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世界に影響を与えるクリエーションって?

7/5に行われたオンラインウェビナー「社会に影響力を持つクリエーションとは?」で、運営スタッフとして入りつつ世界のトップクリエイター3名のお話を聞いて、私が思ったこと。

世界で影響力をもつクリエーションとは?|スペシャルトークイベント Design Jimoto Conference 2020

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みなさんも一度は目にしたことのあるような作品を作られ、グローバルに活躍されている皆さんのお話を聞いて、一番に私はこう感じた。

クリエーションはただそれだけの「点」ではなく、その前後にある「線」にこそ意味がある
、と。

これについて、本記事の前半ではイベントレポを、後半では私がそう思ったことをまとめていきます。

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「クリエイターが社会に対して声を上げられない状況、おかしくない?」

もともと「Desgin Jimoto」はAdobeのSHIORIさん(ポジティブなエネルギーとグローバルな視野を持っためっちゃ素敵な女性)が立ち上げた、ソーシャルデザインプロジェクト。

"デザインの民主化"を目指し、「ジモト」という名の通り地域やコミュニティの社会課題を、クリエイティビティの力で解決しくためのイベントを主催・運営している。

そして「クリエーション」「デザイン」という本来誰もが持っている能力を、クリエイターやデザイナーだけでなく、普通の人(というと語弊があるけど、美大卒やクリエイティブ職以外の人)にもその力が身について実践できる場を作ろうというのがポイントだ。

そして今回、今年に入ってコロナ・人権問題・政治やメディアの偏り・誹謗中傷…など、本っ当にたくさんのことが起こったなかで、SHIORIさんがある目的を達成するべく、ご友人たちに声をかけてこの特別カンファレンスが立ち上がった。

目的、それは
「人権問題や政治、SNSの誹謗中傷、アーティストやクリエイターが声を上げられない。声を上げると批判される状況はおかしい!」
例えば
…クライアントの目もあり、政治や社会問題の発言ができない
…批判が生まれやすいため、声をあげる活動がしにくい
この状況を少しでも変えるため、クリエイターが社会に声を上げられる道を探るべく、今回立ち上がったイベントなのだ。

テーマは「社会に影響を与えるクリエーション」
これについてお話いただくのは、すでにグローバルで活躍しているクリエイターお三方。
私が日常をただ過ごしていたら人生で絶対に交わらなかっただろう……!

まずはその方々を紹介していきます。
(後半ではトーク詳細も書いています)


▼NY在住イラストレーター 清水裕子さん
Instagram / Website / Behance
(私も今まで知らなくて、私の鼻血がどれだけ出てもイーブンにならないくらいの申し訳なさなのですが)グローバルでめちゃくちゃ有名な、世界中の媒体でご活躍されているイラストレーター!

米国ニューヨーク在住21年のイラストレーター。School of Visual Arts イラスト修士取得後、同校講師。主なクライアントは、Apple、Microsoft、Adobe, The New York Times, Harvard University, DC Comicsなど他多数。クライアントの9割を米国および日本国外に持つ。2009年ニューズウィーク日本版の「世界が尊敬する日本人100」に選ばれる。

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引用:NEWSWEEK cover Twitter TSUNAMI(公式サイト)

アニメーション監督 堤大介さん
Twitter / Instagram
そもそもピクサーに日本人スタッフがいたってことすら私は知らなかったし、71名の世界中のクリエイターの手渡しリレースケッチブックプロジェクトで途上国に図書館を建てたという今まで知らなすぎてやっぱり鼻血が止まらない…。数々の素敵なプロジェクトを手がけている、アニメーション監督!

