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自分のために? 褒められるために?「英語のそこのところ」第116回

【前書き】

 今回、投稿するエッセイは7年前の2016年9月1日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
 夏休みの自由工作の宿題は未だにあるようですが、どうもそういうものを作る際にも、Native English SpeakerとNative Japanese Speakerとでは動機が異なるようです。(著者)

拙著「英語の国の兵衛門」のkindle版を出版しました。

 2008年に株式会社メディア・ポートより上梓され、その後同社の解散により入手不可能になり、みなさんにはご迷惑をおかけしておりましたが(一時は、古本が2万3万ぐらいで取引されていたようで。いやはや、私には一銭も入りませんが_| ̄|○)、kindle という形で復活させることが出来ました。
これを機にぜひお手に取ってみてください。

新展開 第3弾! 映画や小説の台詞を英語にして英語力を鍛える「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル9」発売中!

 English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト(全10巻)で、英文法を網羅しましたので、「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル7」以降では、様々なコンテンツの名言、名台詞を英語するより実践的なトレーニングをやっていきます。

 この「ESM Practice 9」では、とモンゴメリーの「赤毛のアン」のセリフやデイジー・リドリーのインタビューを英語にすることにトライします。

それに、巧く持たないと取っ手が抜けるのよ。(from 赤毛のアン)
ちょっと気が滅入るかも知れないけど、グレイよ。(from デイジー・リドリーのインタヴュー)
90年代生まれのあるあるは?(from デイジー・リドリーのインタヴュー)こんなふうに、スパイスガールズと育ったわ(スパイスガールズの動きの真似をしながら)。(from デイジー・リドリーのインタヴュー)

お愉しみに。

大好評! Kindle で一日500ページビュー 「English Sentence Maker」シリーズ

 English Sentence Maker は、あなたの感情や意見、思っていることを伝えるためにはどの時制や助動詞、文法事項を選ぶべきかがわかる実践英語・英会話力養成テキストです。

 著者の主宰する英会話スクール「英語・直観力」の企業向けテキストから、契約企業様向けの問題文などを差し替え、一般向けに手直ししました。

 7年間で100名以上のビジネスピープルを単独での海外出張や海外赴任ができるスキルを持った国際ビジネスピープルにした実績があります。

 ぜひ、この実績あるテキストを完全マスターしていただき、世界を相手にビックディールを成し遂げ、人生を愉しんでください。このテキストはその扉を開くカギになります。

 実践英語・英会話力養成テキストEnglish Sentence Maker は、3つの特色を持っています。

 ひとつ目は、能動的な学習だということ。
 English Sentence Maker は書き込み式のテキストです。各Lesson ごとの解説を読み、そのあとに掲載されている日本文をご自身のノートもしくはkindle のノートブックなどに英語にして書き入れてください。その際に、知らない単語は調べたりせずに、日本語のまま英語の文の位置においてください。そうすることで、知っている単語、知らない単語を区別し、身に着けるべき単語を浮かび上がらせることが出来ます。

 ふたつ目は、どの文法事項を使うかの判断基準を身に着けられるということ。
 小・中・高校と長い間英語を学ぶために、多くに人々は英語の現在形、過去形などの文法事項を知っています。しかし、残念ながら、その文法事項をどういう場合に使えばよいかという判断基準を身に着けていません。

 たとえば、ここ何ヶ月かフットボールに夢中になっているということを伝えたい場合に使うべき時制は、現在形でしょうか? それとも現在進行形でしょうか? 迷われると思います。
 この知ってはいるけれども使い方に迷ってしまう文法事項を使う判断基準を各Lesson ごとの解説でくわしく説明しています。それを理解することで、英語を使う際に十全にあなたの感情や意見、思っていることを伝えることが出来るようになります。

 みっつ目は、英語を英語で考えることが出来るようになるということ。
 English Sentence Maker は日本語を英語にしていくことで、英語を習得していくテキストです。しかも、どういうときに、どういうことを言いたいときに、どの文法事項を使えばよいかという判断基準が出来ていくために、日本語の文字面を英語に移していくのではなく、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを英語にするというスキルを身に着けることが出来ます。頭の中のイメージから英語を作ることが出来るということは、そこに日本語は介在しません。つまり、英語を英語で考えることが出来るようになるのです。

具体的には、

私は彼が来るだろうことを知っていた。

という日本語を英語にする際には、日本語の文字面を英語に移していくと、

I knew that he will come.

と、しがちです。「知っていた」なのでknew、「来るだろう」なのでwill comeというわけです。
 しかし、よく考えてください。「彼が来るだろう」というのは、「私が知っていた」過去の時点のことです。であれば、「彼が来るだろう」と書いてあっても、過去から見た未来のwould を使って、would come としなければなりません。日本語をその字面のまま英語にしてはいけないのです。しかし、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを、判断基準をもって英語にすることが出来れば、問題はなくなります。頭の中に時の流れのイメージがあるために、

I knew that he would come.

