見出し画像

去ってゆく人、残される人。

3月は、とても寂しい季節だ。
去ってゆく人がいる。
そして、残される人がいる。

私の職場で転勤してゆく人の挨拶があった。
私はその度、悔やんでしまう。
最後になって、やっとその人の気持ちを知って
そして後悔してしまう。もっと話せばよかったと。
もっと心を開けばよかったと。

でも、もう明日から、その人はいないんだ。
どんなに悔やんでも、そこからはもう始まらない。
何かをやり直そうにも、もう、すべてが遅すぎて。

そして私は気付いてしまう。
こうして残されてゆくことを。

どうして人は最後になって、素直になるのだろう。
あの人も私もたぶん、まだたくさんの時間があると
思うからだろう。いつかきっと分かり合えると
思ってしまうからだろう。

でも、時間なんて、あるようでないに等しい。
この人生と同じだ。終わりはいつもその時しか
気づけない。

その人の最後の言葉が涙声になっていた。
そんな人だったなんて、その時までわからなかった。

時が戻せたならと、何度も思いながらも
私はみんなと拍手を送った。

残される人は、寂しいだけだが
去ってゆく人は、寂しさと不安とが重なる分
私たちよりも、もっと苦しいはずだ。

今、私がすべきことは、きっと後悔することじゃない。
今、私がすべきことは、きっと感謝することだ。

もう二度と、それを忘れないようにしよう。

3月が去ってゆく。
それでも新しい風は吹く。

去ってゆく人が、その先で新しい風になるんだ。
明日はどんな風が吹くのだろう。

今度こそ、私は心を開こうと思う。
やがてここに吹く新しい風に。

最後まで読んで下さってありがとうございます。大切なあなたの時間を使って共有できたこのひとときを、心から感謝いたします。 青木詠一