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母念願の絶景カフェ「ぽっぽ」は、幻に終わった

母が言った。

「ぽっぽ行きたいんだ。ぽっぽ」

「は?何?とうとうボケたか?」
そう言うわたしに笑いながら母が言った。

「失礼ね!知らない?奥多摩にあるカフェだよ。
断崖にあるってテレビでやってたから行ってみたいんだ」

紅葉の季節が素晴らしいから、秋に行きたいと言われた。初夏に。笑
やれやれ・・・気が早いこったなぁ〜・・・である。

それから1ヶ月ごとに「いつ行く?」「いつ行く?」と連絡が来た。

よっぽど行きたいんだなぁ〜・・・と思い、今か今かと秋を待った。

そして奥多摩も紅葉の見頃になった12月1日(土)、
いよいよ奥多摩に行く事にした。

さぁ、行こう!となった時に母が言った。
「澤乃井園も行ってみたいんだ」

マジか。新たに1店舗増えたぞ。

調べてみるとぽっぽの最寄駅、鳩ノ巣駅から澤乃井園の最寄駅、沢井は4駅目だ。
時間にして15分程。これならハシゴできる。

「じゃ、ぽっぽが11時開店だから、早めに行って鳩ノ巣渓谷を散策して、
ぽっぽでランチして、沢井に移動して澤乃井園で酒しようか」

ということで、まずは鳩の巣駅に向かった。

小さくて可愛い駅で、改札口のステンドグラスがとってもキレイだ。

駅の改札の端っこには登山届ポストもあってビックリ。
しかもポストの横には可愛い鳩の巣マップもあって至れり尽くせり。
とっても親切な駅である。

外からの鳩ノ巣駅。
こじんまりとしていてカワイイ。

ん?

開業昭和19年7月1日?

え!7月1日ってわたしの誕生日じゃん!
おお〜・・・!!!

「ねーねー!この駅、7月1日開業だって!」
なんか親近感が湧き、大盛り上がりで母に言った。

すると母は、きょとーんとした顔をし、「だから何?」という
雰囲気をありありと出してきた。

え?
まさか、娘の誕生日を忘れてるわけじゃないだろうな・・・

一瞬の間の後、その辺、突っ込むのもめんどくさいなと思い、
(まぁ、いいか)という事にした。

駅前には、大きなマップがあったのだが、これがまた良く出来ている。

イラスト満載でとっても見やすい。
鳩の巣渓谷は初めてなので、散策の参考になるかも・・・
と写真を撮っておいた。

あれ?
左端の方に「奥多摩の山にはクマが出没します」とある。

・・・知ってますとも。
八王子でも大騒ぎになっております・・・

「必要以上に怖がることはありません」とある。
奥多摩の看板が言うなら間違い無いだろう。
気をつけつつ、先に進む。

鳩ノ巣駅からカフェぽっぽ迄は、少し距離がある。

だが母に前もって「ぽっぽが出てるから見て」と言われたテレビに、
行き方が出てたので大丈夫。自信を持ってぽっぽへの道を進んだ。

紅葉がキレイだね〜なんて言いながら歩いていると、吊り橋が見えて来た。

手前にある建物は・・・ぽっぽだ!

母が前々から行きたい行きたいと熱望していた、ぽっぽに
やっと連れて来てあげられた。良かった良かった。

ここまでで達成感は、既に70%である。

「まだ開店の11時までに時間があるけど、少し待てば開くから」と言いながら
ぽっぽに近づく。

ん?

えええええええええええええええ!!!!????

12時!!??ウソでしょ?!
聞いてないよぉおおおおお!
まだ1時間以上もある。

あら〜〜〜〜〜・・・
まぁ、しょうがない。 

気を取り直して鳩の巣渓谷を散策しようという事になり、ぽっぽのすぐ横にある橋を渡ってみる事にした。

紅葉の中の渓谷。
結構、流れが激しくてビックリ。

母が「水の神様を祀っているところがあるよ」と言うので
行ってみる事にした。

そういえば、鳩ノ巣駅前の木のマップにも書いてあった。

写真に撮っておいて良かった!
こっちでいいのかね・・・と、キョロキョロしつつ
細い道を進むと、少し歩いた所に小さな鳥居があった。

「ココの上?随分急だね。大丈夫?」と母に言うと、
「大丈夫」と、トコトコ登り出した。

エンヤコラ!と登りきって神様が祀られている所に行ってビックリ!
スゴい高さである。

ポッポが向こうに見える。

スゴい切り立った崖に、今わたしいる!?とドキドキの高さである。
頭の中に鳴り出すあの音楽。

チャ〜チャ〜ラ〜〜〜〜♪チャ〜〜〜〜ラ〜〜〜〜♪(火曜サスペンス劇場より)

コエ〜〜〜〜〜〜!と腰がひけるわたし。

・・・の横をスイスイス〜〜〜イと行く母。

カシャ、カシャ
なんか一生懸命撮ってるなぁ〜と眺めるわたし。

ふと、
子供を見る様に温かい目で見ている自分にビックリした。
年をとると、こうなっていくのかな。
不思議な感覚だ。

一通り写真を撮って満足げな母。
「ちょっと見せてみ?」と母が撮った写真の数々を覗くと、

母撮影(下から撮った写真)

「あら!素敵に撮れてるね!スゴいじゃん!」
驚きである。

「ふふ、案外撮れてるでしょ」
まんざらでもない母に、思わず笑った。

まったり絶景を眺めていると男性が登って来た。
大きなカメラを持っていて、撮影を始めた。

ここは撮影スポットなのかもしれないな・・・

撮影の邪魔をしてもいけないので、水の神様に
ご挨拶をして、来た道を戻る事にした。

まだぽっぽの開店まで30分程ある。

途中、少し下れる場所があった。
とても良い景色だったので、そこで腰掛けて一息ついた。

「結構流れが早いね〜・・・」
川の流れを眺めながら話していると、
「澤乃井に行こう」と、藪から棒に母が言い出した。

「え?澤乃井?ぽっぽは?あと20分位で開くよ?」
「いいや。澤乃井行こう」

「え!?だってあんなに行きたがってたじゃん!」

こっちからしたら、いきなりどうしたの?である。

「こういう所だってわかったし。もういいや」

待ちくたびれたらしい。
もしくは水の神様の所の絶景で満足したか。

もう少しだし、待とうよと言っても、もう澤乃井に行くの一点張り。

まぁ、ぽっぽに行きたいと言った本人が、もういいと言うのならそれでいいのか?

「じゃ、行くよ?
なかなか来れない所だけど、寄らないで後悔しない?」
「しない」←断言

夏前から行きたいと熱望していたくせに、この断言には
思わずぽかーん・・・である。

ということで、ぽっぽの開店前に鳩ノ巣渓谷を後にしたのであった。

結局、母念願の絶景カフェ「ぽっぽ」は、外観を眺めただけ。

「母をぽっぽに連れて行ってあげる」
この達成感は70%から上に上がる事は無かった。

いや、むしろダダ下がり感を強く感じつつ、駅への道を進んだ。

絶景を見ながらのぽっぽのお食事は幻に終わったのであった。

まったく、わけわからん。笑

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