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【会員の日記】最近観た映画①

お久しぶりです。すっかり更新が遅くなってしまいました。1期会計の人です。
テーマは最近観た映画です。受験終わりの三月から夏休みに至るまで、沢山の映画やドラマを観たので、それを振り返っていきたいと思います。また、世界史同好会ということで、それぞれの映画の舞台となった年代順で作品を並べてみます!必ずしも世界史と関係ある作品ばかりというわけではありませんが、可能な範囲で年代順にしてみました。
気になった作品がありましたら予告編なども参考にして、是非映画を見てみてください!


60年代 ネロ帝時代のローマ                       ネロのキリスト教迫害『クォ・ヴァディス』(1951・アメリカ)      

多神教のローマで、キリスト教が強い迫害を受けていた時代を圧倒的スケールで描く、一大スペクタクル映画です。
ネロと言えばローマの大火が有名ですが、この作品のネロも新しい都をつくるために既存のローマの街に火を放ち、それをキリスト教信者の罪にしています。ちょうど70年前の映画ですが、カラーで映像にも迫力があります。予告に登場する魚のようなマークはキリスト教のシンボルで、信仰を公にできない信者が使ったそうです。


父の代わりに男装して軍隊へ 『ムーラン』(1998 アメリカ)       舞台は中国。北方民族の侵略に備え、国中の男たちが徴兵されます。ムーランは病を患う父に戦争へ行かないよう懇願しますが受け入れてもらえず、父の召集令状を奪い、男装して家を飛び出します。リンク先の予告編がカッコよすぎて私の語彙力がついて行かないのですが、冒頭で万里の長城に次々と敵が登ってくる場面や、雪山戦闘シーンの迫力は素晴らしいです。アクション映画として普通にめちゃめちゃ面白いです。知名度が低いのが勿体ない。20世紀の終わり、ジェンダー固定観念に疑問を投げかけ、その後のディズニーヒロイン像を転換させた名作です。歴史に忠実であるかは置いといて…。


130年代 五賢帝時代のローマ(と、現代日本) 
全ての風呂はローマに通ず『テルマエ・ロマエ』(2012・日本)               
映画もヒットしましたが、私は原作漫画から入りました。もし映画しか見たことが無い方がいたら、是非漫画の方も読んでみてください。私はちょくちょく登場してさりげなく主人公をアシストするマルクス・アウレリウス・アントニヌスが好きです。(残念ながら映画には登場しない) 作中ではまだ10代ですが、流石はのちの哲人皇帝と思える聡明さが伺えます。一方で実際の治世は災害・疫病・蛮族の侵入とトラブルが絶えず、おまけに共同皇帝はぼんくら、と苦労続きだったので、是非お風呂に入って日々の疲れを癒してほしいといつも思います。もう映画全く関係ないね。あなたの推しローマ皇帝は誰ですか? 


180年~190年ごろ ローマ
遣唐使じゃないよ『グラディエーター』(2000年・アメリカ)       

前述のマルクス・アウレリウス治世の晩年から物語は始まります。次期皇帝をめぐるいざこざに巻き込まれた主人公は、マルクス帝の息子コンモドゥスに妻子を殺され自身も奴隷である剣闘士(=グラディエーター)に身分を落とされます。自身の妻子、そして父のように慕ったマルクス帝を殺した新皇帝コンモドゥスに復讐を挑む主人公の生き様がかっこいい。

コンモドゥス帝は歴史上ネロとならぶ悪帝とされ、父マルクス帝の最大の失敗は後継者選びだと言われるほどです。父を殺して皇帝になるというのはこの映画のオリジナルで、後継者選びの経緯には様々な議論があります。ちなみにそのコンモドゥス役はのちに『ジョーカー』で世界を圧倒したホアキン・フェニックス。臆病な自尊心と尊大な羞恥心をこじらせた孤独な若き皇帝を見事に演じています。


400年ごろ ローマ帝国支配下のエジプト
本を焼く者はやがて人も焼く『アレクサンドリア』(2009・スペイン)   

