ワンオーダー 〜キャッシュがないと戦えないヒーローとそれを支えるボクの話〜_24

壇ノ浦さんはそれから30分くらい父親との確執を語り始めた。

面倒なので、話の要点をまとめてみた。

父親、悪徳。

仲違い。

ほぼ絶縁。

とのことでした。

「尾田君、簡潔にまとめすぎじゃないかしら?」

「だいたい分かるんじゃないすか」

「行間が空きすぎだと思うわ、さすがに」

「いいんですよ。このタイミングで長々と壇ちゃんの家族話されても」

「壇ちゃんを定着させようとしないで。下の名前はももこよ」

「ももちゃん」

「何?」

「そこは素直なんかい!」

「やから、エセ関西弁イラつくゆーとるやろ」

「ひええ、そうでした」

「で、どうするのよ? 私が嫌々ながら、父に頭下げてあげましょうか?」

「いやー、その感じは気がひけます」

「気が引けるとかどうかじゃないでしょう。命がかかってるんだから」

結局そこに行き着くのだ。

「分かりました。じゃあ、一回お会いさせていただいて、そこから決めてもいいですか?」

「そうね、今決めろっていうのも乱暴な話だし、それに私からお父さんに話を通しておかないといけないし」

「お願いします」

話は終わった。しかし、壇ノ浦さんは立ち去る気配を見せない。

「尾田君」

「何ですか?」

「て、下の名前、なんだっけ?」

「雪道です」

「じゃあ、ユッキー」

「未来日記ではないです」

「か、ミッチー」

「バラ色の人生でもないです」

「雪道君」

「はい」

「て、呼んでもいいかしら?」

「え、あ、はい」

「そっちだけ、私のこと、下の名前で呼ぶのは不公平でしょう?」

「そこ、気にしてたんですか?」

「あと……」

壇ノ浦さんは言い淀んだ。

ややあって顔を背け、今度こそ立ち上がった。

「じゃあ、また連絡するわ」

「ももちゃん」

「何?」

ボクの命にそんなに価値があるようには思えないんだけど、そこまで助けてもらわなくてもいいよ。

と、とっさに口から出そうになった。

「ももちゃんって、似合ってないですよね」

「……両親に言って」

「そうでした」

「じゃあ、早く元気になってね」

「ありがとうございます」

壇ノ浦さんは病室を出て行き、ボクはまた、取り残された。

何気なしにテレビをつける。

他愛のないバラエティ番組をぼーっと眺める。

と、番組が途中で途切れ、緊急ニュースが流れてきた。

キャスターはこわばった声で謎の不明生物が再度出現したことを告げた。

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