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【メンバーの日記】最近観た映画②

お久しぶりです。一橋大学地歴同好会アインズです。今回は、最近観た映画をその作品の舞台になった時代ごとに並べて紹介する「最近観た映画」シリーズ・第2弾!古代ローマから18世紀初頭までをまとめたその①はこちらです。オススメの映画を沢山書いたので是非読んでみてください!

その①から既に2か月半以上が経ち、「最近」の概念を見失いつつありますが、そんなことは気にしない。今回はロシア革命あたりまでを描いた作品を紹介します(たまにドラマの紹介も混ざります)。

18世紀半ば 清 北京 
総再生回数180億回!! 『瓔珞(エイラク)~紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃~』(2018 中国) ※ドラマシリーズ

清朝最盛期、乾隆帝時代の紫禁城で、刺繍工房の女官から皇帝の妃に上り詰めた実在の女性がモデルの大作ドラマです。後宮で謎の死を遂げた姉の無念を晴らすため、主人公エイラクは事件を探り、真犯人を見つけ出します。
とにかく衣装やセットが豪華絢爛!宮殿内のちょっとした湯呑や扇子にも美しい模様が描かれ、窓や壁の格子の細かい部分に意匠が光ります。さらに、衣装は刺繍の一つ一つを虫眼鏡で観察したくなるくらい美しく、髪飾りは芸術品です。
とてつもなく評価が高いので入試の二次試験が終わった翌日からTSUTAYAでDVDを借りちゃいました。


1815年から1832年 パリ
戦う者の歌が聞こえるか 『レミゼラブル』(2012 イギリス)

世界一有名と言っても過言ではないミュージカルの映画化作品、原作は1862年にヴィクトルユゴーによって発表された同名小説です。
貧しいジャンバルジャンは、パン一つを盗んだ罪がきっかけで監獄に送られ十数年も苦しみます。しかし、ある司教に出会ったことで荒んだ心を捨て生まれ変わり、やがて不幸な美女ファンテーヌとその娘を救うために奮闘します。行く手を阻むジャベール警部、革命に燃える学生たち、様々な人物の人生が交わり、壮大な物語が繰り広げられます。
帝国劇場で舞台版の再演もされそうな予感です。


1870年代 アメリカ大陸 西部開拓時代
『大草原の小さな家シーズン1』※ドラマシリーズ

1973年に制作が始まったこのドラマは、開拓地に住むある小さな家族のあたたかく、たくましい日常を色彩豊かに描きます。ドラマの魅力は何と言っても脚本の素晴らしさ!! 先住民迫害、黒人差別、虐待、感染症、アルコール依存と現代に続く重いテーマを扱いながら、家族の暖かさや友情でそれらを包み込み、毎話、1本の映画を観たような満足感が味わえます。
シーズン1のオススメは、原因不明の感染症を描いた19話、アルコール依存と虐待がテーマの20話、先住民の歴史を扱った22話に加えて、衝撃的な展開の4話、感動の神回14話、唇の乾燥っぷりが凄まじい21話、そして最終回です。なかなかハードな回もありますが、荒んだ心にしみわたる名作ドラマです。


19世紀前半 ヴィクトリア時代イギリス 
昔くもんの英語でやったわこの話 『オリバー!』(1968 イギリス・アメリカ)

「クリスマス・キャロル」で知られるヴィクトリア時代の作家ディケンズの作品をミュージカル化した映画。孤児オリバーがロンドンのスリ集団(おじいさん一人と沢山の子供たち)に出会い、成長する物語です。ミュージカルとしての完成度がとても高く、名曲・名演出揃いでした!アカデミー賞6部門は強い。
この映画で注目すべきは、ヴィクトリア時代のイギリスの、最下層(孤児、浮浪児、スリ)、中層階級(孤児院長や葬儀屋、警察など)、そして上流階級の暮らしぶりを同時に見ることができる点です。非人間的な扱いをされる孤児院でオリバーがお粥のおかわりを求めるシーンは当時の社会体制への批判を込めた作中最も有名なシーンです。ヴィクトリア時代は大英帝国最盛期。ティータイムやシャーロックホームズなど、多くのイギリス文化が数多く育まれた一方、公害や児童労働など社会問題が深刻だった時代でもあります。

ちなみに、世界史だとこの時代でマルサスの『人口論』という本を覚えると思いますが、その内容+ヴィクトリア朝の社会背景+クリミア戦争を漫画でまとめた『講談社まんが学術文庫 人口論』がめちゃめちゃ分かりやすいし面白いのでおススメです。


19世紀後半 イタリア統一戦争期 シチリア島
イタリア貴族の滅びの美学 『山猫』(1963年 イタリア・フランス)

19世紀半ば、イタリア統一戦争の影響を受ける貴族の生き様を描いた大作映画です。主人公は名門貴族の公爵、イタリア統一という新時代を受け入れつつも、自らは斜陽の貴族文化と運命を共にする渋いおじ様です。貴族の終わりを目の前にした公爵の心情に寄り添います。

