はじめての笑顔

５月末の新谷仁美選手のツイートにこういうものがありました。

2019年は敗北の一年だった。
復帰したばかりだとかこの世界では通用しない。どんな事情があってもスタートラインに立てばみんな同じ。勝った者が強い。
写真：@EKIDEN_News pic.twitter.com/xAQ2RQKM3X

— 新谷 仁美 (@iam_hitominiiya) May 30, 2020

2013年の引退から５年のブランクを経て競技復帰。そこから１年で世界陸上の舞台まで戻ってきた。普通に考えると十分すぎる結果かもしれない。そして、このツイートも謙遜のようにとられるのかもしれない。

ミックスゾーンで話を聞くため、記者はモニターでレースの流れを見て、レース終了後、急いでミックスゾーンへかけつける。世界陸上のような場合、新谷選手だけをカメラは追ってくれない。そういうこともあって、走り終わってミックスゾーンで受け答えする新谷選手を見ていると、「よくぞ、ここまで戻してきた」という記者と「敗北です」という新谷さんとのやりとりにギャップがあるように見えた。彼女は自分探しではなく、「勝つために戻ってきた」わけだから、なおさらだ。

記者はミックスゾーンの先には入ることは許されない。けれども、カメラをもっていれば、ミックスゾーンのその先、グラウンドレベルに立ち入ることができる。カメラは印籠みたいなところがある。そして、ときにはペンよりも雄弁に状況を語ることができる。

2019年。新谷選手にとって、ポイントとなったレースは４月のアジア選手権ドーハ10000m。５月の日本選手権10000m。９月の世界陸上ドーハ。

どのレースでも泣きそうな顔でゴールし、リザルトも確認することなく、すぐにトラックをあとにする新谷選手がいた。


アジア選手権ドーハ。

日本選手権

世界陸上ドーハ

トラックから立ち去る速さは世界一。

２年近く復帰後の新谷選手を見続けてきて、ようやく笑顔でゴールできたのはヒューストンハーフのときのこと。

だから、「2020年は笑顔の一年」となるといいな。と。
そろそろ再開となるトラックを楽しみに待ちながら。