キリスト教が国教化してからおよそ10年、科学を否定する信者たちに殺害された実在の女性天文学者ヒュパティアが主人公の映画です。ヒュパティアは大図書館を備えた学術都市アレクサンドリアで天動説に疑問を持ち、真実を明らかにするため研究を進めます。しかしキリスト教信者にとってその研究は神への冒涜でした。
多くの人がヒュパティアを慕い、敵視しますが、そんなものに影響されず己を貫く彼女の生き方はとても素敵です。ヒュパティアの生涯が終わるころ、自然科学が非常に発達した古代という時代もまた終わりに差し掛かり、後に暗黒時代とも呼ばれた中世がやってくるのです。


1185年ごろ エルサレム王国
サラディンと癩王の威厳『キングダムオブヘブン』(2005・アメリカ)    

主人公はフランスのある村の鍛冶屋でしたが、エルサレム王国(十字軍が建てた国家)の偉い人が実の父親だったと判明してエルサレムへ渡ります。父の跡を継ぎ、聖地を守るためにイスラム勢力と戦います。

物語のポイントはエルサレム王国のボードゥアン4世と敵のサラディン、二人の名君ぶりでしょう。後者のサラディンは異教徒への寛大さから世界史の教科書にも登場しますが、ボードゥアン4世も偉大でした。不治の皮膚病を患いながらも(映画では仮面をつけている)その聡明さでエルサレムの平和を守る若き王です。二人とも器が大きい!宗教的対立からあわや戦争という段階になっても、君主の二人は互いを尊重し対話で平和を維持します。サラディンが自分付きの医者をボードゥアン4世に送ろうと約束するシーンとかカッコよすぎ。

正直十字軍って動機も曖昧だし後半迷走するしなんだかなあ、と思っていたのですが、騎士としての矜持を貫こうとした主人公らの思いが伝わり、印象が変わりました。ボードゥアン4世知れて良かった。そういえば先日、900年前の十字軍のものと思われる剣がイスラエル沖から発見されたそうです!ロマンがありますね。


1327年 北イタリア
修道院×ミステリー『薔薇の名前』(1986 フランス・西ドイツ・イタリア)
 

北イタリアの修道院で連続殺人事件が起こります。修道院のあちこちから被害者が残した暗号や手がかりが出てきて、ショーンコネリー演じる修道士ウィリアムがそれを一つずつ解き明かしていく様子はホームズさながらです。
映像からは修道院の荘厳さや町の貧民の衛生状態が伺え、月並みの表現ですが中世にタイムスリップしたように思えます。個人的には写本作成など修道士の仕事が興味深かったです。
物語のテーマとなるのは、異端・禁書。アリストテレスなど優れた文献でも、カトリックの教義に反するものを封じ込めなければならないこの時代の窮屈さを感じました。全体的に画面が暗くおどろおどろしい反面、厳かな修道院の空気を感じられます。また、炙り出しや秘密の通路など暗号解読場面はワクワクしました。


1430年ごろ フランス
神のお告げ?妄想? 『ジャンヌダルク』(1999) 
           イギリスとの百年戦争で追い詰められたフランスを救った少女、ジャンヌダルクの人生を描きます。本作はジャンヌのヒステリックで攻撃的な面と自己への激しい葛藤を描き、ただの悲劇のヒロインでは終わらせていません。さらにこの映画は、ジャンヌは本当に神の声を聞いたのか、という点にかなり鋭く切り込んでいます。前半の神秘的な場面を「ジャンヌの良心」が一つづつ壊していく物語終盤はとても引き込まれました。超常現象チックな旧来のジャンヌ像にあまり共感できなかった自分にはとても納得いく解釈でした。主演はバイオハザードでおなじみのミラ・ジョヴォヴィッチです。


14世紀~15世紀 北イタリア ヴェローナ
一番好きな映画。『ロミオとジュリエット』(1968 イギリス・イタリア)                                  
中世のイタリアはローマ教皇派(ゲルフ)と神聖ローマ皇帝派(ギベリン)で対立しており、この作品も家同士が対立していた恋人がモデルになっています。

