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英語授業は場面設定が肝心【“使えない英語”から脱却するヒント】

「場面設定」がないと、どう表現すればよいかなんてわからない!

突然ですが、あなたはつぎの質問にどのように答えますか?

Do you like sushi?

この質問への一般的な答え方として、学校では以下のように指導することが多いと思います。

Do you like sushi?
ーYes, I do. / No, I don’t.

これに加えて、ちょっと気の利いた先生なら、こんな指導をするでしょう。

“Yes”と答える時は、どんな寿司が好きか、
“No”と答える時も、理由や他の好きなことなど一文付け加えましょう!

みたいな。

つまり、

Do you like sushi?
ー Yes, I do. I like tuna very much.
ー No, I don’t. But I like tempura and sukiyaki.

こういうのが模範的な答え方だという指導です。

けど、これって本当に正解なのでしょうか?


「”Do you like sushi?”になんと答える?」という問い、実際に子どもに出したことがあります。

すると、子どもたちは見事なくらい、さっきのお手本のように答えました。


けれども、この問いかけのあと、私は以下のように「場面」を付け加えたのです。

言いそびれていたけど、
駅前を歩いていたら、めちゃめちゃ怖そうでいかにも怪しいお兄さんが近づいてきて「ねぇねぇ、そこのキミ、お寿司は好きかい?」と声をかけられた
という場面なんだよね。

この場面を伝えると、子どもたち一同「えーーーーーー!」「聞いてないよーーー!」と大ブーイング。

それもそのはず、怪しいお兄さんが近づいてきて、”Do you like sushi?”とたずねられ、

“Yes, I do. I like tuna very much.”

とか、

“No, I don’t. But I like tempura and sukiyaki.

みたいな答えをするのがふつう「正解」とはなりません。むしろ「不正解」なわけです。

もし模範解答があるとしたら、「無視して逃げる」とか「No!と言って立ち去る」とかになるわけなんです。

このように会話というのは、ある程度細かい「場面」(相手との関係性、場所、時間 etc.)が設定されない限り、「こう表現するのがよい」ということは、わかりようがありません。

つまり「場面」がわかって初めて、使用する表現が決まります。


逆に言うと、

英語の表現を教えたければ、その表現が使われる場面とセットで!

という原則が見えてきます。

したがって、1つ1つの英語表現が「どんな場面で使用されるんだろう?」という問いを、英語指導者はいつも持たねばならないのです。

そうでないと、極端な話、”Do you like sushi?”という質問に対して、”Yes, I do.”か”No, I don’t.”と機械的に答えることしかできない、“使えない英語”を教えることになってしまうわけです。

「場面設定」のない授業・ある授業【具体例あり】

残念ながら、日本の教室では「場面設定」を完全に無視した授業が多いと感じます。

例えば、先の”Do you like sushi?”という表現を学ぶ際も以下のような授業をやりがちです。

①”Do you like 〇〇?”の〇〇の部分をいろいろ変えてパターンプラクティスさせる。また、答え方として”Yes, I do. / No, I don’t.”を教え、一文付け加えられるとなお良いと指導する。
②「コミュニケーション活動」と称して、子どもに教室内を歩かせ、子ども同士質問をさせ合う。
“Do you like sushi?ーYes, I do. I like tuna very much.”
みたいな会話が成立すれば会話成功。子ども同士でワークシートにサインさせ合う。

もう、こういう授業は学校あるあるだと思うんですけど、これが「場面設定」のない授業の典型です。

タチの悪いのが、これをあくまでも「パターンプラクティス」と呼ばれるような反復練習として位置付けているならまだいいんです。

けど、これを「コミュニケーション活動」と称してしまうとかなり問題があると思います。


では「場面」を意識するとどうなるか?

そもそも“Do you like 〇〇?”という表現はどんな「場面」で使うのでしょうか?

自分ならパッと思いつくのは「誘う」という場面です。

つまり、

A:お寿司好き?
B:うん、好きだよ。なんで?
A:おぉよかった。昨日からめちゃめちゃお寿司の口になってて、今夜あたり行きたいなぁと思ってたんだけど、よかったら一緒にどう?

みたいな場面です。

あとは「共通点を探す」という場面も思いつきます。

A:音楽好き?
B:うん好きだよ。
A:音楽好きなんだね。何聞くの?
B:BTSがめっちゃ好きだよ。
A:えーマジか!私もBTS超好きなんだけど。


みたいな場面です。

「テテが好き?」「テテも好きだけど、ジョングクの方が好き」みたいにどんどん話が広がっていきそうですよね。

他にもいろんな場面あるとは思うんですけど、“Do you like〇〇?”を習うのって大抵英語学び始めてすぐの頃。

なので、できるだけ学習者にとって身近な場面を設定するのが大事だと思います。


このような視点から、たとえば次のような「場面設定」をしたコミュニケーション活動が考えられそうです。

【場面設定】
今日は新学期初日、朝登校すると会ったことのない転入生があなたの隣の席に座っています。あなたはその転入生と仲良くなりたいと思います。また、その転入生も早くみんなと仲良くなりたいと思っています。

【タスク】
・お互いの好きなことをたずね合うことで、共通点を見つけて仲良くなろう。
・仲良くなるために相手を遊びに誘ってみよう。

【表現例】
音楽好き→カラオケに誘うだったら…
“Do you like music?”
“Who's your favorite artist?"
"Let's go to karaoke!"
"When and where can we meet?"
→こんな感じの基本表現がゴロゴロ使えます。

どうでしょうか?

こうやって「場面設定」だけで、ただの“Do you like 〇〇?”という表現に生命が吹き込まれるような、生き生きしてくる感じがしませんか?

また、授業の受け手側としてもどうでしょうか?

「なんか面白そう!」ってワクワクするような気持ちになりそうじゃないですか?

このように、「場面設定」をするだけで、間違いなく授業は変わります。

そして子どもたち身に付ける英語はより実践的で、使えるものになっていくでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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