自分以外全員男性の職場から考える女性差別

IT系のある分野で働いているが、この職場には自分以外男性しかいない。
別に男性が得意という訳でも、女性が苦手な訳でもない。ただ自分の意の赴くままにキャリアを選択したらこうなっただけだ。

女性の職業と言えば、何を思い浮かべるだろうか。私が思い浮かべるのは、看護師、保育士、栄養士、接客、介護など人に関わる系の仕事全般だ。実際女性に職業を聞くと体感半分以上はそのどれかに属している。

私はその全てがやりたくなかった。
人と関わって感情労働させられたくないし、肉体労働もしたくない。涼しいオフィスでコーヒーを飲みながらお金が稼げる仕事がしたかった。
また、勉強も好きだったので、単調なルーティーン作業ではなく日々頭を使う難しい仕事がやりたかった。それを満たすのはエンジニアしかないと思った。(他にもあるんだろうけど微妙な学歴コネなしで入れるところと言えばITしか思い浮かばなかった。)

入社した時、同期が24人で、そのうち女子は私含め2人だけだった。彼女は営業に行ってしまったので、エンジニアの研修から女子はとうとう一人だけになり、全員男の中で一人研修を受けた。

孤独じゃなかったかと言えば大嘘になる。自分以外の数十人が全員異性というのを想像して欲しい。講師も含めてだ。
ウェイ系で絡んできてくれる男子であればまだ助かったかもしれないが、理系男子はこちらが話しかけない限り基本一切話しかけてくることはない。

健気にも、私は最初のうちとても関係構築を頑張っていた。まずは研修で理解できないところを訪ねる。お礼を言う。さりげなく趣味とか経歴とかを聞いて、会話のきっかけを作る。研修中特に丁寧に教えてくれる人にはお返しでお菓子をあげたり、帰りの方面が同じの人は一緒に帰ったりした。同期飲み会にはちゃんと参加して、どうすれば仲良くなれるのか考え、常に気を遣っていた。

…そして、その努力は特に報われることはなかった。私が頑張って話しかければ答えてはくれるが、逆に彼らが自ら絡んできてくれることは一切なかった。私だけが無闇に彼らの情報を手に入れただけで、彼らは私について何も知ろうとしてくれなかった。どこまで行っても腫れ物扱いで、私抜きで彼らはMTGを行い、slackの鍵付きチャンネルで話し合い、結論を出し、成果を報告し、休日は私抜きで飲み会やBBQをしていたらしかった。

何か聞けば丁寧に教えてくれたりはするしそれに対して感謝はしているが、そういう感謝しているという態度さえ裏目に出た。
ある時同期の一人から「君を研修で手伝ってやったのに感謝が足りないのではないか」というDMが長文で送られてきたこともあった。手伝ってなんて一言も頼んでないし、勝手に私のグループに首を突っ込み、私抜きの同期男だけで協力して勝手にやったことに対して、彼は感謝を要求してきたのだった。

もういいやと思った。こんな奴らと一瞬でも仲良くしようと頑張った私が愚かだったと気づいた。私は何か悪いことをしただろうか。失礼な態度を取っただろうか。絶対にしていないと言いたい。

研修が終わり部署に配属されて、先輩は優しい人が多く丁寧に接してもらえはしたのだが、結局は研修の時と何も変わらないことを実感した。どこまで行っても腫れ物扱いで、上司には何かと理由をつけて隔週の1on1をリスケされた。おそるおそる話しかけるといった感じで、私が何をやりたくて、何に困っているのかろくに聞かず、終始謎の自分語りをされて終わった。全く頼りにならなかった。

一見とても爽やかで親切で人当たりよく見える先輩でさえ、私のことを避けたがっているのがわかった。こちらが話しかけてもギクッとしたような顔をする。口調は淡々としているが、明らかに男性には向けない気まずい視線でこちらを見てくるのが苦痛だった。

私は男性と対等に扱われたいだけだった。対等に仕事を振って欲しかったし、対等に期待されたかった。女性として贔屓されたくなかったし、男性に気に入られるように無料キャバ嬢的な役は絶対に演じたくなかった。男と同じ業務をして、全く同じ扱いをされたかった。頑張らなくていいよではなく頑張れと言われたかった。そんなに贅沢なことを言っているだろうか。

