ドン・シーゲル【突破口！】｜見事な突破劇

アメリカ映画｜1973年｜111分｜原題：Charley Varrick

元曲芸飛行のパイロットで、今は農薬散布の業者をやっているしがない中年男チャーリーが、若者と組んで銀行強盗をやって金を奪ったものの、予想以上の大金だった。
運の悪いことに、それはマフィアの隠し金だった。
チャーリー達は、マフィアの放った冷酷な殺し屋に追われることになるのだ。
果たして、チャーリー達は、この難局を突破することが出来るのか。
【突破口！】というタイトル通り、まさに突破できるかどうかの映画です。

■用心深い中年男の活劇
ドン・シーゲルの名人芸で、まさに曲芸のような見事な展開で最後まで観せてくれます。
チャーリーを演じるウォルター・マッソーのなんとも言えない顔が、中年男の焦燥感を感じさせるにもかかわらず、極めて冷静にことを進めていくんです。
仲間の若者への「用心しろと言っただろ」という台詞のように用心深いんです。
この用心深さが映画を面白くしています。
マフィアや殺し屋が追い詰めても用心深い、ていうか脚本もまた用心深いのかもしれませんが。
用心深くてしがない中年男の冴え渡る活劇の名人芸です。

■しがない中年男がモテる
そして、予想外でしたが、美女からモテるんです。
金で釣ったのかどうかわかりませんが、モテる。

■善人はいない
この映画は、考えてみたら、善人はほとんどいないんです。
主に犯罪者なんです。
にもかかわらず、丸く収まるという、見事なノワール映画といえます。