見出し画像

「Flower Paintings」とは。ボタニカルアートとの大きな違いが3つある。

昨日は ボタニカルアートについて書きました。
今回は「ボタニカルイラストレーションとボタニカルアート、フラワーペインティングの違い」の最終章「Flower Paintings(フラワーペインティング)」について説明します。

もし、このページから読み始める人のために、前回のおさらいから。

1. ボタニカルイラストレーションとは植物学の研究を目的とした植物細密画で植物学者の研究や文献用に描き、植物学者と相談しながら協調すべき点など指示を仰いで描く。その描き方にはルールがある。
2. ボタニカルアートは描き方はボタニカルイラストレーションとほぼ同じであるが、決定的に違うのは「観賞用、商業用目的で描いている」ことである。

さて、今回のお題の「Flower Paintings」は「ボタニカルイラストレーション」と「ボタニカルアート」とどう違うのでしょうか。

結論を先に言うと、作者の感じるままに自由に描く「花の絵」や「花を題材にした絵画」の総称です。詳細は以下で項目に分けて調べて書きます。


英語で Paintingsは「絵の具て描かれた全ての絵」の総称です。 

水彩画、油彩、日本画顔料、アクリル絵具など、「絵の具」と言われる画材で描かれた「絵画や絵」のことを英語では「Paintings」と言います。子供でも大人でも、プロの画家でも、絵具で塗った絵は、一つなら「a painting」、複数の絵を示すなら「paintings」と複数形で言います。ですから、Flower Paintingsはあらゆる絵の具で描かれた「花の絵、花の絵画」の総称です。

ですから、ボタニカルイラストレーション(植物細密画)やボタニカルアート(植物画/植物細密画)も水彩絵具で塗っていると、「paintings=花の絵」でFlower Paintings の一つのジャンルと言えます。

しかし、ボタニカルイラストレーションやボタニカルアートと大きく違う点が3つあります。

1)Flower Painting(花の絵画)は描き方が自由。

作家の感性で思いのまま感じたまま、どんなテクニックを使おうが、どんな絵の具を使おうが、どこに描こうが、全部あなたの思いのままに。花を題材に自由に描くことができるのが「Flower Painting」です。
正確さよりもその植物に対する作者の思いを優先させる絵や絵画でなので、そこに科学的であったり、植物学的な要素は全く必要ありません。抽象画であっても花を表現してあなたが花を描いていると言えばそれはFlower Paintingです。分かりやすい例えを出すと、ゴッホのひまわりや、モネの水蓮など、あなたが知っている印象派で花をモチーフにした絵を想像するとわかりやすいかもしれません。

2)背景が描かれているとFlower Paintingになる。

いくら化学的に植物学的に細密に描かいても、背景が描かれていればそれはボタニカルイラストレーションやボタニカルアートとジャンル分けされません。あなたが背景を描いたり、塗ったりすると、いくら植物細密画として花を描いたつもりでも仕上がった絵は専門家からは「Flower Painting」にジャンル分けされます。ルールがあるボタニカルイラストレーションのコンクールに応募してもポートフォリオ審査で落ちてしまうでしょう。

3)数種類の植物が一枚の絵に描かれているとFlower Paintingになる。

(2)と同様、花だけ見ると科学的に精密に描かれたボタニカルアートに見えても、数種類の植物が一枚の用紙に描かれていれば、「Flower Paintings」となります。ボタニカルイラストレーションのルールの1つとして、1画用紙に1種類の品種しか描かないというルールがあります。


このように上の3つの大きな違いを見ると、「花」をモチーフにしたほとんどの絵は「Flower Painting」になると思います。花ではなく観葉植物や木をモチーフにした絵は「Plant Painting=(植物の絵)」です。ボタニカルアートが好きだ、ボタニカルイラストレーションを描きたいという興味があって、ボタニカルイラストレーション(植物細密画)の「ルール」を知らない限りは「ボタニカルアート」は描けないし、ジャンル分けされないと思います。ですからボタニカルアートに興味があって描きたいと思ったならば、科学的に植物学的に描く「植物細密画」の本を購入したり、講座をうけることが必要になってくると思います。

しかし、ボタニカルアートの展覧会に行き、その魅力に見せられて「私も描きたい」と全くの絵の初心者の方ががいきなり「植物細密画」から入るとハードルが高いと思います。きっちりと寸法を測って描く絵なので、絵心よりも「根気」いるからです。初心者は絵を描くことが「楽しい」と思うより、「きっちりしすぎて面白くない。」あるいは、「忍耐=つらい」と思って挫折してしまうかもしれません。

ですから、私が初心者の方にお勧めするのは、まずは水彩絵具とスケッチブックを買って、自分の思いのまま自由にスケッチブックに「Flower Paintings=花の絵」を描き、その楽しさを味わうことからから始めるといいと思います。「花の絵や花の絵画にルールはない」ので、正解も不正解もありません。花の画像はインターネットでいくらでも探せます。それを真似て自由に描いてみてください。混ぜ方が分からない、水彩画のテクニックをもっと知りたくなれば、「初めての水彩画」の本を買ったり、初心者向けのYoutubeビデオを見たりして基礎のテクニックを学び、自由にFlower Painting(花の絵)を描く、水彩画の楽しさを味わうことから始めることをお勧めします。

以上、4回に分けて私が「いまいち違いがわからなかった」英語の「Botanical Illustration」、「Botanical Art」、「Flower Paintings」ついて調べてnoteに書き残してみました。
これは本当に偶然なのですが、現在、東京都植物園で「キューガーデン 英国王室が愛した花々 シャーロット王妃とボタニカルアート」が絶賛開催中のようです。見どころを下に引用先とともに残しておきます。

・鋭い観察眼により細かく描き込まれたボタニカルアートを一挙に約100点展示。
・手彩色が施された豪華な植物誌『フローラの神殿』『カーティス・ボタニカル・マガジン』など、貴重な図版の数々を出品。
・シャーロット王妃お気に入りのクイーンズウェアをはじめとしたウェッジウッド、ウースターやダービーなど王室ゆかりの陶磁器を紹介
https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/210918-1128_TheRoyalBotanicGardensKew.html


ボタニカルイラストレーションや、ボタニカルアートに興味がある方は是非とも足を運んで実際に「科学的視点と美しさを併せ持つ、ボタニカルアートの華麗なる世界」を体験して見ることをお勧めします。「Botanical Illustration」、「Botanical Art」、「Flower Paintings」が全て展示されているようなので、私はこの展覧会の目録がめちゃくちゃ欲しいです。


この記事が参加している募集

#最近の学び

181,634件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?