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第30回 あるものは使わないとね

著者 徳田孝一郎
イラストレーター 大橋啓子

【前書き】

 今回、投稿するエッセイは2014年6月5日に水戸市の「文化問屋みかど商会」にてファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。COVID-19下でも海外の方にチャットなどで連絡を取ることはあるかと思います。そういう時に参考にしていただければ、幸いです(著者)。

拙著「英語の国の兵衛門」のkindle版を出版しました。

2008年に株式会社メディア・ポートより上梓され、その後同社の解散により入手不可能になり、みなさんにはご迷惑をおかけしておりましたが、kindle という形で復活させることが出来ました。
これを機にぜひお手に取ってみてください。

【受講生募集のお知らせ】

徳田孝一郎の主宰する英会話・英語スクール「英語・直観力」では、確実に英語力・英会話力を向上させたい受講生を募集しております。
中学生から社会人まで、受験英語・TOEIC・英会話、すべての英語のお悩みに対応可能です(レッスンはSkype・zoonなどで行いますので、安全です)。ご興味がございましたら、eisoco@eigoryoku-appu.comからお問い合わせください。

【指導実績】

<TOEIC>
大手電機メーカーSのグループレッスンをプロデュースし、2か月で100点以上のスコア伸長を達成。また、徳田の直接の指導では、平均120点以上のスコアアップを達成しています。
スコアアップ例
490⇒705、215点のスコアアップ(60分講義8回の受講)
215⇒620、405点のスコアアップ(60分講義12回の受講)

【本文】

 わたしの周りには、アイディアパーソンというか、一風ちがったというか、ものごとを自分で考えようという人が多くて、会うたびにへぇそんなことを思うんだとか、そういう風に考えるんだと感心させられることが多々あります。
 わたしなんかは、日がな一日、お話作りや受講生のスキルアップのことばかり考えていて、こうしたほうが劇的になるなとか、あそこでちょっとあそびを入れないと読んでてツライなとか、あの人、もう少し繰り返してフレーム練習しないと身につかないな、なんてことばかり考えているわけですが、みなさんはちゃんと社会に貢献することを考えておられて、本当に頭が下がります。

 そんな友人の一人とこの間、呑んだんですが、この友人がすごいんです。
 四則計算の新しい方法を自分で編み出しちゃった。しかも、普通のやり方の約半分の時間で計算ができるやり方なんです。
 わたしも試しにやってみようということで、97×28の掛け算をやったのですが、ちょっと驚きました。なにが驚いたって、わたし、一番初めにやる九九の8×7が出てこない(泪)。お酒もビールを1パイント呑んだだけなので酔っぱらってはいないのに「56」という数字が出てこないんです。

 わたしが動かなくなったので、暗算でもしてるのかと思った彼がもういいですか? と言ってきてくれたのですが、いいも悪いもありません。正直に「『ハチシチ』が出なくて」というと、「それは、新しい計算のやり方以前の問題ですね」と驚くやらあきれるやら。せっかくの画期的な計算のやり方もおじゃんです
 まったくもって能力というのは使わないと錆びつくのだなぁと実感します。
 え? またまた、本当はもともと数学は不得意だったんじゃないの? という笑い混じりのお声が聞こえてきましたが、いえ、そんなことはありません。たぶん……。なんといっても、数学が一番好きな科目だったんですから(好きでも不得意かもしれませんが(笑))。

 数学の好きなところは、問題を解くことできっちり答えが出てくることでした。その点では、国語は問題を解いたときに、特に記述式の問題だったりすると○か×か判らない。答案で△なんてつけられたりもするんですが、これがまた微妙でおれは理解できているのかできていないのか不安になる。身体的理由で理系に進むことができないと判った後で、国語の記述式問題を徹底的に勉強して、国語の問題にも、正解と部分正解と不正解という境界は明瞭にあるのだと判りましたが、中学生の時はそんなことも判らず国語はおいといて、きっちり答えの出る科目ばかりを勉強していました。
 そんなわたしが中学生に英語を教えなければならなくなった時に思ったのは、あの答えがすっきり出てくる感を英語でも味わえないかなぁという事です。
 まあ、それで思いつくのは英文作成をするという事だったんですが、実はこれにも限界があって、日本語がどうしても一つの英文を導けないということがあります。
 大きなところでは「カギなくしちゃったよ」みたいなVed ともhave + pp ともとれる文。ただ、これは条件付けを厳しくすれば、回避できる。「昨日、カギなくしちゃったよ」とすれば必ずVed を使わねばなりません。でも、一方でどんなに条件を付けてもどうしても、二つの英単語を導き出してしまう日本語があります。
 その代表的なものは「それ」
「それ」って、読んだ時にみなさんは、どの単語を思い出されます?
 that? it? それとも、the?
 まあ、the は「その」なのでちょっと違いますが、「それ」を英語にするときは、that にもit にもなりえます。でも、かつて教えていた受験英語のレベルではこのあたりはグレイゾーンでこれまた、12話13話21話などで扱った冠詞と同じくわたしがうっちゃった類のものでした。
 ほんとに、当時の生徒たちに申し訳ない。
 ということで、今回は、反省と冷や汗の回。ちょっとお付き合いください。

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