という英文が難なく作れるようになります。 英文作成力や速読力を付けたいと思っておられる方ぜひ、手に取ってみてください。必ず、英語・英会話が出来るようになります。

☆「English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト」および「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル」で使っている英文はすべて、Native English Speakerと協同で製作したものです。安心して、Native English Speakerの自然な英語を知り、習得してください。

【本文】

「夏の福岡市の工作展に出品するのは、こい君のモーターボートにすると決めたぞ」
 教壇に立った柳瀬がクラスの生徒を前にしてそう言うといっせいに「え~」「いやだぁ」「なんでぇ」という声が教室に木霊(こだま)しました。
 ぼんやりと教室の窓から入道雲を見ていた当のこいちゃんは、自分の名前が呼ばれたのを聞いてあわてて教室に目線を戻します。クラス中の目が自分に向けられているのに気が付くと、きょろきょろとみんなを見回したあと首を傾げ、柳瀬に視線を移しました。ちょっと現実から離れがちな子なのです。そのぶん、呆けたように見えます。まぁ、実際呆けているのかもしれませんが。

「柳瀬先生、なんでこいちゃんのボートなんですか?」
 大人びたクラスのリーダー格の女の子が手をあげると柳瀬にそう突っかかります。
「そうたい、あんなもの、誰でも思いつく」
「おれでん、作れるばい」
 尻馬に乗った男子がいっせいに不満を漏らしました。

 どうやら自分が受け入れられていないということに気付き、こいちゃんは下を向きました。
 学校に持ってこなきゃよかったとこいちゃんは思います。
 一人で家や川で愉しめれば十分だったのに。なにも夏の自由工作として出さなくてもよかった。面倒だなぁ。
 小4のこいちゃんが夏休みに作ったのは、バルサ材でできたモーターボードでした。平底ではありましたが、きちんと舳先やコクピットもあり、船内にのせた乾電池とモーターでスクリューをまわして走ります。舵もついていて、舵に巧く角度をつけることで、水面を丸く走ることもできるのです。でも、確かに思いつくと言われれば、誰にでも思いつく工作です。
「みんなも言っています。あんな、ちょっと考えれば誰でも思いつくものを、市の工作展に出さないでください。はずかしか」
 周囲の声に力を貰ったリーダー格の女の子が柳瀬にさらに強く迫ります。また、教室の声が高くなりました。

 下を向きながら、ああ、早くこの話が終わらないかなと思ったとき、こいは柳瀬の意外な言葉を耳にしました。
「先生は情けなかぁ」
 せんせいではなく、しぇんしぇいと聞こえる発音で柳瀬は始めました。福岡のような田舎では、サ行が訛るのです。
「お前ら『コロンブスの卵』の話ば知っとぉとね」
 高かった教室の声がすっと低くなりました。
「アメリカ大陸ばぁ、発見したコロンブスは、帰ってきてみんなに言われたったい。ただ西へ行けば誰でも大陸ば見つけられる、お前は大したことしとらんって。そう言われたコロンブスは、この卵を立ててみろって言い返したんよ」
 柳瀬は静かになった教室を見まわすと、口火を切った女の子に尋ねました。
「岡村は、どうする?」
「卵は立たんよ。馬鹿馬鹿しか」
「そうや。誰れん立てられんかったったい。でも、コロンブスは立てられた」
「うそばい」
 岡村の口から思わず言葉がでました。
「コロンブスは卵の尻を割って立てたったい」
「え~」
「ずるいぃ」
「そんなんでよかとね」
 ひとしきり子供たちの騒ぎがおさまるのを待って、柳瀬は言いました。
「こいのモーターボートは、今から見るとそんなのは簡単だとか、誰でも思いつくと思うかもしれん。でも、なんで思いつかんかったとや? 他のもんは?」
「おれ、思いついてた」
 お調子者の男の子が前のほうの席でつぶやいた。
「芝田、じゃあ、なんで、お前、作らんかった?」
 柳瀬が鋭く切り込みます。声は穏やかですが、冗談では済まさないという迫力がその言葉にはありました。実は柳瀬の心の中では怒りが荒れ狂っているのです。お調子者なのに、男の子が下を向いてしまいました。
「よかか、あとから見て『そんなもの思いつく』やら『誰にでもできる』言うたらいかん。そういうのは『やっかみ』じゃ、最低や」

「昔っから徳さんは、変わったこと思いつく人間なんだねぇ」
 Didoがあきれたように、徳田に言う。
「そんなに変わったこととは思わないけどね。バルサ材で舟を作って、それにモーターとスクリューを乗せたら動くなぁっと思っただけだよ」
「でも、バルサ材って水に弱いじゃん。水が滲みて沈没するとは思わなかったの?」
「ああ、それはペンキを塗ればいいじゃん。綺麗にもなるしね」
「なるほどね。じゃあ沈まないか」
 Didoは感心して、肯いた。
「だからさ、Didoの言うように子供のオリジナリティをつぶす先生ばっかりじゃないんだよ」
 徳田が話を戻す。Didoが、昔、小学校のALTをやっていた時、生徒たちの自由工作を「あれに、似ている」「これの真似だ」と評する先生ばかりだったという話をしてきたので、徳田は子供の頃そういうことがあったという話を返したところだった。
「おっ、面白い発想だなと思ってそれを守ってくれる人はいるよ、たまにはね」
「でも、そういう人が少なすぎる気がするなぁ」

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