東京都出身。スクール・オブ・ビジュアル・アーツ卒業。Lucas Learning、Blue Sky Studioなどで『アイスエイジ』や『ロボッツ』などのコンセプトアートを担当。2007年ピクサー入社。アートディレクターとして『トイ・ストーリー3』や『モンスターズ・ユニバーシティ』などを手がけている。2014年7月ピクサーを去り、トンコハウスを設立した。初監督作品短編『ダム・キーパー』は2015年のアカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされる。71人のアーティストが一冊のスケッチブックに絵を描いて、世界中に回したプロジェクト『スケッチトラベル』の発案者でもある。

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リメンバー・ミー(Concept Art for Coco © 1986-2020 DISNEY / PIXAR

ドキュメンタリー監督 伊藤詩織さん
Website
日本では性暴力の事件の印象が強いかもしれないけど、本業は世界中のドキュメンタリーを映像にしているジャーナリストでありクリエイター。

1989年生まれ。ジャーナリスト、ドキュメンタリー映像監督。主に海外メディアで映像ニュースやドキュメンタリーを発信している。国際的メディアコンクールNew York Festivals 2018では制作したドキュメンタリー『Lonely Death』(CNA)と『Racing in Cocaine Valley』(Al Jazeera)が2部門で銀賞を受賞。性暴力被害についてのノンフィクション『Black Box』(文藝春秋社)は本屋大賞ノンフィクション部門にノミネートされる。第7回自由報道協会賞では大賞を受賞し、5ヶ国語で翻訳される。2019年ニューズウィーク日本版の「世界が尊敬する日本人100」に選ばれる。2018年ロンドンにGenderーBased human rights に光を当てるドキュメンタリー制作をモットーにするHANASHI FILMSを共同設立。

大学卒業後に、自分の意思でジャーナリズムの道に進み、自分の目で世界を見て、自分の手で海外メディアへ応募して道を切り開いている。
いま報じられている事件がどうこう以前に、私自身は同年代の女性として、とても生き方に尊敬と共感を覚える。

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ドキュメンタリー映画「COMPLETE WOMAN STORY OF AJAIE


本イベントでは、こちらの方々に「社会に影響を与えるクリエーション」について、お話をいただいた。
キャリアパス・思う哲学・実際のプロジェクト事例…など。

本編はアーカイブ動画が公開できるよう現在鋭意調整中なので、公開の折にはぜひ見てください!
(こんな展開ですみません。こちらのnoteでも随時更新します!)

今回、偽りない真理に近づいたお話で、終わった直後もしばらくじんわり自分のなかで発見できた嬉しさと、希望なのかショックのような感覚を味わった。
そして特に深く心に刻まれたのがこちら。

共通して思ったこと「クリエーションは線ではなくて点」

自分でもスタッフとして作業をしながらメモを取っていたのですが、振り返ってなるほどと思ったことを3人分紹介していきます。

「受け手と対話する」清水裕子さん

Q.社会派メッセージをどうクリエーションで伝えるか?
まずは自分が共感する仕事だけを受ける。
(過去にタバコの仕事は断ったそう)
そして以前引き受けた絵本の仕事では、子供にシリアの内戦や歴史をどの程度までどう伝えていくか取捨選択することは、非常に責任のあることだし、自分にやれることの一つなのだ。

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(イベント中スライドより:絵本 The Cat Man of Aleppo

また何より、言語や文化を超えてビジュアルだけで伝わるようなアイデアを事前のリサーチを重ねて落とし込んでいく。
そしてただ自分が描くだけでなく、受け手と対話になるものに最終的に落とし込むのだ。
これが世界で影響力を持つクリエーションになっていく。

「すぐに人を変えられなくても、好奇心を芽生えさせられる」堤大介さん

Q.なぜ自分はクリエーションをするのか?
キャリアを重ねるなかでWhat(何を作るのか?)から、Why(なぜ作るのか?)という考えに変わった。
その中で見つけた、今の時点の答えがこちら。

映画やストーリーなど、作品自体はすぐに人の意見や価値観を変えられない。でも、それをきっかけに興味を持って自分で調べるなど「人生のキッカケ」を作ることができる。

そして真摯にモノを作るときは、自分自身を隠してもどうしても滲み出てしまうもの。その上で、自分がどこまでストーリーテリングしていくかの、さじ加減で伝えられることは大いにある。

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上記コンセプト図:「トンコハウス(個人プロダクション)は、全ての年代へ、楽しさと気付きのあるストーリーで好奇心を揺らします」

(これもまだ途中なので変わるかもとのこと。こんなにも素晴らしいキャリアをお持ちなのに、探し続けて変わり続ける姿勢がすごい…!)

