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英語のそこのところ 第8回 シニフィアンはいろいろあっていい
著者 徳田孝一郎
イラストレーター 大橋啓子
「現代哲学って何を勉強するの?」
この間レッスンを始めた受講生の方に訊かれて困った質問です。なかなか、一言で答えにくい質問でして。。。
私は初めてお客様にお会いする際のコンサルティングを、お見合いみたいなものだと考えていて、私のご提供できるレッスンとお客様のお求めのものが合致しないとレッスンをお受けしないんですが、そのために初めてお会いした時にいろいろとお話を聞き、また、お尋ねいただくということをします。
「好きな食べ物は何ですか?」
「お休みの日は何をしているのですか?」
って感じです。
まあ、それは冗談だけれども、「ご趣味は何ですか」とか「大学の専攻は?」ということは聞かれたり、聞いたりします。趣味や専攻に関して知っておきたいのは、興味のある方面の英語から入ったほうが憶えやすいから。
以前の受講生の方で、イチローの大ファンで、英会話はイチローを応援に行くために始めたという方がいましたが、そういう方にはMLBのニュースサイトを教材に英語を習得していただきました。好きこそものの上手なれではないですが、3か月ほどでみるみる力をつけていかれました。最後には私の知らない野球のスラングまで憶えておられて舌を巻いた覚えがあります。
それはともかく、私は私立大学の法学部法律学科卒なのですが、じつは刑法や民法を研究してません。なんだ遊んでばかりいたなと思われるかもしれませんが、ゼミ名は法社会学です(遊んでいたのは事実ですが)。でも、そういっても判りにくいので「現代哲学」と言っています。ゼミを担当してくださった教授が中村雄二郎先生だったためです。日本ではあまり知られていませんが、日本人哲学者として欧米で有名な方です。知らぬうちにフランスのストラスブール大学の教授になられていて、後で教授の著作物でそれを知ったときは驚きました。少しは教えてくれてもいいのに。
というわけで、第一線の哲学者のゼミで勉強させていただけたのは私の人生にとってものすごい幸運だったのですが、そのかわりきつかったですね。
ほかの大学の哲学科の方と話す機会があったのですが、そのゼミはひたすら哲学書の原書を訳して意味を解釈するというものだったそうです。ねえ、それって面白い? と聞きたくなるわけですが、それは仕方ないですね。哲学科の先生は、哲学の解釈者なわけですから。当然同じ事を学生に求める。
で、教授は、哲学者なので、同じことを私たち学生にも求められるのです。
なにかの借り物ではない自分の考えを持ってないと相手にされません。しかも、その前提として現代思想の主要な本は読んどかなきゃならない。高校生ぐらいから哲学書はだいぶ読んでいたんですが、それでも間に合わないので、ゼミの2年間は必死で哲学書をバイト先のバーで読んでいました(苦笑)。
一番困るのは、教授がほろっと洩らされる言葉がわからないことです。うまくやり取りできなくなる。もちろん、教授はこちらがわかってないなと思うと言いかえてくれるんですが、それだって限度があります。
「エポケー」(ポケモンではありません)
「ホメオスタシス」「トランジスタシス」(ラジオの一種ではない)
「メメント・モリ」(森英恵の新たなブランドではありません)
「パテマーター・マテマーター」(鶏レバーのパテの料理名ではありません)
なんて言葉を必死で理解したのもこのころです。
前振りが長くなってしまいましたが、そのなかで、へぇっと思ったのが、「シニフィエ」「シニフィアン」という言葉です。言語学用語なんですが、「シニフィエ」が、イメージや概念、意味内容を示し、「シニフィアン」が、文字や音のことを示します。
例えば、ネコ という文字や音は「シニフィアン」。そこから呼び起される(そう、まさにあなたが頭にイメージしたもの)が「シニフィエ」です。もちろん、反対の流れもあって、道を歩いていたら目の前を横切って行ったあの黒い四足の動物(イラストレーターの大橋さん、助けてください!)が、「シニフィエ」、それを見て口にした「くろねこ」「キャット」という音や書いた「黒猫」”CAT” という文字が、「シニフィアン」というわけです。
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で、なんで、こんなことを話し始めたかというと、日本人ってどうしても「シニフィエ」に対応する「シニフィアン」が一つだと思いがちなんですね。
え、ひとつじゃないの? と思った方、かなり日本人ですねぇ、きらいじゃないです。
これは、英語の時制をお伝えする際によく感じるんですが(やっと英語の話になってきました。ほっ)、よくこの状況ならどの時制で書くのが正しいんですか? と訊かれます。でも、実はいろいろな時制で書くことができる。
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