カイコと暮せば②
前回、学校教育の延長という……有無を云わさぬ圧力により、カイコの飼育を任されるハメになった俺。
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https://note.com/eita2020/n/nf67cc01115b2
『ただいまー』ガチャ。
……イトが帰ってきた。ヤツを連れて……。
飼育ケースを厳かにテーブルに置く。ケースの中には桑の葉が数枚、ケースの中にポトンと置かれている。この授業で使う為に、学校には飼育用の桑の木が数本、植えられているらしい。知らなかった……。
どれどれ……うへぇ。動いてる……。ん?思っていたより小さいんだな。マッチ棒以上、細うどん未満ってとこか。 少しだけホッとする俺。
まぁ今日の餌はあるし、俺がやらなきゃならないことは今のところナシか。 ふむ。フンもしてるけど思ったより臭いもないんだな。カイコは桑の葉の外周にしがみつき サリサリサリサリ葉っぱを食べている。……結構早いぜ……ふぅん。
ま、小さいけど……かわいくは、ない。
やっぱイモムシだな。 キモッ!
イトは学校で云われた通りケースの上に暗幕をかけ俺の部屋に置いて遊びにいってしまった。 俺も出来れば存在を忘れて過ごそうと決め、その日は早く床についた。
ところが次の朝、起き抜けに少しだけ気になってヤツらの様子を見てみると……昨日の分の桑の葉は 見事に葉脈を残して食べ尽くされ、ケースの底には無数のフンが転がっていた。
こいつは厄介だぞ。
匂わなくても排泄物である以上、放っておけば虫がわくかもしれない。慌ててヤツらを震える指で蓋付きのプラパックに詰め替えると、急いで飼育ケースを掃除する。
もう桑の葉は一枚もない。
心細そうに右往左往するヤツらを見ていたらだんだん心配になってくる俺。今日イトが帰ってくるまでに、こいつらは死んだりしないだろうか。
今日は昨日よりも少しだけ多く桑の葉を貰っておいでよ、と念を押してイトを見送ると、俺はスマホで早速カイコの情報をググり始めた。
そこで俺はカイコ達の衝撃の生態と、キレイな絹糸を彼等から頂く為に俺達が下さなければならない苦渋の選択を知ることとなるのだった……。
次回は『カイコと暮らせば③』
https://note.com/eita2020/n/ne101f41580c0
徐々に芽生えるこの気持ちの名前を、俺はなんと呼んだらいいのだろう…?
(2019年ブログ掲載作品)