見出し画像

カイコと暮せば①

 みんな蚕(カイコ)って知ってる?
白くて黒の紋様のあるイモムシみたいな生き物でさ……うーんそうだ! 絹糸を生成するヤツっていったら ピンと来るかもしれないね。
 まぁ、全国的に見た場合、あまり好かれる生き物とは言い難いよね。 かくいう俺も、イモムシ、ケムシ系はかなり苦手で触るとかマジで無理。
 そんな嫌われものの生き物だが、サエコさんが住む地域では昔、絹を生産するための 養蚕(ヨウサン)業が盛んだったらしく
  
①地域の産業を学ぶこと ②命について考えること

 を柱として、小学三年生の夏休みに必ず『おカイコさま』を5匹づつ配られ、繭を生成するまで飼育・観察することが 義務付けられる。

そう。強制的にってこと。
そんな小学3年生の夏は、我が家にももれなく訪れた。

ついに来たか……。
 その夏、俺は腹をくくった。サエコさんがあんなのやるわけないし、忘れん坊のイトは……あてにならない。きっと俺の当番になるだろう。 
 俺は近所の高学年の小学生とコンタクトして、生きた情報を集め、やや大きめの飼育ケースを購入して『おカイコさま』の降臨を待ち構えた。
  
 あぁ……今まで大抵の生き物とは仲良くやってきたつもりの俺だけど…… 今回ばかりはわからない。
愛着なんて湧くのだろうか? 愛無き飼育は可能なのだろうか? 頑張って育てても、ゴールは『蛾』。

……もっと嫌いなヤツやん……
 
 ダメだ。
宇宙人との新婚生活くらいイメージが湧かない……。
とんだマリッジブルーだ。

 だけど。 叔父さんは『メシが不味くなりそうだからリビングには置くなよ』っていってた。サエコさんは『玄関なんかに置かないでよ〜』って。イトは『私の部屋は怖いからヤダ~』
だよな。怖いよな。
……俺の部屋ですよね。はい。

 運命のエンカウントは明日。 マジで頑張れンの?俺!

次回は『カイコと暮らせば②』
https://note.com/eita2020/n/ne787e793bb15

……俺とカイコの新生活が、幕をあける……。


(2019年ブログ掲載作品)