実際、振られた仕事は弱音を吐くことなく全てこなしてきたと思う。私は女性であるというだけでなく、エンジニア同期で唯一の文系出身である。ベースのIT知識が欠如しているので、休日も返上して人一倍勉強した。必須資格も取ったし、中小企業の業務量の多さにも耐え、時には夜22時まで残って働いている。なんなら深夜から朝にかけて14時間作業したりした。それでも弱音は吐かないし、ただの一度だって泣いたことはない。パワハラ先輩にパワハラをかまされようと、逆に嗜めるくらいには強く生きてきた。

誰からも期待されていないからこそ、いい意味で期待を裏切れるように、女性のキャリアを広げられるように、言葉通り死ぬ思いで頑張ってきた。去年は気管支炎になったり、救急車で運ばれたり、謎の体調不良で有給を全部使い切ったりした。
しかしその頑張りは報われることはなかったし、同じ仕事をしていたはずの同期は昇給し私はしていない。理由はわからない。絶対に納得できないので聞くのも嫌だ。

今は、さらに状況は最悪になっている。上司にも同僚にも謙虚にするのをやめ、はっきりものを言うことで嫌われている。最初から好かれることなんかないのだからどうでもいいけれど。良さげな業務も仲良しホモソグループで回していて、私には話が入ってこない。知らないよもう。好きにすればいい。

私が悪いのだろうか。何度も言うけど、絶対に悪くない。この職場の半分が女性だったら私はもっと快適に生きられたに決まっている。
仕事自体は楽しい。日々新しいことを知り、難しいことを考えるのは楽しい。オフィスワークなので疲れないし。女性はただでさえ体調が不安定なのに、なぜオフィスワークではなく体力を使うケア労働ばかりやらされているのだろう。答えは簡単で、この国が女性にそういった仕事を選ばせない仕組みになっているからだ。

受験時に「女の子は数学ができないから」とか「男の子は後で伸びる」とか言われなかっただろうか。「女の子あんまり学歴が高くてもねえw」とか、「手に職をつけろ」とか言われなかっただろうか。女性はコミュニケーションが得意、視野が広い、それに比べて男はコミュニケーションより専門的なことが得意、などとごちゃごちゃごちゃごちゃ、根拠もなくバイアスをかけられてこなかっただろうか。

私に言わせてみれば、こんな仕事の得意不得意に男も女も関係ない。勉強がある程度得意で好奇心さえあれば、こういう難解な仕事にこそいくらでも楽しみを見出せるはずだ。
私より勉強が得意な女子なんていくらでも見てきた。なのに彼女たちはなぜ一人も私の職場にいないのだろう。なぜ職業を聞くと皆看護師や保育士と答えるんだろう?答えは簡単で、ここは女性が一人もいない職場だからである。

私の職場に来て、私のようなつらい思いをして欲しいとは思わない。変わるべきなのは男たちであるとしか思わない。せっかく女性が少数派の中でキャリアの選択肢を広げているところを、自分のくだらない承認欲求で仕事を奪い、迫害するのをやめろと言いたい。脅かされたくないなら圧倒的に実力で勝てばいいだけの話だ、女を下げたって君が上がるわけじゃないのに。

彼女がいるだとか結婚したとか言ってる人ほど、なぜか陰湿である。あなたのパートナーにも通じる話なのに。あいつらがパートナーのキャリアに対してどう思ってるか、考えるだけで虫唾が走る。女性のキャリア妨害したって、結局は回りまわって自分の生きづらさに跳ね返ってくるだけなのに。

…ダーッと書いてしまったけどもう読み返すのも嫌だ。現在進行形で問題を抱えているので毒親問題みたいに自分の中で冷静に消化できている思い出じゃないしきつい。また普通に火曜から仕事は始まるわけだし。
もちろん私の人間性の至らなさも死ぬほど原因としてはある。全部女性差別のせいだと言い切ることはさすがに自分に甘すぎである。実際いい人も多いホワイト企業だし、日々十分すぎるくらいお給料をもらっている。
でも間違いなく、私の言っていることに一つも嘘はないし、認知の歪みを排除しても客観的に見て真実が含まれていると思う。

私はこの先どうなるんだろう。それは私次第なのかもしれないし、私の意志とは関係ないのかもしれない。もしこの労働を苦に自殺したって毒親は私のために訴えたりはしないから、いくらでも追い込んでくれて構わない。その時が来たら私は、これまで頑張ってきて偉かったね。お疲れ様!と、たった一人の味方でいてくれた自分自身の背中を爽やかに叩いてあげるのだ。

おしまい


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