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“完璧なセットリスト”とは何か──200曲以上の引き出しを持つGRAPEVINEが設計した今
7月8日、Zepp DiverCityで行われた「GRAPEVINE tour2021」を観た。
この日は、東京に4回目の緊急事態宣言発令が宣言された日。適用は7日12日以降ではあったものの、「もしかするとライブがキャンセルになってしまうのではないか」という直近の不安と、「いつまでこんな日々が続くのか」という将来への不安を改めて覚えた瞬間でもあった。
雨のなか、お台場へ向かう。なんとか無事にラ
「これは水です」 ウォレスの卒業式スピーチの要約と考察
GRAPEVINEの15thアルバム『ROADSIDE PROPHET』に、「これは水です」という曲が収録されている。
「これは水です(原題:THIS IS WATER)」は、作家のデヴィッド・フォスター・ウォレスが2005年、ケニオン大学で行った卒業式スピーチのタイトルだ。
このスピーチは2010年、タイム誌で「ベストワン」と評されたことで有名になった。また、GRAPEVINEファンであれば
GRAPEVINEを“科学”する-vol.4 「夏」-
「夏」というのは、田中和将という人間にとって重要なピースだ。その理由を紐解くのが今回の記事である。
こちらの記事でも書いた通り、歌詞における「夏」というワードの出現頻度は、ほかの「春」「秋」「冬」に比べて断トツだ。もう一度回数を記すと、
春:3回
夏:34回
秋:0回
冬:8回
となっている。
今回は、なぜこんなに「夏」が出てくるのか、書かずにはいられないのかを考えてみたい。
理由① 夏
GRAPEVINEを“科学”する-vol.3 第1フェーズ:他者との関係の構築-
だいぶ期間が開いてしまいましたが、田中さんの歌詞を分析していきます。テキストマイニングツールの説明については、こちらの回をご覧ください。
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第1フェーズ
テーマ:他者との関係の構築
作 品:『覚醒』(1997)~『イデアの水槽』(2003)
【ワードクラウド】
「君」「わかる」が中央に大きく表示されている。この2つのワードは全体のデータで見たときと同じ位置にある。
じゃあ、「君」の
田中和将2万字インタビューまとめ(後編)
前回、田中さんがGRAPEVINEに出会うまでの来歴をまとめた。今回は、GRAPEVINEのメンバー募集の貼り紙を見つけるところから。
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「ちょっと黒い音を入れつつ、オリジナル・ロックをやりたい。当方、スライ、ニール・ヤング好き」――。
その貼り紙を見た田中さんは電話をかける。相手は当然、ダーリーこと西原誠だ。声の印象は「低音でバフバフ(笑)」ながらも、温かい感じだったため「いい人や!
田中和将2万字インタビューまとめ(前編)
田中和将という人間の人となりを知りたい――と思ったときに、これを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。『ROCKIN'ON JAPAN』(1999年12月号)である。
表紙巻頭は、田中さんの2万字インタビューだ。いわゆるライフヒストリー・インタビューである。出生地、生年月日、初めての記憶に始まり、学生時代、バンド結成、そして現在までを赤裸々に語っている。
今でこそアルバムが出てもイン
GRAPEVINEを“科学”する-vol.2 全体のデータ-
今回は、テキストマイニングツールの解説を含め、GRAPEVINEの歌詞全体のデータ解析してみたい。
今回、対象となる作品は、前回の記事で紹介した1stミニアルバム『覚醒』~16thアルバム『ALL THE LIGHT』の作品。そして、『OUTCAST~B-SIDES+RARITIES~』以降のシングルのカップリング曲だ。220曲以上はある。ただし、ここには“青い魚”(作詞:金延幸子)、“窓”(作
GRAPEVINEを“科学”する-vol.1 フェーズ分け-
今回は、GRAPEVINEの作品をフェーズ分けしていこうと思う。
バンド結成は1993年。その4年後、1997年にメジャーデビュー。キャリアとしては、今年で22年目になるベテランバンドだ。これまでリリースしてきた主な作品は以下の通り。
1997/09/19 1stミニアルバム『覚醒』
1998/05/20 1stアルバム『退屈の花』
1999/05/01 2ndアルバム『Lifetime
GRAPEVINEを“科学”する-prologue-
GRAPEVINEを語るとき、田中和将(Vo・G)の書く歌詞の素晴らしさは避けて通れない。彼は、GRAPEVINEのほぼすべての曲の作詞を手掛け、その言葉のセンスと精度から、GRAPEVINEは初期より“文学ロック”と呼ばれるほどだった。
田中の歌詞の特徴は“自意識”が先行しないことだ。アーティスト気質のバンドマンには、メッセージ先行で曲を手掛ける人もいるが(もちろんそれが悪いとは言わない)、田