南アフリカは世界屈指のジャズ大国だった。アフリカのジャズと言えば、ダラー・ブランドやヒュー・マセケラをはじめとした南アフリカのレジェンドの名が浮かぶという人も少なくないだろう。
そんな南アフリカのジャズはUKのBrownswood recordingsが『Indaba is』という編集盤がリリースしたこと、名門ブルーノートがンドゥドゥゾ・マカティニと契約したことなどにより、2010年代末、何度目かの脚光を浴びることになった。
何人かの名前がその中心人物として知られることになったのだが、その中でタンディ・ントゥリの存在感は特に大きなものだった。
不思議なスタイルのピアノと、不思議なスタイルのヴォーカル。作品ごとに変わる音楽性。そして、明らかに強く何かを訴えているタイトルや曲名や歌詞、アートワーク。デビュー作こそ、オーセンティックなジャズだったが、徐々に言葉にし辛い何かに変わっていった。そして、2023年にはシカゴのInternational Anthemと契約し、カルロス・ニーニョとタッグを組み、また不思議な作品を発表した。
その存在感、そして、その圧倒的な個性がどこから来たものなのか、僕はずっと関心があった。いつか彼女と話をしてみたいと思っていた。
取材・執筆・編集:柳樂光隆 | 通訳:渡瀬ひとみ | 協力:EACH STORY
◉ケープタウンでの仲間・先人
―― 10代のころ、あなたはどんな音楽を聴いていましたか?
――ピアノをやり始めたのはいつ頃ですか?
――University of Cape Townではジャズを学んだとのことですが、そのころ学んだことで特に印象的な授業やアンサンブルがあったら教えてください。
――Alvin Dyersの指導を受けたりも?
◉研究したピアニスト
――大学のころに特に研究したピアニストがいたら教えてください。
――モーゼスだったら『Genes And Spirits』とか?
――モーゼスはどんなところがすごいと思いますか?
――モーゼスは幅広い時代のアフリカの音楽をジャズと同居させていたと。自国のピアニストだとベキ・ムセレク(Bheki Mseleku)はどうですか?
――コンポーザーに関してはどんな人を研究してきましたか?
――でも、あなたの音楽はもっとコンテンポラリーですよね。
◉研究したヴォーカリスト、歌における影響源
――では、特に研究したヴォーカリストはいますか?
――南アフリカはコーラスミュージックだったり、歌の音楽文化みたいなものがすごく豊かな国だと思います。そう言ったところから影響はありますか?
――その合唱ってキリスト教的なものですか?それとも南アフリカの文脈のものですか?
――そういった南アフリカの教会音楽って何か名前がついていたりするのでしょうか?
◉南アフリカ由来の音楽の影響:クワイト
――さっきクワイトという言葉が出てきましたが、ジャズに限らず、南アフリカには独自の音楽がたくさん存在します。南アフリカ独自の音楽とあなたの音楽の繋がりを言葉にするとどういうものになると思いますか?
――あなたの叔父Selby NtuliはHarari、The Beatersといったバンドの中心人物でした。これらは今、Spotifyなどで聴くことができ、世界的に評価され始めています。こういった家族の環境はあなたにどんな影響を与えていると思いますか?
◉『The Offering』(2014)
――では、アルバムについて一つ一つ聴いて行きたいのですが、まず2014年の『The Offering』がどんなコンセプトで作られた作品だったのか教えてください。
◉『Exiled』(2018)
――2018年の『Exiled』がどんなコンセプトで作られた作品だったのか教えてください。
――なるほど。
――まだまだ南アフリカの状況は平等でも公正でもないし、権力構造も温存されている。でも、アパルトヘイトの廃止によってまるで問題が解決されているかのように外からは思われている暗澹たる思いのようなもの、みたいな感じですか。
――南アフリカ人としての葛藤みたいなものがいろんな形で表現されていると。さっき「Rainbow」と「Rainbow Nation」への言及がありました。この言葉は当初はポジティブに使われていましたが、先ほどもあなたが語ったように「きれいごと」的な感じでネガティブにも使われる言葉でもあると思います。あなたは『Exiled』でも「Rainbow」という曲を書いていました。あなたが「Rainbow」という言葉をどう使っているのか聞かせてください。
――なるほど。『Exiled』では明らかにネガティブな意味で使われていますよね。
◉『Rainbow Revisited』(2023)
――ということは、2023年の『Rainbow Revisited』というアルバムに関しては、ポジティヴな気持ちが入っていると。
◉『Blk Elijah & The Children of Meroë』(2022)
――では、次は2022年の『Blk Elijah & The Children of Meroë』がどんなコンセプトで作られた作品だったのか教えてください。
――なるほど。これも『Exiled』から反転したある種、希望のアルバムだと。
――『Blk Elijah & The Children of Meroë』はエレクトリックで、パワフルなグルーヴが印象的です。このアルバムのコンセプトにこのサウンドが必要だったんでしょうか?
――ヒーリングからアフリカのリズムへの関心へと向かったと。さっきヒーリングの話が出ていましたが、それってどんなヒーリングなのでしょうか?アフリカにはヒーラーのような職があったり、独自のヒーリングの文化があると思うのですが。