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英語のそこのところ 第12回 「数えられない」の意味するもの

著者 徳田孝一郎
イラストレーター 大橋啓子

 何度かいろいろなところで書かせていただいていますが、私は英語が好きだったわけでもないのに英語を教えさせていただいたり、英語教材の編集者をやらせていただいたり、英語をネタにしたエンターテイメント小説やこのエッセイを書かせていただいたりしています。

 英語大好き! という方もいるのに、英語があまり好きでない私がこんなことを書かせていただいているのは、本当に申し訳ないところで、星の巡りというか、偶然の積み重ねというか、人生なにが起こるかわからないというのは日々実感するところだったりします。

 その何が起こるかわからないというものの中でも、こんなことが起こるものだなぁと思ったのが、以前勤めていた英会話スクールのメンバーズホームページで連載していた英文法ネタのギャク小説があれよあれよという間に本(英語の国の兵衛門)になってしまったことでしょうか。
 これは、本当にあれよあれよで、知り合いのカメラマンの方にこんなのを書いてるんですよ、と話したところ、いつの間にか本にしたいという出版社の社長が現れ(本になりますか? というレベルではなくいきなりいつごろまでに原稿ができますか? という話には面喰いました)、原稿が足りないからこの3倍書いてくれ、もっと英文の演習問題を入れたいから問題はこの5倍にしてくれと無理難題を吹っ掛けられ、本文が面白ければ、それでいいじゃないですか? と身の程知らずの生意気な口ごたえをすると
「(読者には)サービス、サービスぅ」と変な叱咤を受けて上梓したものです。

 で、上梓すると、売れ行きがいいので第2弾を出したいというお話(東大の生協でよく売れたそうです)。今度の内容としてはもっと英語のテキストブックっぽいものをということだったので、私の作ったオリジナルテキストをお見せすると、これも本にしましょう! とのこと。うれしいはうれしいのですが、テキストとなると特にミスは出せないので、Native English Speakerと英文チェックを始めることになりました。

 もちろん、それまでにも、Native English Speakerとオリジナルテキストのチェックはしていたのですが、それは主に時制や助動詞、準動詞(不定詞、動名詞、分詞のことです)といった英文作成の中心になる部分。今回はもっと細かいところまで見なければならないということになり、これは本当に時間がかかりました。だって、この単語に対して、a なのか、the なのか、いやそれとも何もつけないのか? ということや、前置詞は、on なのかwith なのか、じゃあabout ではいけないのか? なんてことを延々とNative English Speakerとやり合うのです。1文のチェックに2時間かかったこともあります。
 そんなときには、もう大変です。出版社の方には悪いですが、原稿は全然上がりません(笑)

 例えば、こんなことがありました。

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