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11G【イレブンジー】

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【仮想空間にサッカークラブを作る】 サッカーとテクノロジーが融合した新感覚のサッカー小説
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#ひまわり

#15-2  共鳴

#15-2  共鳴

 青坂慶は、不思議な感覚を抱いていた。伊予北駅で合流した時に、あれだけ嫌悪感を持っていた拓真や空翔に対し、自然と声をかけることができたのだ。

 「久し振りだな」

 短い一言だったが、曇りのない、落ち着いた心で発せられた言葉に、拓真や空翔の方が驚いたほどだった。

 変化の兆しは1か月ほど前からだった。特別意識していたわけではないが、両親に対して「ありがとう」の一言が自然に出るようになった。気恥

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#14-3  向日葵

#14-3  向日葵

 「驚いた?」

 日葵が今度は無邪気な笑顔で拓真に訊いた。

 「実は全部見てたんだよね。町田大学との試合も、みんなのVRトレーニングの進捗も」
 「えっ?」

 拓真は驚きの声をあげながら、パソコンの画面から目を離し、日葵の方を見た。

 「日葵は俺が香川県に作ったFC MARUGAMEの学生コーチだった。年齢はお前と同じ、高校2年生だよ。3か月前に血液の病気になってしまって、ここに入院してる

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#14-2  病室

#14-2  病室

 正面口の自動ドアを通り、総合受付が見えた。簡易ではあるが、AI医療機器である「YDx-DI」が全国のドラッグストア内に設置されて以降、医療の状況は一変した。椅子に座り、網膜の写真を撮影するだけで、糖尿病などの初期症状を診断することができる。疾病疑いがある人や、希望者は、医師の立ち合いのもと、ドラッグストア駐車場に停められた総合検診車の中で指先から採血すれば、より高度なAI医療機器のもと、疾病の有

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