見出し画像

探究授業のテーマ設定

例えば、これから卒業研究を始める大学生に、どんな研究をしたいか聞くとしましょう。

ほとんどの学生は「いや、特には…」とモゴモゴします。白紙を与えられて「自由に絵を描いていいよ」と言われて困るみたいなリアクションですね。

これは大学生に限らず、高校生の探究学習のテーマでも同様です。私は以前、高校で非常勤講師をしていたのですが、その高校がSSH(スーパーサイエンスハイスクール)でした。今がどうかは知りませんが、当時は学校全体でこの探究学習に力を入れていたので、割り当てられている時間がかなり多かったのです。

高校生なんてまだ頭が柔らかいんだから、面白いアイディアとか発想がバンバン出てくるだろうと思うのは素人。高校生はそれまでの人生でさんざんルール化された中で育っていて、むしろ枠から出てはいけませんと教えられて育ってきてますからね。それなりに優等生で空気が読める子ほど「自由な発想を」と言われると固まります。

そんなわけで、探究学習のスタート地点である「自らが問いや課題を立てる」で長期間右往左往するケースが多い気がします。1回2回で決められないというレベルではなく、数か月単位のレベルです。

かといって、生徒一人一人がそれぞれ課題を見つけ出して独自の研究を始めたとしても、全てのテーマを高校の教員が指導するのはほぼ不可能でしょう。ついでに言うと実験系は試薬だ装置だとどうしてもお金が必要となるので、学生が思いつく全ての実験をやるのも不可能です。

一番無難に丸く収まるやり方としては、「探究の授業を受け持つ先生がわかる範囲」の中からいくつかのテーマをひねり出し、生徒は提示されたテーマの中から選んで先生の指示する通りに情報収集や実験をするといったところでしょうか。本来の目的からはズレている気がしますが、いつまでもテーマが決まらずに生徒がうだうだしているのを見ているよりは先生側の精神衛生上もいいかもしれない(苦笑)。

私が勤務する大学のご近所の高校でもこの「探究授業」があるので、その一環として秋に大学での実験体験をすることになりました。学生それぞれのテーマもあると思うのですが、そのことは全く気にしないで構いませんとのこと。そもそも探究授業がそれで1回クリアできるならラッキーくらいな感じでした。

うーん、高校の先生もこの授業を、持て余しているのかも…。