#7 Cloud Library(7章全文掲載)
平沼は、手にした数冊の本をダンボール箱にしまった。以前は、自分の背丈よりも高いこの本棚いっぱいに、文献が敷き詰められていた。
平沼は、2年ほど前に、すべてをデータ化することに決めた。文献に囲まれた部屋は権威や威光を示すことはできるかもしれないが、そんなものに興味はない。学生と素早くその一部を共有したり、論文の参考資料として持ち運ぶうえでも、データにしてしまうのが便利なのだ。ダンボールに詰めたものは業者に送り、裁断してデータ化してもらう。これを「自炊」と言うのだと、最近学