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アートの答えは私の中にあった話

映画もマンガも同じものを見ても、その時の状況で思うことは異なる。

「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」展を先日見てきました。
テーマは「サステイナブルな社会を実現するためのシステムのリデザイン」
差し迫る環境問題に気付かせるために、自然の美しさや皮肉などをユニークに具現化した、私たちに環境への気づきを与える展覧会でした。

が、やっぱり美術展って自分が置かれているフェーズや経験によって、感じることって人それぞれ・時々で異なるだろうなと思うのです。

そして結論から言うと、今回の作品は私たちに思考のヒントを与えてくれる装置であり、アートそのものの直接的なメッセージよりも、それをどう考えたかこそが大事だと思うのです。

そして、10代の頃と今の自分の見方の差を大きく感じました。

10代の頃の私…「私は何が好きか?」
いま30歳の私…「私はどう社会や自然に関わるか?」

また展示の内容自体も、目線を自分だけでなくて第三者にも発展させる作品が多かったと思います。

今回はそれについて、いま人気のこの展示の詳細も紹介しつつ、まとめたいと思います。

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場所は3年間もリニューアル工事していた東京都現代美術館
ここは本当に空気も空間も超良い場所だったから、再開を待ち焦がれたよ。
(写真引用:東京都現代美術館がリニューアルオープン。3年の休館経てどこが変わった?

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…ちなみに、最近の美術展ってSNS活用の本もベストセラーになるくらい、「インスタ映え」する作品が集客のキモになっており、この展示もやっぱりSNSでいくつか写真・動画映えする作品がタイムラインに流れてきた。

それもあってか、若い人の来場者と撮影する人が多かった気がする。
(私も結果的にその中の一人なんだけど)

作品①環境に配慮した地上輸送の振動のドローイング

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「クリティッカルゾーンの記憶(ドイツ - ポーランド - ロシア - 中国 - 日本)no.1-12」2020

この展覧会の作品の大半は、飛行機での輸送では大量のCO2が排出されるため、鉄道と船で運ばれることに。
ベルリンから東京まで、その道中の動きや振動を記録する装置によるドローイングがこちら。

そんな意味とストーリーのあるこの作品を直接目にした時、「はるばるベルリンから東京までの何日間もの全ての動きを記録したぜ」っていう貫禄を感じて、その道中のストーリーに想いを馳せてしまった。

私はこの線が単に美しいかどうかよりも、「人間のシワ」みたいなものだなと思って、なんだか愛おしく感じられたのだ。
まるで、昔の侍の鎧を眺めて「これがかつての戦をくぐり抜けてきた衣装なのか…」と思うような感覚。

単に見た目じゃなくて、その物体のあり方に思いを馳せ、そして「じゃあ、私はどうあれるのか?」と自身にも問いかけてみる…。

作品②太陽光エネルギーを使った、太陽モチーフの照明

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「太陽の中心への探査」2017

このために美術館の中庭にソーラーパネルが設置されており、それを利用した多面体の照明。

太陽を模して、エコなエネルギーを使った綺麗なプロダクトである。

…って、これだけで10代の頃の私は大満足だっただろう。
でも、こういうおしゃれな照明ってもういくらでも、ヴィンテージショップだろうがIKEAだろうがどっかのEC通販サイトにもある。
見た目がかっこいいだけのプロダクトなんて、30歳の私はもう見飽きてしまっている。こういうのはお腹いっぱいだよ。

だから本当にこれだけなのだろうか。彼が言いたかったことは…。
なのでもう少し、こじつけかもしれないけど意図を探る。

これは太陽をイメージした照明だけど、単に光が強い照明ではなくて、色とりどりにカラーが混ざり合って部屋中を染め上げる装置でもある。
単なるキラキラした物体じゃなくて、太陽が空間を鮮やかに染め上げるような状況を彼は作りたかったのかなと思う。

これが今30歳の私が出した答えだ。
10代の時にはこんなこと思わなかったし、また40代になったら全く異なる意見を出しているんだろう。

あとこの多面体、日本の小学校で折り紙で作ったことの人も多いんじゃないだろうか。どこかノスタルジーを感じてしまう。

作品③水面の揺らぎを投影する装置

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「ビューティ」1993

足元の水面の上に照らされる光が、頭上のスクリーンに大きく投影されるインスタレーション。

水面の揺らぎがリアルタイムにスクリーンの映像として現れ、水面のグラフィックを360度体験できます。
まるでSF映画のような非日常世界で、エキサイティングな空間でした。

こういうゆらゆら系のビジュアルって、スクリーンセーバーによくあるよね。

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↑こういうカラフルにぐにゃぐにゃ揺れるやつ

このインスタレーションはデジタルで作られたものじゃない、水から生まれた本物のグラフィック!

おそらく普段自分が見ていたものは人工的なもので、むしろこの水面の揺らぎを綺麗だと思った誰かが、模して作ったものかもしれない。

改めて自然そのものの美しさに感動したし、たいていの美しさって自然が起源なんだなと思った。

主役は「私」なのだ

など見てきたけど、この展示では、環境問題を中心に自然の美しさや問題を訴えかけ、「あなたに気づいて欲しい」「あなたはどうする?」というメッセージを持ったものが多かった。

ただ全体的に色鮮やかで明快なコンセプトの作品が多く、おそらく10代の私だったら、この作品の美しさだけで「このテイストが私は好きだな」「こういう表現があるのか」という発見で大満足だっただろう。

でも見た目が良いものなんて散々見尽くしてきた30歳のいま、私が感じたことは「あり方」「歴史」という意味の方なのだ。
もちろん、こう思ったことは、今この時点のことであって、また40代・60代になったら、もっともっと違うことを感じて考えているでしょう。

私は時間が経てば状況も価値観も変わり、次に全く同じ作品を見たとしても、全く異なる感想を抱いているかもしれない。
ただ、アート作品自体は(基本的に)永久に変わらずそこにある。

だから、アートは私の感覚を引き出す装置であり、アートの答えは私の中にあるのだ。


好きな作品や作家は、年を追うごとに変わっていい。
もちろん素晴らしいクラフトやアイデアはめちゃくちゃ尊敬するけど、その時に感じた自分の感情や考えこそ、一生大事にしていくべきだと思う。


ちょっと展示の趣旨とは逸れてしまったけど…

環境問題だけでなく「私自身はどうあるべきか」「どう向き合うべきか」という視点ももって見ると、なにかより良いヒントが見つかるんじゃないかと思います!

(ちなみにシリーズでは、退職によって50日間の夏休みを手にした30歳元動画IT系OLの私が、コロナで自粛の今だけどやりたいことをやる!その中での気づきや行動を記録しているものです。良ければ他の記事もぜひ)



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