ワンオーダー 〜キャッシュがないと戦えないヒーローとそれを支えるボクの話〜_27

それからほどなくして、ボクは退院の運びとなった。

入院費はバカにならない。

諸々でおよそ20万強!

キタコレ!

どうすんねん!

とりあえずはクレジットカードで支払った。

リボ払いである。

どんどんボクの借金額が膨らんで行く。

病院を出て、ボクはとぼとぼと街中を歩いた。

昼下がりの穏やかな空気。

親子連れが公園で遊んでいる。

この平和な昼下がりをボクはあと何回味わうことが出来るのだろう。

早ければ今月末にも、ボクの命は奪われることになってしまう。

月末の支払日まであと2週間。

それまでに50万を準備しなければならない。

エスポワールにでも乗るか……。

「あ、雪道さん!」

不意に聞き慣れた声がした。

ボクは振り返る。

声の主は槇村さんだった。

手にはフルーツバスケットを持っている。

お見舞いに来てくれたのだろうか。

「うす。退院したわ」

「あらー、折角今からお見舞いに行こうとしたのに」

「おかげ様で、ついさっきね」

「うーん、じゃあ、ちょっとお茶でもしていきません?」

「まあ、いいよ」

割り勘だけど。

なんなら奢って欲しいくらいである。

「やったー。この辺りにワッフルが美味しいお店があるんですよ」

こいつ、スイーツ的な物にも手を出そうというのか。

金が有り余ってる奴はいいなぁ!

「じゃあ、そこに行こうか」

「やたー!」

その能天気さは今、若干、癇に障る。

くさくさした気持ちでボクはとりあえず槇村さんとカフェに向かい始めた。

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