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【訪問看護】利用者さんのケア手順書を作ってみるNo.2

No.1で、訪問看護におけるケア情報共有の課題をお伝えしました。
その後、おもてなし工学研究所、工学部の先生方との共同研究にて、e-ケアメモ(ケア情報共有ツール)を開発しましたので、ご紹介します(過去の話ですが…)。

1.開発初期のツール
初期のツールは、
①モバイル端末でケア場面を撮影
②お絵描きアプリを使って、画像に説明文を書き込む
③②の画像をブログツールを使用して、訪問看護ステーションの専用サイトを通じ、クラウドに保管
というシステムを構築しました。

今は、モバイル端末そのものに文字等も簡単に入れることができますので、ケア手順書も簡単に作ることができますね。

2.当時、作成したケア手順書例
実際の画像をアップすることはできませんが、内容としては下記の画像を順番に並べて手順書としておりました。

例:腎瘻のガーゼ交換
1)必要物品の写真(ガーゼ、綿棒、テープ、ハサミ等の一式が収納されている箱)
2)カットガーゼ、テープをセットした写真。(すぐに貼ることができるようにセットしておく)
2種類の軟膏について、「肉芽部」は◯◯、「その他の部位」は〇〇と塗布する箇所がわかるように画像にメモ。
3)腎瘻チューブの長さを確認する方法
4)チューブの固定方法、留意点等が画像上にメモ
5)固定テープを貼る順番

こちらの事例のポイントとしては、清潔操作を要するため、短時間で処置を行う必要があります。
そのため、「物品の準備」、「処置内容の熟知」、「療養者の体格、生活様式に合わせたチューブ固定」のいずれにおいても不備のないよう行う必要があります。

すべてを文書で記載すると、わかりにくく、長文になってしまいますが、画像と短いテキストで表現することで、訪問前に閲覧し、イメージトレーニングもできます。

3.アンケート調査の結果
「個別性の高いケースであっても、自信をもって訪問できる」の項目で改善が認められました。
また、「訪問前のケアの情報収集に要する時間」「ケアの申し送りに要する時間」が短縮するという効果も認められました。

自由記載では、
肯定的な意見としては、
「作成するまでに時間がかかるが、作ってしまうと申し送りが楽」
「複雑なケアを実施するとき、現場に持っていけるので便利」

一方、否定的な意見としては、
「使い慣れないと戸惑うことが多い。使いこなせなかった」
「もっと多くのスタッフがツールのことをよく把握し、スムーズに操作、閲覧できるとよい」
というように、操作に関するシステムの課題、ユーザーサイドの課題がありました。

また、自由記載に
「同行訪問をしなくても、他の看護師のケア方法を皆がみることができる」とありました。
訪問看護では、複雑なケアを提供している場合、他の看護師に申し送りを目的とした同行訪問を行っているステーションが少なくありません。多い時は数回の同行訪問を行っており、コスト的にも課題とされています。
ケア手順書は、申し送りの資料として有効であり、同行訪問の回数を少なくできるのではないかと思います。
また、熟練した訪問看護師のケア技術を新人看護師に伝える手段の一つとして、ケアの標準化だけでなく人材育成においても有効であると考えます。

こちらの実証実験では、訪問看護ステーションでの費用負担はありませんが、小規模事業所である訪問看護ステーションで、ICTシステムを導入する場合、経済的負担が大きいこと、システムの保守管理が困難であることなど、ハード・ソフト両面での課題が大きいと感じました。

しかしながら、現在は、モバイル端末そのものの性能が向上しているため、既存の機能を工夫して使用すれば、わかりやすいケア手順書を作成することができると思います。



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