ロミオとジュリエットは今まで数え切れないほど映像化されてきましたが、私は1968年版が一番好きです。主人公二人の役者さんがとても瑞々しく、特にジュリエット役のオリビアハッセーはまさに薔薇より美しいです(布施明さんと元夫婦らしい)。また、衣装や建物、路地などが凝っていて、何気ないシーンがとても絵になります。そしてニーノ・ロータの音楽は映画史に残る名曲です。羽生結弦選手がソチ五輪で金メダルを獲得したときのFPもこの映画の曲でした。
シェイクスピアの原作にとても忠実で、現代の価値観に当てはめるとツッコミどころのあるシーンも多いのですが、そんなものを忘れるほどとにかく美しい映画です。


1607年 大航海時代 アメリカ大陸 
軽々しく語れないディズニーの挑戦作『ポカホンタス』(1995 アメリカ)  

1607年、英国から「新世界」を求める冒険家たちの船が出航しました。彼らの侵略行為に対し先住民との争いが激化する中で、先住民の娘ポカホンタスは英国人ジョンスミスと出会い心を通わせます。ディズニー史上初、実在の人物をモデルにした作品です。ファンタジー要素もあり学術的な歴史映画では無いのですが、それでも入植者と先住民の関係が史実と異なるということで人権団体からの抗議がありました。史実が都合よく美化されすぎているのです。

脚本やキャラクター表現に問題があったとしても、アニメーションの動き、背景美術、音楽、歌詞、様々な点で秀でた作品だと思います。水色、ピンク、翡翠、オレンジ、黄色、赤紫、真紅、さまざまな色に溢れる独特の自然描写は画面の美しさを際立たせ、壮大な音楽は大航海時代のロマンや深い森の神秘性を体感させてくれます。目に見えない風を髪のなびきや木の葉の舞い方で表現するアニメーションは素晴らしく、ラストシーンはどんな映画よりも美しく切なく荘厳です。音楽でアカデミー賞2部門を獲得しながら、今でも批判や議論が続く異色の映画、是非ご自分の目で確かめてみてください。


18世紀初頭 イングランド王国 
虚像の愛と依存『女王陛下のお気に入り』(2018 イギリス、アイルランド、アメリカ)

タイトルの女王陛下は1702年に即位したイギリスのアン女王を示します。アン女王は生涯で17回も妊娠しましたが、流産や死産もあり誰一人成人できませんでした。今作では、女王は心の傷を埋める存在として17匹のウサギを飼っています。このウサギが物語の鍵となります。
女王の寵愛を求める二人の女性。女王の寵愛をめぐってそれぞれの登場人物の心情が濃密に描かれ、意味深なラストに繋がります。
超広角カメラや屋根裏から部屋を覗くような独特のカットが特徴です。また城のシーンは自然光とロウソクのみ使われ、全体のトーンがまとまっています。少し現代的にアレンジされたドレスもおしゃれでした。何よりメイン三人の演技力が素晴らしかったです。

女優レイチェル・ワイズは、先ほど紹介した『アレクサンドリア』の主演を務めた方で、007ジェームズボンド役の俳優ダニエルクレイグと夫婦です。ラ・ラ・ランドでお馴染みのエマ・ストーンもキャラが濃いです。


18世紀初頭 カリブ海 
『パイレーツオブカリビアン 呪われた海賊たち』(2003 アメリカ)

しっかり面白いです。シリーズいろいろあるけど一作目はマジでエンタメ映画として傑作だと思います。
舞台は18世紀初頭、海賊の黄金時代。当時イギリスの植民地だったジャマイカの港町が海賊船に襲撃されるところから物語が始まります。私はこの映画ではじめて「東インド会社」という単語を知りました。

長い記事をここまで読んでくださりありがとうございました。まだあと300年分くらいあってもうどうしようって感じなのですが、とりあえず一度終わらせます。画像出典


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