ドイツのクリスマスマーケット
いつかドイツのクリスマスマーケットを見てみたい。広告やパンフレットでツアーの案内を見る度に、そう思っていた。クリスマス前の限られた時期にしか体験できない季節のイベント。2006年の12月に、私はドイツへ旅立った。
準備はモミの木選びから
ドイツでは、12月25日のクリスマスまでの4週間をアドヴェントと呼ぶ。この時期、各地でクリスマスマーケットが開かれ、大都市だけでも2500もの数になるという。期間は11月末の週末からクリスマス前までの4週間が一般的で、12月24日には終わっているところがほとんど。クリスマスには店も閉まり、家族で静かに過ごすという。
今でこそ日本でもクリスマスマーケットが開かれるようになったけれど、旅をした当時は、まだほとんどなじみがなかったと思う。イギリスに住むMihokoと一緒に、ガイドブックとネットで予習をして、ドイツで訪れる街を決めた。最初に向かったのは、南部の街ミュンヘン。ここを拠点にマーケットを巡った。
ミュンヘン ではトラム(路面電車)で移動した。電停の前にたくさんのモミの木が並ぶ空き地があり、街の人たちがツリーに使う木を選んでいた。本物のモミの木に飾りつけをするのだ。
ホテルに着くと、ちょっとうれしいプレゼントがあった。部屋のドアノブに紙袋が掛けられていて、サンタの形のチョコレートが覗いていた。
高さ30メートルのクリスマスツリー
ミュンヘンのクリスマスマーケットの起源は、14世紀にまで遡るという。市庁舎の前には、高さ30メートルもの巨大なツリーがそびえ、周辺には屋台が立ち並び、グリューワインと呼ばれるホットワインの香りが立ち込める。スパイスを加えた甘いワインは、ブーツの形をしたカップに入っていた。マーケットごとに個性的なマグカップが用意されていて、飲み終わると持ち帰ることもできる。
イエス・キリスト生誕の場面を表現した工芸品クリッペの品揃えが豊富なことでも知られている。周辺の店のショーウインドウも、それぞれに工夫を凝らしたクリスマスの飾り付けがされていた。冷たい雨が降る中、色とりどりの傘が行き交う。木の実とスパイスで作られた飾りなど、日本ではあまり見かけないものも多い。
本場のシュトーレン、カリカリに焼いたポテトにリンゴソースをかけたもの、チョコレートでコーティングしたイチゴにりんご飴も売っていて、日本のお祭りみたいな雰囲気で、ワクワクしながら店を覗いて回った。
そして、ミュンヘンといえば、「オクトーバーフェスト」で知られるビールの街。私たちも街角のビアホールで乾杯した。
ドイツ最大級のクリスマスマーケット
ミュンヘンから特急に乗り、ニュルンべルクに向かった。ここは、世界で最も有名なクリスマスーケットといわれていて、ドイツで最大級の規模を誇る。私が訪れた当時は、屋台の数が約160といわれていたけれど、今では180もの数に上るという。赤と白のストライプの屋根が特徴だ。子どもたちの合唱などもあり、大勢の人で賑わっていた。
ニュルンベルクのクリスマスマーケットの正式名称は、Christkindlesmarkt(クリストキンドレスマルクト)。調べたところ、クリストキントはもともとは幼子キリストの別名だが、天使の姿で表されるという。
2年に一度選ばれる「クリストキント」が、ニュルンベルクのクリスマスマーケットのシンボルだ。くるくるとカールした金色の髪の若い女性で、金の冠をつけ、金の羽のような衣装を身にまとい、クリスマスマーケットの開催を宣言する。マーケットの中を歩くクリストキントの周りには人だかりができていて、私も写真入りのポストカードをもらった。
レープクーヘンというスパイス入りのお菓子や、小ぶりの焼きソーセージもニュルンベルク名物だ。屋台では、熱々のソーセージをまるいパンに挟んでくれる。
たくさんの人が行き交い、馬車が走り、おとぎの世界に迷い込んだみたいだ。クルミやプラムで作った人形、プカプカと煙を吐く人形、くるみ割り人形に紐を引くと手足が動く仕掛け人形などもあった。木製、ガラス製、さまざまなオーナメントの中から品定めして、少しずつ買って帰った。
地域の個性あふれるマーケット
再びミュンヘンから電車に乗り、アウクスブルクのクリスマスマーケットを訪ねた。家々のドアや窓には、リースや天使、スノーマンなどが飾られ、道行く人の目を楽しませてくれる。回転木馬が設置された広場では、子どもたちがはしゃいでいた。
ここのマーケットの程よい大きさや、あたたかな雰囲気を覚えている。広場を見下ろすカフェでコーヒーを飲みながら、暗くなるに連れて輝きを増すツリーや屋台を眺め、写真を撮った。
残念ながら2020年は、新型コロナウイルスの影響で、中止になったマーケットが多いそうだ。
今もグリューワインのマグカップは、ペン立てとして部屋にある。ガラス製の天使や木製の回転木馬などのオーナメントも、年に一度、取り出して飾っている。あのキラキラしたあたたかな空間を、またいつか体験してみたい。
参照:ドイツのクリスマス
(text:Shoko/ photos: Mihoko ) Ⓒelia
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