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~SNS上の恋 第2章~

宇宙(そら)は小さい頃から病弱だった
現在は一日中家に引きこもり状態
唯一の楽しみはインターネットだった

「あれ、この海斗(かいと)って劇団員の人、誰もコメントとかしないんだぁ」
宇宙はちょっと気になったので、「そこ」に毎日覗きに行った
ある時、劇団公演のツイートがあった
宇宙はすごく行ってみたいと思った

「頑張ってるね」と思わずコメントした
そして、毎日ちょっとしたやり取りをした
と言っても宇宙はほとんど「頑張ってるね」としか書かなかった

しばらくすると相手のツイートの内容が少しずつ変わって来た
宇宙は楽しくなってきた

「彼女いますかって(笑)私を男性だと思ってるのかな」

ある時、急にコメントが出来なくなった
宇宙は少し寂しくなり彼のツイッターを見るのをやめた
数日後、なんとなく彼のツイッターを見た
コメントが出来る…だけど、私のコメントが欲しくないのかもしれない
深夜思い切って書いてみた

「頑張ってるね」
そして、空白をいくつも打ちずっと下に続きを書いた

「お帰り(笑)」

すぐに返信が来た
「ただいま(笑)」
宇宙は嬉しかった
そして、決意した!明日、公演を見に行ってみよう!

「あの、明日のチケットありますか?1枚だけなのですが…」
「えっ?あります!あります!受付に預けておきます!」
「ありがとうございます。あっ、名前は宇宙で…明日楽しみにしています」

やりとりが終わって現実に戻ると、宇宙はふと思った
会えない!会うのは恥ずかしくて出来ない!終わったらすぐに帰ろう!

翌日、宇宙は久しぶりの外出で目眩がした
新しい服も買っていないし、そもそも道がわかるかどうか不安だった
「うん、でも大丈夫!ちゃんと調べたし」

バスに乗り、電車に乗り、1時間位で最寄りの駅に着いた
スマホの地図を見ながら現地に向かった

「ここか…」

劇場はかなり古く小さかった
入口で名前を言うとすぐにチケットを購入する事が出来た
席は自由席
中央の席の一番後ろに座った
全体も見れるし、自由席だったらこの場所にしようと最初から決めていた

お芝居が始まった
コントが入った喜劇のような感じで、始終笑う事が出来た
彼の事はプロフィールなどを見ていたのですぐにわかった
動く彼を見るのは楽しい
こんな声をしていたんだ、こんな動きをするんだ

終演後、アンケートの紙をもらったので悩みながらも書いた
アンケートに時間がかかったので、外に出たのが最後になってしまった
外に出るとお客さんと演者さんが劇場の前にいて、みんなで話をしていた
出待ちと言うのだろう
私はその横をそっと通り、横断歩道で立ち止まっていた

「宇宙さん?」
後ろから声が聞こえた

私はビクッとなって、ゆっくりと後ろを振り向いた
そこには海斗が立っていてこっちを見ている

「宇宙さん?!」
私は何故かクルッと回り、横断歩道を渡ると走り出した
「あっ!なんでだ!?クソッあいつ!」

海斗は劇団の仲間に
「わりぃ!俺先に行くわ!」と言うと宇宙を追いかけて走った
「ちょっ!待って!」海斗は全速力で走った

宇宙は走りながら”なんで追いかけてくるの~?”と思いながら可笑しくなってきた
しかし、すぐに胸が苦しくなり、脇道に入ると肩を落とし大きく息をした

海斗はすぐに追いついた
「なんで逃げる!」
「だって、追いかけてくるから~はじめ…まして」宇宙は大きく呼吸をしながら笑った
「せっかく来てくれたんだから…ちょっと冷たい物でも飲んで休憩するか?」
少し苦しそうな様子を見た海斗はそう言うと、どこがいいか考えはじめた
「とりあえず、駅まで行こう」
「うん」
宇宙は胸が落ち着いて来たので、少し安心した

明るい感じのおしゃれな居酒屋に行くと、仕切りのついたテーブルに案内された
海斗は生ビールを頼み、宇宙はウーロン茶を頼んだ

「はじめまして、今日はありがとう」海斗はそう言うとグラスを合わせた
「はじめまして」宇宙もニコリとしてそう言った

しばらく話をしているとドキンッと宇宙の心臓が鳴った
”まずい…”宇宙は思った
次の瞬間、目の前がクラクラとして外側から少しずつ暗闇が襲ってきた

「海斗さん…私ちょっと…具合が…ごめんなさい」
「大丈夫か?!」
「ごめんなさい…今日はもう…帰ります」
宇宙は立ち上がると、フラフラとよろけた
「ちょっと待って」海斗は勘定を済ませると宇宙の体を支えて外に出た
「…帰らなくっちゃ…」
「こんな状態で帰れるのか!?」

宇宙はだんだんと海斗の声も聞こえなくなっていた

海斗は「俺の家近いから、ちょっと休んでから帰ればいい」
そう言うとタクシーをつかまえ、宇宙と一緒に自分の家に向かった

海斗の家につくと宇宙は床に倒れた
海斗は細かく呼吸をしている宇宙を抱え自分のベッドに寝かせた

「水飲むか?」海斗が言うと宇宙はコクッとうなずいた
コップに水を入れ、宇宙に飲ませようとしたが、苦しそうにしていてなかなかうまく飲ますことが出来ない

海斗は考えた、仕方がない…
「わるい」そう言うと水を口に含み宇宙に口移しで飲ませた
宇宙はゴクリと一口飲んだ。そして、目をつむったままニコッと微笑むと小さい声で

「…キスした…」と言った
「バカ!仕方ないだろ」海斗は真っ赤な顔をしながらそう言った
「もう一口飲むか?」海斗がそう言うと、宇宙は言った

「今日頑張ったね」

「頑張ってるね、じゃないんだな。うん、最高に頑張ったよ!」
海斗は笑い、そして口に水を含むと宇宙に口移しした

※Twitterは正確には「情報ネットワーク」ですがこちらではあえてSNSと言っています。ご了承ください。

〈 ~SNS上の恋 第1章~ はこちら

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