人の両想いの確率。

「人の両想いの確率は、100人いても1000人いても1組になる」

そう言ったのはうちの息子だ。大学生の彼は数学科の勉強をしている。しかも確率を中心に勉学に励んでるらしい。年末で帰省している彼は、うちの奥さんと何かの拍子にそんな話をしていた。

それを隣の部屋でぼんやりと聞いてた私はすぐに疑問に思った。

「いや、それっておかしいよ。人数が増えれば確率も増えるんじゃないか?」と息子に聞いた。

すると息子は「人数が増えると恋愛対象も増えるからね。だからいくら人が増えても1組しか両想いにはならないんだ」と答えた。

それから息子は奥さんと次の話題に夢中になったため、この話は終わってしまった。私はもっと聞きたかったけど、こんな話題に食いつくのも変なのであきらめた。

でも・・・
えぇ?何それ?もっと知りたい。

一体誰の研究成果なんだ?それは本当なのか?それとも何かロマンチック的な類のものなのか?大体、両想いってどんな定義なんだ?本当に信ぴょう性はあるのか?

えぇい、そんなものはどうでもいい!

私はその話にときめいてしまったのだ。

相思相愛、つまり両想いは、どれだけ人がいようとも、たった1組しか生まれないのだ。それはほとんど奇跡に近いんじゃないか。そう思うと不思議な感動を覚えた。互いに恋し合うことの難しさを知った。

そうか、だから人は最初は嫌いでも、好きになってゆくんだな。そうやって恋愛は苦労を重ねて実らすものなんだな、と思った。それは人生と同じだ。簡単にはできていないのだ。だからそこに物語が生まれる。それは小説や歌のように。そうして人は人生に足跡を残してゆくんだ。

でも、私はどうしても我慢できず、ひとつだけ息子に尋ねた。

「さっきの話だけど、もしも地球上に若い男女1組しかいなかったらどうなるんだ?」

息子は答えた。

「あぁ、その場合はその二人が両想いになるね。
まるでアダムとイブのようにさ」

そしてまた、彼は奥さんと別の話に夢中になってる。

・・・えぇ?何それ?
なんか、ときめきが止まらない。

最後まで読んで下さってありがとうございます。大切なあなたの時間を使って共有できたこのひとときを、心から感謝いたします。 青木詠一