「その前の文脈と、その後の影響を考える」伊藤詩織さん

Q.ネットに溢れる膨大な情報の中から、正しい情報を得るには?
情報を見た時、
- なぜこの情報を人は発しているのか?
- そして自分がこれをシェアしたときのその先は?
を考えて、記事の前後の文脈を見ること。そして足りなければ情報で補っていくことが大事だ。

また伊藤さんはこれまでも「当事者」を中心とした構成で伝えるため、取り上げるテーマを決める際、その当事者である「人」如何で最終的に決める。テーマや課題がまずあるわけでなく、人。そしてその人と出会うご縁が作品に大きな影響を及ぼすのだ。

(私は人との出会いで作られるこの状態こそが、決して偶然などではなく誰かの強い行動と意思によって紡ぎ出される、究極の社会的ストーリーだと思う)

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いずれの話も、共通して思ったこと

3人の話に共通したこと。

「受け手と対話する」清水さん
「すぐに人を変えられなくても、好奇心を芽生えさせられる」堤さん
「その前の文脈と、その後の影響を考える」伊藤さん

「社会に影響を持つクリエーション」って…

"その時"の情動だけで作られて、
"その時"の受け手の心を動かす、
だけじゃなく…
"その前"に理由があって、

"その後"に見た人が興味を持って行動を起こしたくなるもの。

つまり「点」でなく「線」を紡ぐものだと私は思う。


超絶技巧のまるで売り上げ花火のようなド派手でな作品だって、もちろん技術的な重み・商業的展開・技法の開発など別の価値はあるとは思う。
けど、いったんそれは見せ方の手法の一つで、それ自体が目的である限りは、きっとそれ以上にはならない。だって手段だから。

目に見えるだけのナニかかじゃなくて、
「〜だから私はこれを作った」
そして
「〜〜なのか!私は===だと思う」
とリレーのように、点と点が繋がって線になっていくこと。

そして人の心を動かす最高の技法として「クリエーション」があるのかなと思う。

だから「クリエーション」って、アーティストやデザイナーだけの超特殊スキルではなくて、ゲームキャラのアビリティのように、まるでFFの白魔道士が戦士たちを癒すくらいの感じ、「点を線にして、人に伝染させていく能力」として捉えられるといいのかもしれない。


「点を線にする」
そう捉えてると、むしろ、

「冷蔵庫のあれを今週はどうしよう?」って毎日の献立を考える
「今日1日どういう風に進めよう」って仕事の段取りを決める
っていう、いつものこともクリエーションになり得る。

クリエーションって、本当にもっともーーーっとそこら中にあることなのかもしれない。

そして今回の「社会に影響を与える」ってテーマも、なかなか大きいことに聞こえるけども、毎日の点と線に目を向けてみると、自分でも一歩踏み出して声を上げられることはあるかもしれない。

最後に…私が勇気をもらった言葉

それはこちら。

Q.問題に対して、無力に感じたことは?
− 無力を感じることはあっても、自分だけは見失いたくないと思っている(堤大介さん)

ああ、まさにそうだ。
今回はそんな希望を持ったお話でした!

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


※繰り返しになりますが、イベントの本編は後日アーカイブ公開ができるよう、鋭意調整中になります。
公開され次第、こちらのnoteにも更新していきますので、ぜひお楽しみに!


※そしてDesign Jimotoについてはこちらからもぜひ!


※また私自身が現在有休消化で50日の夏休み中でして、その日々の様子はこちらから。今回もそんな夏休み期間中の出来事でした。



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