待ちしています。

以下、講座の紹介文です

ライターという仕事をしていると、日々、文章を書くことについて考えることになる。書くということは多様で、一つ一つの文章にはそれぞれに異なる状況があり、それぞれにいくつもの答えがある。

依頼された原稿を書くこと。自分が書こうと思ったことを勝手に書くこと。自分が書きたいことをどこかの媒体に書くこと。ただ単にライター業における執筆と言ってもたくさんの状況がある。書きたいことを書くこともあれば、書きたくないことを書くこともあるし、自分の専門分野についてことを書くこともあれば、そんなに知らないことを調べながら書くこともある。

目的も意図も求められることも何もかもが異なり、途方に暮れてしまう。

ただ、10年ほどこの仕事をしてきて、依頼原稿を書いたり、自分が書きたいことをネット上に書いたりするだけでなく、7冊の本を自分の監修で作り、いくつかの本に関わった中で、気付いたことや掴んだことがあった。

この10年間、書くネタに困ったことは全くなく、書きたいことはあるが書く時間がないような状態が続いているし、依頼された原稿に関しても、依頼主からの要望にもかなり応えられていると思う。でも、頭をひねって無理して書いている意識はない。

それには僕が意識している方法論というか、セオリーというか、自分が辿り着いたやりかたで粛々と文章を書いているからだと思っている。ただ無暗に書くというよりは、がんばらなくても書くための自分なりの方法に辿り着いたのだと思う。本を監修して編集的な視点が深まっていったことでより書けるようになったと思う。

自分自身を失望させない程度のそれなりに満足がいく原稿を書くために、もしくは疲弊せずに書き続けるための方法をこの講座でシェアしてみたいと思っています。

基本的に講義は、受講生にはこちらが提示した条件に沿った上で好きなトピックについて文章を書いてもらい、それを講評と添削をする形で進めようと思っています。2回に1回はゲストに来ていただいて、座学による講義も交えます。そこではライター的視点だけでなく編集者的な視点も持った宮田さんと小熊さん、本職を持ちながら副業的に執筆をつづけている矢野さん、そして、書かれる対象としてのアーティストであり、東京を離れ香川に移住して活動している波多野さんにアーティスト側の意見や地方に住みながら表現活動をすることについても話を伺います。彼らの執筆方法や編集方法などを伺いながら、受講者の皆さんがそれぞれの環境や状況に即した「書くためのヒント」を得らえる講座にしたいと思います。

その他には、講評や添削だけでなく、私が実際に書いた原稿や資料、メモなどを見ていただき、私が原稿を書く際の方法論をシェアしながら、書くためのヒントをお伝えできたらと思っています。
授業内容
ゲストを招いての座学によるインプットと、実践的な文章添削を交互に行うカリキュラムとなります。

【11/9(月)】座学①ゲスト:小熊俊哉『ライティングと編集1』
【11/23(月)】講評と添削①
【12/12(土)】座学②ゲスト:矢野利裕『副業ライターの方法論』
【12/21(月)】講評と添削②
【1/18(月)】座学③ゲスト:宮田文久『ライティングと編集2』
【2/1(月)】講評と添削③
【2/15(月)】座学④ゲスト:波多野裕文『書くこと/書かれること』
【3/1(月)】講評と添削⑤


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