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はじめて10km走った夜:LSDから始めよ

僕には目標とする走り方がありました。それはオリンピアンや箱根駅伝を走るランナーのスピード感あふれるフォームではなく、ずいぶん昔、子供を連れて砧公園を散歩していたときに見かけたゆっくりと綺麗なフォームで走っている人たちの走り方です。

ぼんやりとしたイメージですが、ゴルフ場跡地だった砧公園の芝生でおおわれた丘陵地を腰の位置を高く保ち、芝生の上をゆったりとしたフォームでゆっくり走る。しかも笑顔で会話をしながら走っています。彼らは、すごく楽しそうだったんです。走ることは辛いもの。そう思っていた僕の常識を覆す光景だったのです。その姿を見て以来、この走り方はなんなのか、その正体を知りたいと思っていました。

 そこでいろいろと調べてみると、どうやらそれはLSDと呼ばれる走り方ということがわかりました。LSDとは、Long Slow Distance。つまり、ゆっくりとしたスピードで長い距離を走ることです。中毒性のありそうな名前も含めて、僕にはこの走り方が魅力的に感じられました。よし、これをやってみようとなったわけです。

 金さんの本には、LSDについても書いてありました。おしゃべりができるくらい心肺にも余裕があるゆっくりなスピードで長く走ることによって、血液の循環が良くなり、体の末端まで酸素が行き届くような体が開発され、脂肪も燃焼しやすい体になる。まるで健康食品の効能のように、LSDのいいところが書いてあったんです。 

“距離”ではなく“時間”を目標に
 LSDを知る前の僕は、汗だくになって息を切らして走っていました。15分も走れば、いい運動したなぁ、と思って満足していたものです。けれどLSDのポイントは、長い時間を走るということにあります。初マラソンの一般的な目標タイムは、4〜5時間台。つまり5時間も体を動かし続け走らなければならないのです。フルマラソンというと、ついつい42.195kmという距離について目がいきがちです。ですが、その攻略の本質は、長い時間走り続けられる、身体を動かし続ける能力を得ることにあったのです。まずは距離よりも時間であると。

 そこでストップウォッチで時間とにらめっこしながら僕は走り始めます。はじめの頃の僕の走るスピードは、本当にゆっくりでした。どれくらい遅いかというと、ウォーキングをしているおじいちゃんと同等か、たまに抜かれるくらい(笑)。それくらいゆっくりとしたペースから走り始めました。はたから見ると、歩いているようなスピードですが、走っています。常に片足どちらかが接地している歩行と違い、たとえ遅くとも両足が宙に浮いている瞬間がある。空を飛んで、着地をしてる。つまりジャンプをしているんです。とりあえずの目標は30分。そこから徐々に走る時間を伸ばしていきました。ぜーぜーハーハー走っているときは15分がやっとでしたが、ゆっくり走れば、音楽やラジオ番組を聞いてるうちに、あっと言う間に30分はたってしまいます。

走ることは、辛いこと。そう思っていた僕にとって、こんな走り方もあるんだと教えてくれたのがLSDでした。

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この文章はただいま秋の発売を目指して絶賛制作中の書籍
「走るといいこと」〜走って、観て、伝える。
 EKIDEN Newsの試み(仮題)の骨組み、みたいなものです。

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