舞台となったシチリアは紀元前から、カルタゴ、ギリシア、ローマ、イスラーム、ノルマン、神聖ローマ、スペイン、そしてフランスのブルボン家、と次々に支配者が変わりました。その途方もない歴史こそがシチリアを疲弊させ、そのシチリアで生きる貴族を疲弊させ、新しい時代に合流する前に永遠の眠りにつこうとする公爵の郷愁を育んだのかもしれません。ガリバルディの赤シャツ隊進軍シーンが印象的でした。イタリア統一戦争を描いた作品自体初めてで興味深かったです。さらに、監督自身が貴族の出ということもあり、衣装、内装、何もかもが本物で豪華絢爛。カメラワークや照明(自然光とろうそくしか使っていないらしい)も全て計算され、すんごい映画でした。


19世紀末 バイエルン王国
欧州で最も美しいメルヘン王 『ルートヴィヒ 完全復刻版』(1973 イタリア、フランス、西ドイツ)

ルートヴィヒ2世はバイエルン(ドイツ南部)の国王。ドイツ統一のため欧州情勢がきな臭くなる一方、彼は芸術、とりわけ作曲家ワーグナーに傾倒し、美の追求なのか現実逃避なのかメルヘン趣味な城を建て(これがシンデレラ城のモデルとも言われるノイシュバンシュタイン城)、最期は精神を病んで城のそばの湖で不可解な死を遂げます。
孤独なルートヴィヒが唯一心を開いたのが、親戚のお姉さんエリーザベト(劇中表記)。あの有名な、オーストリア皇后エリザベートです。演じる女優さんの圧倒的オーラと気品、そしてそのウエストの細さ!から、画面に映った瞬間にエリザベートだと分かったくらいハマり役でした。両者とも歴史が美形と判断した人物ですが、親戚だったと知って納得。互いを唯一の理解者だと考えていた二人、映画でも美形すぎてどこを切り取っても完成されていました。
さて、ルートヴィヒが建てたノイシュバンシュタイン城は今やドイツ有数の観光地です。過去訪れた母曰く、「とにかく豪華で芸術的だけど、どこか病的」。まさしくこの映画のようです。


1905年~1925年 ロシア 
皇帝として父として 『ニコライとアレクサンドラ』(1971 アメリカ・イギリス)

ロシア帝国の最後の皇帝ニコライ2世と皇后の物語。即位から革命で宮殿を追われ一家が処刑されるまでの過程を追います。皇帝として判断を迫られるシーンと父として温かい笑顔を見せるシーンが交互に描かれ、ニコライ2世の人物像を多面的に描いていました。皇帝自身は極悪人というわけではないのに、民衆からしたら許せないし、こりゃ革命もやむを得ず、と思わせる隙のない脚本でした。
映画の見所は各登場人物の再現度の高さです。ニコライ2世はもちろん、ラスプーチン(目だけ異様にギラギラ光っていてオーラが凄い!)、レーニン、トロツキー、スターリン皆一目で誰か分かります。その他にウィッテ、ケレンスキー、ストルイピンなど、「習ったなあそんな人」みたいなメンバーも揃ってて、全員集合感が良い!血の日曜日事件やサラエボ事件といった出来事も教科書の絵や写真をそのまま映像にしたかのようなリアルさで、「全ての権力をソビエトへ」という聞き覚えのあるセリフも登場します(予告3分20秒あたり)。ロシア史振り返りたい人にもお勧めです。本編が全て英語なのも逆に好きですよ。


19世紀末~20世紀 ロシア、ソ連 
名作・名曲 『ドクトルジバゴ』 (1965 アメリカ・イタリア)

ロシア革命に翻弄される一人の若い医者、ユーリ・ジバゴの人生にフォーカスしながら、ロシア激動の時代を描き出した大作映画です。周りの大人が「ロシア革命と言えばこの映画」「一番好き」と推していたので見ました。
前述の「ニコライとアレクサンドラ」が時代を動かした人々の物語だとしたら、この映画は時代に動かされた一人一人の個人に焦点を当てた物語です。主人公も、ヒロインも、主人公の妻も家族も、とにかく登場人物全員が革命や戦争、独裁・大粛清の影響を受け、家を失くしたり故郷から追い出されたり離ればなれになったりと試練ばかり。しかし、現実にも同じように人生を振り回された人は沢山いたのでしょう。ロシア革命、ソ連の実情を示したこの作品、原作は当のソ連ではもちろん発禁、映画もソ連崩壊まで公開されることはありませんでした。


今回の記事は以上となります。最後まで読んでいただきありがとうございました。次回はいよいよ、二つの世界大戦をテーマにした映画の紹介となります。更新頑張ります。お楽しみに☆

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